米ユニバーサルディスプレイコーポレーション(UDC)は、有機ELディスプレーや照明パネルに使用される燐光発光材料の世界最大手である。スマートフォンなどに搭載される有機ELディスプレーには現在、赤色と緑色の発光材料には燐光材料、青色には蛍光材料を使用するのが一般的で、UDCは赤色と緑色の燐光発光材料で高いシェアを持つ。同社が2月22日に発表した2017年の通年業績は、売上高が前年比69%増の3.36億ドル、営業利益が同2.1倍の1.46億ドルと過去最高だった。

 しかし、株価は1月18日につけた205.60ドルをピークに下がり続け、4月11日時点で100.15ドルとなり、わずか3カ月で半分以下に下落した。背景にあるのは、アップルのスマートフォン「iPhone X」の販売不振だ。

サムスンの減産が株価を直撃

 UDCは、有機ELディスプレー市場で世界シェアの9割以上を持つ韓国のサムスンディスプレー(SDC)と長年協業関係にあり、現在もSDCが最大の顧客である。17年はSDCから9000万ドルのライセンス収入を得たほか、SDCと燐光発光材料の供給契約を更新し、22年末まで契約を延長した(そこからさらに2年の延長が可能)。

 SDCは17年、iPhone Xに搭載された有機ELディスプレーをアップルに供給した。この供給量をまかなうため、SDCは1兆円以上の巨額投資を断行して製造装置の導入を進め、UDCの燐光発光材料も大量に使用した。これがUDCの17年の好業績に大きく寄与し、UDCは四半期ごとに通年の売り上げ予想を引き上げるという展開が続いた。

 しかし、1月半ばにiPhone Xの販売不振が明らかになり、SDCが有機ELディスプレー工場の稼働率を大きく落としていることや、18年に予定していた増産計画を凍結・延期していることなどが相次いで報じられ、UDCの株価は下落が止まらなくなった。

売上ガイダンスの低さも影響

 この間、中国最大手のディスプレーメーカーBOEが重慶市に新工場の建設計画を発表するなど、有機ELディスプレー業界に明るい話題がなかったわけではない。それでもUDCの株価が下げ止まらないのは、2月22日に同社が公表した18年の通年売上高見通しが、市場の想定よりも低かったためと思われる。

 UDCの16年売上高は1.99億ドル。17年は7割近く伸びて3.36億ドルだったが、現状で18年のガイダンスは3.5億~3.8億ドルとなっており、最大でも13%しか伸びないという想定だ。SDCが稼働率を大幅に下げているとはいえ、韓国のLGディスプレーやBOEをはじめとする中国メーカーが量産立ち上げを進めているなかにあって、UDCのガイダンスは「SDC以外のディスプレーメーカーはスマートフォン用(フレキシブル)有機ELを満足に量産できていない」ことを暗に示し、有機EL市場におけるSDCのシェアの高さと低稼働の影響の大きさを物語っている。

 18年下期からはiPhoneの18年モデル向けに再びSDCで有機ELの生産が活発化し、UDCの材料需要もいくぶん回復するだろう。だが、iPhoneの18年モデルは当初の想定よりも液晶モデルの比率が増えるといわれており、有機ELの需要は大幅に伸びそうにない。

 SDCに対抗しうるような歩留まりでスマートフォン用有機ELを量産できるメーカーが一日も早く出てくることが、UDCにとって何よりの良薬になる。有機ELの普及を考えれば、SDCも同様の思いだろう。

(津村明宏)

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏