ランドセルの多様化はいつ頃から?

今週は多くの小学校で入学式が行われました。新1年生にとって、入学の思い出といえばランドセルではないでしょうか。

かつては、ランドセルは祖父母から贈られることが多かったように思います。郷里から送られてきた箱を開けると中にランドセルが入っていて、お孫さんは大喜びというシーンが定番でした。しかし、最近ではその光景も少なくなりつつあります。

理由の一つはランドセルの種類が多様化していることです。たとえばカラーバリエーションです。今の父親、母親世代が子どものころ、ランドセルの色といえば、女児向けは赤、男児向けは黒ぐらいしかありませんでした。ところが、最近はとてもカラフルになっています。きらびやかな装飾を施したものも少なくありません。

転機となったのは2001年、イオンリテールが「トップバリュ24色ランドセル」(現在のシリーズ名は「かるすぽ・はなまるランドセル24」)を売り出したことです。他のランドセルメーカーも追随することで、選択肢は一気に広がりました。

価格は上昇、商戦は年々前倒し

多様化にともない、ランドセルの価格も上昇しています。大きな要因の一つが少子高齢化の進展です。子供の数が減っていることにより、一人の子供にかけられる金額が増えています。

一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会によれば、2014年の平均単価は42,400円で、10年前(35,000円)の1.2倍になっています。有名百貨店では10万円近くするランドセルもよく売れているようです。

ランドセルが「安くない買い物」になっているため、保護者も、「わが子に合ったランドセル選び」に真剣です。人気のブランドのランドセルの販売開始時は早朝から長い列ができるほど。入学の1年以上前からどのランドセルを買うかを検討するという「ラン活(ランドセル活動)」という言葉も登場しています。

ランドセル商戦も年々早くなっています。今では、ゴールデンウィークから夏休みがピークになっています。ゴールデンウィークや夏休みに帰省したときに、祖父母と一緒に子ども本人が選ぶという買い方が増えているようです。

イオンでは2019年春の入学に向けたランドセルの予約販売をすでに3月6日に開始しています。また同社では昨年から、ランドセルを通年で販売しています。

子どもの腰痛対策を施したランドセルも

カラフルになっていることに加えて、最近のランドセルの特長と言えるのが大型化です。最近では、A4サイズの用紙をファイルするA4フラットファイルが曲げずに入れられるほか、マチも厚くなっているものがほとんどです。

理由は、「脱ゆとり教育」で教科書が年々厚く、大きくなっていること。さらに、教科書だけでなくサブテキストや、ドリル、プリントなどが多く、昔の子どもたちに比べ、今の子供たちのランドセルはとても重くなっています。1年生でも5キログラム以上のランドセルを背負っている子どもも珍しくないといいます。

これはかなりの負担であることは間違いありません。最近では腰痛に悩む子どもも増えているそうです。課題の解決のため、ランドセルメーカーでも「腰痛対策」などの工夫を施した商品を開発しています。軽量化に加え、肩や腰に特殊なパッドが入ったランドセルもトレンドになりつつあります。

2020年に始まる新学習指導要領では、小学校の授業時間が増え、教科書や教材のページ数がさらに増えると予想されています。ランドセルはますます重くなりそうです。

ただし、携帯ゲーム機などの影響で、最近の子どもたちは猫背になりやすいのも腰痛の一因とか。また、ランドセル工業会では、子どもの体に合わせて、背負いひもをきちんと調節することが大切だとしています。

上山 光一