久留米大学商学部の塚崎公義教授は、大学1年生から就活のことを考えて準備すべきだ、と説きます。

勉強と貯金と充実した生活が就活の決め手

入学おめでとう。大学生活を大いにエンジョイしてくれたまえ。そんな時に就職活動の話をするのは気が引けるが、何も特別なことをしろと言うのではない。君たちがしっかりと大学生らしく暮らすことが就職活動に大いに役立つのだ、という話だ。

3つのことを、しっかり覚えてほしい。勉強しよう、貯金しよう、充実した学生生活を送ろう。3年後、就活中の君たちに「大学時代は特に何もせず、ぼんやり過ごしていました」と言われると、当方としてアドバイスのしようがないので(笑)。

4年分の勉強を3年間で終えよう

大学4年生の前半は、就職活動に専念しよう。そのためには、3年生までに卒業に必要な単位をできるだけ多く取得しておく必要がある。大学の教員としては「4年生は講義など出ないで就活しろ」とは言えないので、「4年分の勉強を3年で終えておけ」という表現を使っているが(笑)。

成績は良いに越したことはないが、とにかく重要なのは単位数である。ライバルが就活に集中している時に講義に出るのは負担であるし、面接官としても「この学生は、内定を出しても卒業できないかもしれない」と考える可能性があるからである。

内容としては、論理的に物を考えて、自分の考えを相手に伝える訓練をしておきたい。「高卒の方が給料が安いのに、当社が大卒の君を雇うとして、メリットは何か?」と聞かれたら、「高校生は、知識を丸暗記するだけで、物事を論理的に考えたり自分の考えを相手に伝えたりする訓練ができていません。私は大学でそうした訓練を十分に受けましたから、社内の会議などでも良い発言ができると思います」と答えられるようにしておこう。

半年アルバイトせずに暮らせるように、貯金をしよう

「就職活動には金がかかるのか?」と聞かれることが多い。就活スーツの購入、交通費などが必要だが、遠隔地で就活するのでなければ、それほど多額ではないので、恐れる必要はない。

それより重要なことは、「半年間はアルバイトをせずに就活に専念すべきだから、半年間はアルバイトをしなくても飢え死にしないだけの貯金をしておけ」ということだ。3年間で50万円を貯めるとすると、期末時期を除いて毎月2万円というイメージであろう。

「就活生は半年間バイトをするな」というと、「半年のバイト代50万円がもったいないから、バイトは続ける」という学生も多いが、それは絶対に間違いである。学生にとって50万円は巨額であるが、就活の結果で生涯所得が何千万円も違ってくることを考えると、50万円を惜しんで就活の手を抜くべきではない。ことの軽重を判断できる大人になってほしい。

充実した学生生活で成長しよう

就職活動で最もよく聞かれるのは、「学生時代に頑張ったことは何か」である。もちろん、本当に頑張ったことを聞きたいのではなく、それによっていかに成長できたのかを聞いているのである。

「体育会系の運動部で練習に打ち込みました。それにより、気力と体力と忍耐力が強くなりました」が最強であろうが、就活のために運動部に加入するというのも普通の人には辛いだろうから、他の選択肢も検討しよう。

「思い切りアルバイトをして資金を貯め、世界一周旅行に行きました。日本では常識だと思っていたことが世界では常識ではない、ということに気づくことができました。それからは、当然だと思っていることも本当にそうだろうかと疑ってみる習慣が付き、様々な発見をすることができました」というのはいかがであろうか。

目標に向かって真剣にアルバイトをする努力、パック旅行ではなく自分で世界を一周する行動力をアピールすると共に、「ライバルたちの経験していないことを経験し、多くの物を得た」と主張できるので、高得点であろう。

無難なところでは、「ボランティア活動に打ち込みました。様々な活動を通じて、困っている方の望んでいることと支援する側が思い込んでいることのズレをいかに埋めていくのかが重要だと痛感し、相互理解に尽力しました。活動を通じて様々な方々と協力する作業も多かったので、コミュニケーション能力は付いたと思います」といった物でも良い。

「好きな異性に告白しました。それまで引っ込み思案で、他人に話しかけるのが苦手だった私ですが、それからは誰にでも気軽に話しかけることができるようになり、友人が増えました」でも良い。

何をしたのか、それによってどのように成長できたのか、がアピールできることなら、何でもトライしてみるべきである。

一方で、「ゲームに打ち込み、寝る時間を惜しんでゲームをして、全国大会に出場しました」では、成長が感じ取れない。「チーム対戦なのでチームメンバー間のコミュニケーションを磨きました」「戦略を練るため、孫子の兵法等々を研究しました」といったことであれば、それなりの評価は得られるであろうが。

なにもゲームのチャンピオンになるのが悪いと言っているのではない。「目的に向かって努力し、最後までやり遂げる粘り強い性格です」というのは、自己PRの際に使えるエピソードであろう。

大人と話す機会を多く持とう

以上の3つに次いで重要なのは、コミュニケーション能力を磨くことである。面接で重視されるのは、コミュニケーション能力だからである。

企業が求めるコミュニケーション能力とは、「自分の考えていることを相手に伝える能力」である。筆者のゼミでは毎回「最近気になったニュースは何か。そのニュースを聞いた時に感じたこと、考えたことを述べよ」と要求しているが、その目的の一つは学生のコミュニケーション能力を高めるための訓練ということである。

今一つ企業から求められるのは「学生同士ではなく、大人と会話ができる能力」である。これは、特別に訓練しなくても、日常から大人と話をする機会を持つように心がけるだけでも自然と身に付くので、親でも先生でも知り合いの大人でも、積極的に話しかけるようにすべきである。

アルバイトでも、たとえば飲食店の接客などを続ければ、ある程度はコミュニケーション能力が高まるであろう。それを考えると、アルバイトを探す時に、コンビニのレジより飲食店を優先すべきかもしれない。

なお、採用担当者に嫌われるのはネクラ、無気力、変人であるから、自分がそうした性格であると思う人は、性格を転換する努力も必要であろう。もっとも、それは容易なことではなさそうだから、最低限、ネクラ、無気力、変人ではないと面接官に誤解させるための努力はしよう(笑)。

サークルには加入すべきであるし、友人との旅行の思い出などが語れるように、一度は旅行に参加してみよう。

今回は、以上である。4年後の諸君の明るい顔を、楽しみにしている。

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塚崎 公義