大学の「駆け込み合格」による混乱を防ぐにはどうすればいいか、久留米大学商学部の塚崎公義教授が提言します。

毎年厳しくなる大学定員の基準

今年の3月は、大学が一度不合格にした受験生を追加合格にして、他大学に入学を決めていた受験生を引き抜いて入学させる、ということが頻発した模様です。

個々の受験生からすれば、不合格だと諦めていた志望校に合格できたのですから、嬉しいことなのですが、「そんなことなら最初から合格通知をくれていれば、滑り止め大学に入学金を払ったり引越しの準備をしたりする必要がなかったのに」といった不満を持つ受験生(および保護者)も多いはずです。

文部科学省は、大学が定員を大幅に上回った学生数を受け入れると補助金をカットする制度を設けています。そして、その基準を毎年少しずつ厳しくしているのです。18年度からは、大規模大学の場合、定員の1.1倍までしか入学させてはいけない、ということになりました。

従来は定員の1.2倍まで受け入れ可だったのが1.1倍になれば、大学の経営は厳しくなります。もっとも、それは「今までが甘すぎたのだ」と言われてしまえば、反論は難しいでしょう。

問題は、入試の合格者のうち何人が実際に入学するのか、という「歩留まり率」がわからないことです。超難関大学であれば、合格者はほとんど入学するでしょうが、難関大学は合格者の何人かが超難関大学に流れてしまうか、合格発表時点では読めないので、合格判定会議が非常に困難なのです。

1.1倍を超えてしまえば補助金が出ないので、「予想外に歩留まり率が高くなって入学者が定員の1.1倍を超えてしまう」ことが絶対にないように保守的に合格者を絞るわけですが、そうなると、今度は予想外に歩留まり率が低くなって定員割れになってしまう可能性が出てきます。

場合によっては、同じ大学の中でも学部によって定員割れの学部と1.1倍超えの学部が出てしまうこともあり得ます。学部ごとの人気変動や競合大学との入試日程の重なり具合等で歩留まり率が年によって変動するため、読みきれないのです。大学によっては「多すぎる学部から定員割れの学部に移ってくれたら入学金は免除するよ」といった方策が必要になるかもしれません。

追加合格者による玉突きで混乱が生じる