ビジネスの世界においては、スタートアップという言葉がよく使われていますが、意味合いも含めて正しく理解している人はあまり多くないでしょう。スタートアップとはどういう企業を指すのでしょうか。スタートアップの定義のほか、就職時のメリットやデメリット、どのような人が向いているのかを紹介します。

目次

1. スタートアップとはどんな会社のこと?
2. スタートアップは、ベンチャー企業や中小企業とは何が違う?
3. 海外と日本では異なるスタートアップの定義
4. スタートアップ企業は上場することができない?
5. スタートアップ企業に向いている人材とは
6. スタートアップ企業に向いていない人材とは
7. スタートアップに就職するメリット・デメリットと、気を付けるべきリスク
8. おわりに

スタートアップとはどんな会社のこと?

スタートアップ(Startup)とは、英語で「始動」「立ち上げ」「新規事業」などを意味する言葉です。日本では、スタートアップという言葉を「新しいビジネスモデルで急成長を遂げている企業」、あるいは「新たな市場を開拓している事業形態」という意味合いで多く使われています。


日本では、会社の設立年数や規模に関わらず高成長を続けているビジネスモデルを持っていれば、スタートアップ企業と呼ばれることもあり、これまでのビジネスには存在しない、新たなイノベーションによって世の中をがらりと変えていくことを目的として活動している企業が自らをスタートアップと発信していることもよくあります。

アメリカでは、サンフランシスコ湾岸エリアに位置するシリコンバレーに、AppleやFacebookをはじめとするインターネット関連企業や先端技術企業など多くのスタートアップが集まっていることで有名です。

スタートアップは、ベンチャー企業や中小企業とは何が違う?

スタートアップと似た意味の言葉としてベンチャー企業があります。ベンチャー企業は、もともと日本人が生み出した和製英語で、高度な知識や新しい技術をバックグラウンドに持ち、革新的な事業を展開する企業を指します。

アメリカを含む海外ではベンチャーというと、ベンチャーキャピタルを意味する「投資を行う企業」あるいは「投資家」のことを指すため、ベンチャー企業という呼び名は、日本独自のものであるともいえます。

ベンチャー企業は法律的には中小企業のカテゴリーに入ります。中小企業は、日本の法律で定義されている組織の形態です。中小企業基本法では資本金や従業員数規模によって中小企業と小規模企業を定義しています。サービス業であれば、資本金が5000万円以下、または従業員数が100人以下の組織を中小企業と呼びます。※

ベンチャー企業は、大企業に比べて経営基盤が脆弱で財政面でも厳しいこともあるため、投資機関から援助を受けているケースも多く、中小企業の中で投資援助を受けている会社の中に、ベンチャー企業と呼ばれる規模の会社が多いといえます。

スタートアップとベンチャー企業は、仕事のやりがいやビジョン、企業理念など、似通った要素も多く、同じ意味合いとして捉えられていることも多くあります。実際、日本でベンチャー企業の特徴を持つ企業の多くが、海外ではスタートアップと呼ばれており、明確な定義や区別はされていないといえますが、最近では、新しいビジネスモデルが市場開拓可能かどうか、高成長を遂げる可能性を秘めているか、をスタートアップの定義として使う方も増えてきているようです。

※出典:FAQ「中小企業の定義について」(中小企業庁)

海外と日本では異なるスタートアップの定義

海外と日本では、スタートアップ企業の定義が異なります。日本では、スタートアップとベンチャー企業は同義語として使われることが多く、意味もあいまいに捉えられがちですが、海外においてはスタートアップの定義は明確です。

スタートアップには決められた組織形態がなく、構成メンバーは少数精鋭であることも多く、既存の枠組みにとらわれず、自由で柔軟な発想を持つ人材が求められています。標準的な業務プロセスもなく、希少性を持った各個人が専門性を発揮し、社会変革を目指しています。

また、スタートアップでは多くの場合、トライアンドエラーのサイクルを短期間に回していくことが重要視され、創業開始時には体系化されたビジネスモデルが存在しないことから、新たなモデルを創造していくために商品の市場投入を短期間のうちに繰り返し行い、ヒットにつながったものを採用する方法が取られています。

スタートアップ企業は上場することができない?

よく「スタートアップ企業は上場することが出来ない」といわれていますが、これはよくある間違いの一つです。上場とは、証券取引所を通じて自社の株式を自由に売買できるようにすることです。上場することによって、社会の信用度が高まり、資金調達が容易になるなどのメリットがあります。

上場企業とは、株式を発行して証券取引所に登録している企業のことです。上場するためには、株式単位数や時価総額、利益額や事業継続数などの項目で基準値を満たす必要があり、全てクリアしなければ上場することはできません。

東京証券取引所には「市場第1部」「市場第2部」のほか、「JASDAQ」や「マザーズ」と呼ばれる市場が存在します。「JASDAQ」や「マザーズ」は、新興企業向けに作られた市場であり、上場基準は1部や2部に比べて緩和されています。スタートアップ企業でも基準を満たせば上場することが可能なのです。

スタートアップ企業に向いている人材とは

では、どのようなタイプの方がスタートアップに向いているのでしょうか。

新たなサービスやビジネスモデルを作りたいと考える気持ちが強い方ほどスタートアップに向いているでしょう。さらに新たなビジネスモデルの構築に向けて広い視野を持ち、何をどのように変えていきたいのか、全体を見通せる視点がある方ほど向いているといえます。

また、道なき道を突き進み、荒れた土地を開墾していくような未知の領域へ足を踏み入れることに抵抗がなく、興味を持って取り組める方もスタートアップ企業に向いているといえるのではないでしょうか。

一度構築したビジネスモデルが数年後には使えなくなるケースがあります。即座に気持ちの切り替えができ、次のビジネスモデル構築に目線を向けることができる人材はスタートアップに向いているといえます。

先端技術産業は、日進月歩で開発が進んでいるため、トライアンドエラーのサイクルを短く回していくことが大切です。新たな事業を起こす場合、従来の事業では何が問題だったのかを明確化し、課題解決に向けて取り組むことが重要です。課題を自ら見つけ出し、何に取り組んでいけばよいかを考えることが得意な方は、スタートアップ企業に視野を向けて就職活動を進めてみるのも良いかもしれません。

スタートアップ企業に向いていない人材とは

決まった業務を実行することが得意な方や、自分自身で業務における問題提起ができない方、何に問題があるのかを考え、解決策をすぐ行動に移せない方は、スタートアップ企業には向いていないといえるでしょう。

大企業にあるような標準マニュアルや手順書は、スタートアップ企業には存在しないことが多く、自らの手で新しい分野を開拓していく必要があるからです。

また、将来の安定性を求める人も、スタートアップ企業には不向きかもしれません。スタートアップ企業は急成長を遂げる可能性を秘めている反面、大企業に比べると30年後にも生き残っている可能性は高くないため、将来性に不安もあります。将来性や安定性を求める場合は大企業に就職するほうがよいでしょう。

仕事とプライベートを切り分けたい人も、スタートアップには向いていない人材である可能性が高いです。スタートアップ企業では、時と場合によっては休日を返上して業務に費やすケースも多く、プライベートの時間を削ってでも新たなビジネスモデルを構築したいと思えなければ、スタートアップに向いているとはいえないでしょう。

スタートアップに就職するメリット・デメリットと、気を付けるべきリスク

就職先としてスタートアップを選ぶメリットはどんなことがあるでしょうか。

スタートアップ企業は大企業に比べて組織形態が小さく、経営者との距離が近いのが特徴です。意思決定までに要する期間が短く、スピード感があるビジネスができます。

経営者と社員が同じフロアで仕事をする機会も多く、トップの経営手腕を間近に見ながら学ぶことができます。困りごとや不明な点を直接社長に聞くことができ、軌道修正がしやすいことや、社員の意見を反映させやすい点もメリットとして挙げられます。

スタートアップ企業に就職すると、比較的早い段階で大きな裁量を与えられるため、責任感を持って仕事に取り組むことができます。

一方で、スタートアップ企業は倒産するリスクが大企業に比べて高いのがデメリットでしょう。また資金力も乏しいことから、資金繰りが悪化してしまい倒産に至るケースもあります。

社長の経営手腕が企業の存続可否に大きな影響を与えるため、スタートアップへの就職・転職を考えているのであれば、ビジネスモデルに問題が無いか、経営者の資質がどうかなどをしっかり確認してから就職・転職することも大切です。

スタートアップに就職することはメリットとデメリットの両面があるので、自分の適性や将来性を考慮して判断することが重要でしょう。

おわりに

スタートアップとは、新しいビジネスモデルを構築し、急成長を遂げる可能性を秘めている企業であることがわかりました。最近ではフリマアプリのメルカリのように既存ビジネスをがらりと変えていくスタートアップに大きな注目が集まっています。安定性に欠けるというリスクもありますが、他には代えがたい魅力も沢山あり、得られる経験も多いでしょう。

スタートメニューアップへの就職を考える方は、メリットやデメリット・リスクをしっかりと理解しておくことも必要です。自身が向いている人材であるかどうかを確認するとともに、気になるスタートアップ企業への就職・転職を考えている時は、心から応援したいと思える企業かを判断するために、まずはしっかりと調査してみてはいかがでしょうか。

LIMO編集部