はじめに

昨今の法改正に伴い、男性が積極的に育児に参加し、育休を取得するケースが増えてきています。男性が育児休業を取るようになったのにはどのような背景があるのでしょうか。育児休業を取得するために何をする必要があるのか、育児休業給付金とはどういうものなのか、具体的な事例を交えながら詳しく紹介していきます。

目次

1. 育休とはどんな休み?
2. 育児休業と育児休暇は同じ「育休」?二つの違いは何?
3. 育児休業制度の概要
4. 育休は男性でも取得できるの?
5. 育休期間はどれぐらい?延長は可能?
6. 育休期間に受け取れるお金は?育児休業給付金や給与の気になる点を解説
7. 育休から復帰までの基本的な流れを押さえよう
8. おわりに


育休とはどんな休み?


育休とは育児休業のことを言い、雇用されている労働者が男女ともに子育てをしながら、働き続けることができる社会を目指した制度の一つです。

日本では少子高齢化が進展し、労働力人口の減少への対策として、育児や介護などの諸事情で働いていなかった女性や高齢者、外国人労働者などの労働力の活用が期待されています。政府内閣府では、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」(仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章)の実現を目指しています。

そのためには、社会全体で生活と仕事の両面で調和できるような施策や枠組み作りが必要となってきます。政府はワークライフバランスの実現に向けて、育児・介護休業法の改正を繰り返し行い、置かれている様々な社会問題に対応しながら、生活と仕事の両面で調和できるような労働環境を作り上げようとしています。

平成29年の法改正では、「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)」を発表しました。この中では、新たな相談窓口の設置や、相談体制の整備を事業主に義務付けています。そして、育児を行う労働者が働きやすい環境を構築するための、育児休業に関する法整備が現在でも続けられています。

育児休業と育児休暇は同じ「育休」?二つの違いは何?

育休のことを「育児休業」だけでなく「育児休暇」と呼んでいるケースがよく見受けられます。育児のために休職する期間という意味では似ているものの、実は二つの言葉には大きな違いがあります。

育児休業は「育児・介護休業法」で定められた休業制度のことです。法律に基づき、一定の条件を満たすことで育児休業給付金を受け取ることができます。育児休業給付金は、雇用保険から支給されています。

育児休暇とは、育児をするために休暇を取得すること、あるいは休暇期間中に育児をすることを意味します。育児休暇は文字通り「休暇」であり、法律で定められた制度ではありません。多くの企業では就業規則などで規定されており、育児休業の適応条件に満たない労働者への救済措置や、育児休業と併せて利用できる制度として使われていることが多く見かけます。

育児休業と育児休暇を組み合わせることで、最長2年から3年まで取れるような仕組みが整った企業も見受けられます。また、平成29年10月の法改正により、男性の育児参加促進のための「育児目的休暇の新設」を事業主に設置するように努力することが定められました。配偶者の出産休暇や、子どもの入園式などの行事参加を含めた育児にも使える多目的休暇などが事例として挙げられています。

育児休業制度の概要

厚生労働省では、育休とは「育児休業」のことと定義されており、関連する法律が平成3年に制定されています。正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」で、一般的には「育児・介護休業法」と呼ばれています。子どもが1歳になるまでの期間中に申請によって育休を取得できる制度で、子の養育を行う労働者の雇用を継続し、再就職の促進を図ることで職務と家庭の両立を図り、経済や社会の発展に寄与することを目的としています。

育児休業制度によって、1歳に満たない子どもを養育している労働者は男女ともに、会社への申し出によって育児のために休業することができます。育児休業を取得できる労働者の適応要件が定められており、「同じ事業主に1年以上連続して雇用されている」「子どもが1歳の誕生日を迎えた後も、引き続いて雇用されることが見込まれる」など要件が決まっています。

一方、雇用期間が1年に満たない場合や、1年以内に雇用期間が終了する場合、週の労働日数が2日以下の場合は、労使協定による取り決めで対象外とする場合を除き、育児休業の取得要件から外れます。また、日雇い労働などの日々雇用されている労働者は育児休業を取得することはできませんので覚えておきましょう。

育休は男性でも取得できるの?

育児休業制度は、働く女性のためのものだけではありません。勤労者の過半数が共働き世帯である中で、男性も子育てに参加し、親子で過ごすための環境づくりが求められています。育児介護休業法の平成21年改正において、「父親も子育てができる働き方の実現」を目指し、男性も女性と一緒に子育てをしながら働くことができる雇用環境の整備が行われています。

父親と母親がどちらも育児休業を取得する場合において、子どもが1歳2か月までの間に1年間の育児休業が取得できるように法改正されました。新たに「両親ともに育児休業をする場合」の特例として「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれる、子どもが1歳になるまでの期間中に母親が育児休業を取得した後で復職した場合、子どもが1歳2か月を迎えるまでの2か月間は父親が育児休業を取得できる規定が設けられています。

また、配偶者が専業主婦、あるいは専業主夫の場合は育児休業の取得を不可とする除外規定が労使協定によって付けられていましたが、法改正に伴いこの規定が廃止されました。さらに、従来から育児休業の取得は子ども一人につき1回のみと定められていますが、母親の出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合は、特例として育児休業を再度取得できるように見直されています。法改正に伴い、育児休業給付についても同様に見直されたため併せて覚えておきましょう。

育休期間はどれぐらい?延長は可能?

育児休業は、原則的に子ども一人に対して1回取得できる制度です。育児休業の期間は、産後休業に引き続き取得する女性の場合、産後休業終了日の翌日から子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで、男性は配偶者の出産日当日から育児休業の開始日と起算します。ただし、一定の事情があると認められた場合は、育児休業期間を延長することができます。

認可保育園へ入所申込書を申請したにも関わらず、子どもが1歳の誕生日までに入所が叶わなかった場合は「入所不承諾通知書」などの書類を提出することで1年6か月まで延長することが可能です。また、子育てを行っている配偶者が負傷や疾病などの事情で子どもの養育が困難になった場合や、離婚などの事情で配偶者が子どもと同居できなくなった場合は、診断書や住民票の提出によって育休の延長申請が可能です。

平成29年10月の法改正により、1年6か月の時点でも入所できなかった場合は、最長2年まで育休を延長できるようになりました。これは、認可保育園の受け入れが年度初めであることを踏まえると、1年6か月から約半年間の期間で、保育園に預けることも育児休業を取ることもできない空白の期間が生まれている実態があったためです。この改正に伴い、育児休業給付の支給期間も同様に延長できるようになりました。

育休期間に受け取れるお金は?育児休業給付金や給与の気になる点を解説

育児・介護休業法に基づき、育休期間中は給付金という形でお金を受け取ることが可能です。育児休業給付金として雇用保険から支給されますが、「休業を開始した時点の賃金日額×支給日数×67パーセント(育児休業開始後6ヶ月以降は50パーセント)」と定義され、上限額は299,691円(
(223,650円)、下限額は74,100円と定められています。

また、企業が育休取得者本人に一定額以上の給料を支払った場合、給付金は減額対象となり、給与が「休業を開始した時点の賃金日額×支給日数×80パーセント以上」は支払い対象外です。

母親の場合、出産の翌日から起算して「8週間の産後休業期間」中は支給対象外ですが、父親が出産当日から育児休業を開始すれば支給対象になります。

育児休業給付金の受給資格を得るために、「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を、出金記録や賃金台帳、母子手帳などと併せて会社経由で管轄のハローワークに提出します。初回は、育児休業開始日から4か月を過ぎた月の末日までに申請を済ませておきます。受給資格があると認められると、ハローワークから会社経由で通知が届きます。

雇用保険に加入している被保険者は、育児休業の取得期間中に社会保険料が免除される制度があります。申請が必要ですが、女性だけでなく男性も受けられる制度のため、手続きをしっかりと済ませておきましょう。

育休から復帰までの基本的な流れを押さえよう

妊娠が分かってから産休に入るまでの間、上司への報告は安定期に入ってから行われることが多いですが、産前休業の取得まで含めて考えると、休業の開始まで3か月程度しかないケースもあります。産前産後休暇や育休まで含めると、少なくとも1年以上の長期休暇を取得することになります。自身が持っている業務の担当者との引継ぎが必要なだけでなく、会社にとっては代わりとなる人員配置の手配などの準備に追われます。

職場全体に対しては安定期に入ってから報告するとしても、直属の上司にはなるべく早い段階で妊娠を伝えられるような体制を構築しておくことが大切です。育児休業の取得を希望する場合、休業開始予定日の1ヵ月前までには会社に申し出る必要がありますが、育休期間をどれぐらいにするか、上司としっかり話しあって決めておきます。

育休期間を順調にこなし、職場に復帰する時期が近付いたら、直属の上司と職場復帰に向けての具体的なタイミングや業務内容などを面談する機会を設けておきます。長期に渡る育児休暇中に、職場の環境が異なっている場合があるため、前もって状況を把握しておくと、復帰後の混乱を最小限に抑えることができます。面談の時間がなかなか取れない場合でも、電話などを通じて話し合いを行い、流れをつかんでおきましょう。

おわりに

育休を取得する前後では、出産に向けての準備で忙しくなってくるだけでなく、職場の引継ぎや関係部署へのあいさつ回りなど、慌ただしくなってきます。共働きの世帯にとって、育児休業制度の中身をしっかりと理解し、正しい知識を身につけておくことが大切です。自身はどのように制度を活用していけばよいか、夫婦一緒にしっかりと話し合いましょう。

LIMO編集部