韓国サムスン電子のDRAM投資が2018年11月から再開されるもようだ。最大手メーカーの投資計画が先送りされたことで、一時はDRAM投資が一気に冷え込むとの見方も出始め、下降局面を危惧されていたが、半導体製造装置メーカーをはじめとする関連各社への影響は軽微に済みそうだ。

平澤は3D-NAND専用からDRAMとの混流ラインに

 サムスンがDRAM投資を再開するのは、最新鋭の平澤工場(Line18)。同工場は17年7月から稼働を開始した新工場で、器興、華城に次ぐ韓国内での第3の半導体前工程拠点と位置づけられている。稼働当初は3D-NAND専用工場として機能させる予定であったが、上層部エリアに関してはDRAMラインを構築する方針に変更。下層部は3D-NAND、上層部をDRAMとする混流ラインに切り替えた。

 下層部への製造装置の搬入は17年第3四半期(7~9月)ごろにほぼ完了。月産10万枚強の3D-NAND生産ラインが構築されており、18年年明けからは上層部のDRAM投資が本格化した。

 上層部は大きく東側エリアと、西側エリアに分かれており、西側エリアに先行してサーバー用DRAMが同2万枚規模で4月までに導入された。西側エリアにはまだ導入スペースが残されているが(計画では3D-NANDの予定)、東側エリアはほぼ全量DRAMの生産に充てる考えであり、上層部だけで月産11万枚規模のDRAMラインが構築される見通しであった。

一時的に投資時期をスライド

 しかし、この東側エリアのDRAM投資が今回見直しの対象となった。平澤工場の東側DRAM投資は2期にわたって投資が実施される予定で、1期分は予定どおり4~8月までに装置導入が行われる。一方で、7月から予定していた2期分の投資が先送りされた。先送りの理由は限定できないが、①既存の1Xnm世代の生産歩留まりが良好で、現行キャパで需要を満たせる、②顧客であるクラウド・データセンター顧客の投資が一時的にスローダウンしている、この大きく2点が関係している可能性が高いと見られている。

 あくまでも、現在の需給環境をキープするために、一時的に投資時期をスライドさせた印象が強く、DRAM投資が下降局面に突入するという見方はやや早計だ。投資再開時期はこれまではっきりしていなかったが、ここにきて、11~12月をめどに装置導入を再開するという具体的なスケジュールも見え始めてきたことで、製造装置メーカーへの影響は限定的なものにとどまるといえそうだ。

SKとMicronは強気な投資スタンス継続

 このサムスンのDRAM投資遅延が業界で広まるようになってから、メモリー投資に対するネガティブなスタンスが表面化していた。米Evercoreのアナリストが6月初旬に、米装置メーカー大手のLam Researchの18年7~9月出荷高が前四半期比3割落ちるとの予測を出して以降はその流れに拍車がかかり、半導体関連株も軒並み下落していた。

 NAND市況に関してはやや不透明なところも出てきたが、DRAM投資に関してはSK HynixやMicronも引き続き強気な投資スタンスを貫いており、今のところ悲観視する材料はそれほど多くない。

(稲葉雅巳)

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳