ベンチャー企業という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどういう意味なのか分からない、スタートアップとの違いや上場するのが難しいのかなど、ベンチャー企業についての気になるあれこれを詳しく解説します。また、ベンチャー企業で働くことに向いている人はどういう人なのか、ベンチャー企業に関するメリットやデメリットなどもふまえて、疑問についてもまとめていきます。

目次

1. ベンチャー企業ってどんな会社?
2. ベンチャー企業とその他企業の違いは?
3. 社内ベンチャーってどういう意味?ベンチャー企業との違いは?
4. ベンチャー企業へ就職するメリットやデメリットとリスクについて
5. ベンチャー企業で働くのに向いている人とは?
6. ベンチャー企業で働くのに向いていない人とは?
7. ベンチャー企業は上場するのが難しい?
8. おわりに

ベンチャー企業ってどんな会社?

ベンチャー企業とは、革新的な技術や、他に同様のビジネスモデルがまだ存在しない新しい事業などを行う企業のことをいいます。大企業では新しいアイデアや創造的な事業など、新しいことに取り組むスピードが比較的遅いため、そんなアイデアを埋もれさせずに実現するために、起業するような形でベンチャー企業が存在することが多かったのですが、近年では、大企業もまた社内ベンチャーに取り組むなど、ベンチャービジネスの形態もどんどん多様化してきています。

そもそもベンチャー企業の「ベンチャー」という言葉の意味をご存知でしょうか?実は英語ではなく、元法政大学総長の清成忠男さんらによって概念が作られたのが始まりといわれており、アドベンチャー(冒険)という言葉の意味から想起して「新しいことに挑戦するビジネス」がベンチャービジネスと呼ばれ、またそれを事業とする企業のことを、ベンチャー企業と呼ぶようになりました。

新しいアイデアを実現するために、発案者が自ら独立して事業を展開することが多いため、起業したばかりのベンチャー企業の従業員数は、数人から多くても数十人程度がほとんどです。そのため、事業が安定するまでは経営が不安定な側面もありますが、一度軌道に乗ると大きく成長するチャンスもあるといえます。

ベンチャー企業で働く人の年齢は、経営者をはじめとして比較的若い人が多いのも特徴です。また、事業がうまくいけば、その業界の先駆者としてビジネスを成長させる可能性を持っている場合もあるでしょう。

ベンチャー企業とその他企業の違いは?

似たような人数規模の企業でも、ベンチャー企業やスタートアップ、中小企業など、色々と呼び名がありますよね。実際にどういった意味や意図で使い分けられているのかをご説明していきます。

ベンチャー企業

ベンチャー企業とは、新しい技術やアイデアなど、今までの社会常識を打ち破るビジネスモデルでビジネスを展開している企業のことを一般的にはいいます。新しいニーズを求めてビジネスを行うため、成長すれば市場を独占できる可能性を秘めた存在ともいえるでしょう。

スタートアップ

実は、ベンチャーとスタートアップには大きな違いはありません。近年、日本でもスタートアップという表現が多く用いられるようになり、ベンチャー企業との違いがよく分からない、という方も多いと思うのですが、そもそも海外では、日本でいうベンチャー企業のような企業をスタートアップと呼びます。

両者を区別しようという動きもありますが、現時点ではまだ、ベンチャー企業とスタートアップに明確な違いはありません。ちなみに海外では「ベンチャー」というとベンチャーキャピタルのことを指すのが一般的です。 

中小企業

昔ながらの企業だから中小企業、学生起業だからスタートアップ、のように雰囲気で使われる方もいるようですが、実は、中小企業は法律で定められた定義を満たす企業のことであり、ベンチャー、スタートアップ、中小企業と呼ばれる企業のほぼすべてが、実は中小企業に該当されるのです。

中小企業=古い・情報に遅れていそう、というようなイメージを持たれないように、創業から10年以上経っている企業でも、自社をベンチャー企業と名乗ったりするなど、ブランディングの意味合いで使われることもあるようです。

また、「中小企業」の定義は、中小企業基本法、会社法、法人税、租税特別措置法など、さまざまな法律で定義されていますが、それぞれの法律によっても定義に違いがあります。

社内ベンチャーってどういう意味?ベンチャー企業との違いは?

社内ベンチャーとは、企業が新しい事業をつくり出すために、社内で独立した部署を作ったり、親会社の出資で別会社を作って事業を興すことです。社内部署の場合は法人の代表にならないケースもありますが、新しいビジネスに挑戦することから、関わったメンバーを「社内起業家」とも呼んだりもします。

社内ベンチャーでは、事業開発や新規事業など、組織が主導し、現場や市場などのニーズに沿ったビジネスモデルの構築を行うケースも多く、企業にとって将来性が見込めて有益になりそうなものを選定して事業化するため、新規事業の可能性を広げたり、社内人材の育成を行う場として活用されることもあるようです。

社内ベンチャーのメリットは、起業する前に市場調査や開発費用など、企業からのバックアップを受けることで、リスクを最小限にして事業に取り組むことができることでしょう。そのため、個人で起業して独立するよりも負担を減らすことができるといわれています。

逆に社内ベンチャーのデメリットは、所属する企業の承認が必要なケースなどもあり、自由に決断しにくい場合などでしょう。部署内では最終的な決定権を持っていないため、もし利益がないと判断されたらそこで中止になることもあります。そのため早い段階での実績を残す必要があるのはデメリットともいえるでしょう。

ただ、このデメリットの本質は、他者に投資をして貰っていること、にありますので、実は個人で起業した場合でも同様です。自分以外の誰かから投資を受けて事業を始める場合は、ステークホルダー(利害関係者)への説明や、利益が出ることを証明していかなければいけないのは、社内ベンチャーでも個人起業でも変わりません。

ベンチャー企業へ就職するメリットやデメリットとリスクについて

ベンチャー企業へ就職を希望する方に、実際にベンチャー企業で働いた場合のメリット、デメリットやリスクについてご説明します。

ベンチャー企業へ就職するメリット

ベンチャー企業へ就職するメリットは、まず昇進が早いことが挙げられます。大手のような大きな企業の場合は昇進するのに一定の時間が必要ですが、ベンチャー企業では小規模なことも多く人材が限られているため、実績を残すことができれば早い段階で昇進することが期待できます。

また、やりたいことや挑戦したいことを積極的に進めることができるのも魅力です。今までアイデアなどを考えていたけど実現することができなかった方は、ベンチャー企業へ就職することでそのチャンスを掴むことができるかもしれません。 

ベンチャー企業へ就職するデメリットやリスク

ベンチャー企業へ就職するデメリットやリスクはどんなことだと思いますか?一般的にいわれるのは起業したばかりのベンチャーだと「安定性に欠ける」ということでしょう。

例えば利益を十分に確保できないために、給与や福利厚生に不満を感じたり、人材不足により残業などが増え、労働が激務になることが多く、業績が悪いままだと責任を負わされるという話も実際の話としてきくことがあります。

また、会社によっては経営手腕を持った方が経営を担っているとは限らないため、最悪の場合は倒産のリスクも無いとはいえません。やりがいや挑戦をすることも重要ですが、それに伴うリスクもあると心構えしておきましょう。

ベンチャー企業で働くのに向いている人とは?

ベンチャー企業に興味があるけど、自分が本当に働けるかどうか分からないと不安に感じていませんか?そんな方のために、ベンチャー企業で働くのに向いている人の特徴を説明します。

不安定な環境でも前向きに仕事ができる

ベンチャー企業には創業間もない会社も多く、不安定なところも多くあります。そのためこの先どうなるか、将来に不安を強く感じる方には向かない可能性があります。人やモノ、お金など、色んなものが大企業に比べて足りないことも多いですが、その足りない環境を楽しめる人なら向いているといえるかもしれません。

好奇心が旺盛でチャレンジ精神がある

好奇心が旺盛な人や、新しいことにチャレンジしたり、あらゆるものからヒントを得てアイデアを生み出し、それを実現しようとする行動力がある方も向いているかもしれません。

新しい経験やキャリアを築きたい

自分の実力を試したいと思っている方や、大規模な会社ではなかなか回ってこない経験、成功するまで挑戦し続ける姿勢など、自分を試したいと思っているならベンチャー企業に就職するのもひとつの方法です。特に決められた枠組みの中だけで考えるのではなく、柔軟な考えかたを持って対応できる姿勢があれば、チャンスを掴み取って成功できるかもしれません。

また、こういった思考や考えかたをすることで、将来に向けて自分の実力を上げることができて、場合によっては自分自身で起業できるスキルや考えかたを習得できるようになる可能性もあります。

ベンチャー企業で働くのに向いていない人とは?

ベンチャー企業は新しい事業やアイデアを元に、これから発展していこうとしている企業ですが、そんなベンチャー企業で働くのに向いていない人とはどういう方なのでしょうか?

プライベートを重視したい

ベンチャー企業の中には経営状態が安定していない企業も多く、売り上げを上げたり早く安定させるために日夜努力を続けているでしょう。仕事量が必然的に多くなってしまい、定時に退社したり土日や祝日に必ず休める保証がなく、仕事中心の生活になってしまう企業も多く存在します。これらの理由から、仕事以外の趣味や習い事など、プライベートをしっかり確保したい方には向いていないかもしれません。

どうしてもベンチャー企業にチャレンジしてみたい!だけどプライベートな時間も大切、という方は、面接のときに、それらのことをしっかり確認しておくのが良いでしょう。

安定性を求めたい

企業に安定性を求めている方も向いていないかもしれません。業績が不安定な企業も多いため、「良い時もあれば悪い時もある、この危機を一緒に乗り越えていこう」とリスクを取れる気持ちが必要になることもあります。

自分で考えて行動するのが好きではない

ベンチャー企業では人手が足りないことも多いため、指示されてから動くというより、自分で考えて何が必要で何ができるのかを率先して仕事をこなす必要があります。入ったばかりなのにほったらかし…ということも、ベンチャー企業あるあるといえます。

基本から仕事を学んでいきたいタイプの方は、研修やセミナー制度が充実している企業で働くほうが合っているかも知れません。もちろん、すべてのベンチャー企業が、教育制度が乏しいわけではありませんので、気になる方は、面接などでしっかり確認しておくのが良いでしょう。

ベンチャー企業は上場するのが難しい?

株式を上場をする、とは、株式を一般に公開することで株の取引ができる状態にして出資者を募ることです。法人であればどんな企業でも上場できるわけではなく、株式を上場させるにはいくつかのルールがあり、それをクリアしていなければなりません。それではどんな企業が上場できるのでしょうか?

株式を上場するためには、組織としてしっかりと機能していて信頼できるかどうかがカギとなります。例をあげると「経営の健全性」「事業内容」「継続性と収益力」などです。

ベンチャー企業は経営体制から、収益を安定させるのに実績と時間がかかるため、信用に値しない可能性があるでしょう。しかし勘違いしてはいけないのが、ベンチャー企業だから上場できないわけではありません。収益が安定していて、株式価値を適正に見定めるために、必要十分な情報開示をすることができるなら、ベンチャー企業でも上場することが可能です。

中小企業だからとかベンチャー企業だからではなく、あくまで経営が安定していて事業内容の継続性と収益力といったビジョンが見えていれば問題ありません。

おわりに

ベンチャー企業にはいろいろな特徴があります。確かに企業として不安定な部分もあるかもしれませんが、今の時代は大企業だから必ず安泰ともいえなくなってきました。大企業であってもベンチャー企業であっても、事前にその会社のビジネスモデルや競合をしっかり分析し、将来性のある会社だと自分で信じられるかが重要なのではないかと思います。

ベンチャー企業の不安定な側面もご紹介しましたが、もちろん、そのような企業ばかりではありません。この機会に、気になるベンチャー企業について情報収集し、自分に適性があるのかを見極めてみてはいかがでしょうか。

LIMO編集部