皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

6月は、投資信託や投資顧問のお客さまと、セミナー、勉強会などでお会いさせていただく機会が多く、私にとっては、刺激的な月でした。セミナーなどの会場に足をお運びいただいた方、お話を聞いてくださった方、本当にありがとうございました。暑いような、寒いような梅雨ならではの気候が続きますが、皆さんご自愛ください。

さて、今回の記事のポイントは以下の通りです。

  • どちらも米国株式の指数であるにもかかわらず、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(以下、ダウ指数)とRussell2000インデックス(以下、ラッセル2000)の値動きは、ここにきて大きく乖離している(図表1ご参照)。
  • 具体的には、ダウ指数は横ばいの動きのように見える一方で、ダウ指数と比較して中小型株寄りの指数であるラッセル2000は、このところ高値更新を続けている。
  • 今回のコラムでは、この動きをもたらしている原因を考察する。ラッセル2000と比較して時価総額が大きい企業から構成されるダウ指数は、貿易戦争などのマクロ的な問題の影響を受けやすいという考え方があるように感じる。
  • しかし、2017年と2018年合計の騰落率は両指数とも約+25%であり、2018年のラッセル2000は、単に2017年の出遅れを取り戻しているだけにも見える。そして、一層重要な収益の伸びとの関係を、次回以降の(その2)で解説する。

 

図表1:ダウ・ジョーンズ工業株価平均とラッセル2000

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成


図表1の通り、2つの指数の2018年の値動きの差は顕著です。

そこで、株式指数の特徴として、私が重要と考えるものを整理してみましょう。

図表2:2つの株価指数の特徴

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成
2018年の騰落率は6月21日現在。EPSの変化は、ブルームバーグのBEst予想EPS(1GY)データをもとに、2017年は2016年末と2017年末を比較、2018年は2017年末と2018年6月21日を比較したもの。PERはブルームバーグの予想PER(2018年6月21日現在)


まず、ラッセル2000は(ダウ指数と比較して)中小型株寄りの指数です。ダウ指数とラッセル2000の1銘柄平均時価総額を比較すると、企業規模が100倍以上異なることが分かります(ちなみに、我が国を代表する企業であるトヨタ自動車の時価総額は2,100億ドル程度です。米国企業の大きさが印象的です)。

そして、図表1、図表2の③(赤字)の通り、2018年になってダウ指数は低迷しており、ラッセル2000の好パフォーマンスとの対比で、(ラッセル2000と比較して大型株から構成される)ダウ指数はマクロ要因(例:貿易戦争など)の影響を受けているという考え方もあるように思います。

しかし、図表2を確認して改めて気が付くことは、2017年と2018年を通して考えると、ダウ指数もラッセル2000も、ほぼ25%程度指数が上昇しており、2018年のラッセル2000の好調は、単に2017年にダウ指数と比較してラッセル2000のパフォーマンスが劣後したことの反動であったと考えることもできるようにも思います。

また、EPSの変化(伸び)と株価騰落率との関係はとても重要と考えますが、今回は、ラッセル2000の2018年のEPSの伸びが4割近いことを指摘し、続きは次回以降とさせていただきます。

(2018年6月22日 9:30頃執筆)

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柏原 延行