企業名には様々な意味が込められていたり、また歴史的な背景があるなど面白いものです。今回は、自動車メーカーの「ダイハツ」と空調機器メーカーである「ダイキン」の社名に共通する点を見ていきましょう。

ダイハツの社名の由来とは

軽自動車で知られるダイハツの創業は古く、明治時代にまでさかのぼります。当時の大阪高等工業学校(現大阪大学工学部)の学者や技術者を中心にエンジンの国産化を目指し、1907年にその名も「発動機製造株式会社」が設立されました。

大学から企業を興すという、近頃はシリコンバレーによくあるような創業ストーリーが日本にもあったというのは驚きです。

昭和に入ると、三輪自動車の需要の高まりを受け、1930年に自動車の自主生産を始めます。その自動車の名称が「ダイハツ号」でした。

ダイハツの企業サイトには「ダイハツ」の名称の由来が次のように書かれています。

大阪の「大」と発動機製造の「発」を組み合わせた当時の愛称「ダイハツ」を冠した小型三輪車は、大変な人気を集めました。しばらく後の1951年には社名をダイハツ工業に改称します。

出所:ダイハツ工業「ダイハツの原点」

では、現在のダイハツ工業はどうなっているのでしょうか。実は、2016年にダイハツ工業はトヨタ自動車の完全子会社となり、同年に上場を廃止しています。株式市場でも評価の高かった同社だけに、その上場廃止を惜しむ声は少なくありませんでした。

ダイキンの社名の由来とは

次に、「ぴちょんくん」のキャラクターで知られる空調機器大手のダイキン工業。同社は国内だけではなく、欧州、中国、そして米国でM&Aなどを通じて事業規模を拡大し続けています。その時価総額は3.7兆円と、4兆円近くにまで達しています(5月25日現在)。

ちなみに、製造業のコングロマリットとして代表的な企業である日立製作所の時価総額が約4兆円です。ダイキンが空調機器事業と化学事業で、日立と同じ水準の時価総額を達成していることには驚かされます。

そのダイキン工業ですが、社名の由来は何なのでしょうか。同社の企業サイトには以下のように説明されています。

当社は1924年「大阪金属工業所」として創業し、その後「大阪金属工業株式会社」へと社名を改めました。時代が進むにつれ、主体となる業態が、創業当時の飛行機部品の製造販売、一般金属加工等から空調機(エアコン)やフッ素化学へと大きく変化し、社名と実態がかけ離れたことから、大阪の「大(ダイ)」と金属の「金(キン)」をつなげ、愛称として当時呼ばれていた"ダイキン"をとって、創業40周年にあたる1963年に「ダイキン工業株式会社」と社名を変更いたしました。

出所:ダイキン工業「ダイキンについて」

本当に両社に共通することとは何か

ここまで目を通していただいた読者の中には、「なんだ、単に大阪の大を『ダイ』と読ませていることが共通なだけではないか」と思われる方もいるでしょう。社名だけを見れば確かにそういうことになります。

ただ、注目していただきたいのは、世界的な製造業である両社がともに大阪という土地に起源を発していることです。

大阪生まれの製造業で有名なのはダイハツやダイキンばかりではありません。他にもパナソニック、シャープ、シマノ、クボタなどがありますが、いずれもグローバルで知名度のある企業ばかりです。

ただ、最近は製造業の有力企業が大阪から出てきていないのは寂しい面もあります。その中で、大阪に本社がありビジネスモデルに強みのあるセンサー大手のキーエンスは時価総額で8兆円を超えるなど、日本の株式市場で異彩を放つ存在です。

製造業でいくつものグローバル企業が生まれた大阪に、新しい芽がないのか注目して見る必要がありそうです。

LIMO編集部