「ブラック企業に投資したいですか?」

ブラック企業の定義をグーグルで調べてみると、「長時間労働」「残業代未払い」「違法労働」「パワハラ」「社員使い捨て」等の言葉が出てきます。

当たり前な話かもしれませんが、「ブラック企業で働きたいですか」と聞かれて、「はい」と応える人は、おそらくほとんどいないと思います。普通、どうせ働くなら、働いた分だけ正当な対価をもらいたいと思いますよね。それなのに、ブラック企業は、社員を搾取して、経営者が荒稼ぎしているようなイメージが浮かびます。「社畜」なんていう言葉も存在しているくらいです。

では、「ブラック企業に投資したいですか」と聞かれたらどうでしょうか。「働きたいか」に比べて、「投資したいか」と聞かれると、答えを出すのは結構難しいのではないでしょうか。これが今回のテーマです。少し頭を働かせてみましょう。

ブラック企業は、社員を搾取して荒稼ぎをしている企業だとすると、搾取した分だけ利益が出ていて儲かりそうな臭いもします。ただ、その一方で、ブラック企業だということがテレビやSNSで話題になると、ネガティブなイメージが定着して経営が傾いたりするかもしれません。

この点、投資のプロと言われる機関投資家、とりわけ海外の機関投資家はどう考えているのでしょうか。

機関投資家から見たブラック企業

機関投資家にとって、ブラック企業は比較的新しいテーマです。というのも、従来、機関投資家が投資判断で見ているのは、その会社の売上や利益などの業績だけ。利益が増えていれば有望株。利益が減っていれば不安視。その会社の中で社員がどう働いているかなどには関心が向いていなかったからです。

ところが、投資家の期待に応えようと、2000年頃から日本企業にとって「株主重視」「売上より利益」「利益率改善」が重大なキーフレーズになっていきます。

そこで矢面に立ったのが人件費でした。日本企業はいかに人件費を抑え、利益を捻出するかに注力していきます。結果、日本人の給与水準は下落。国税庁の「民間給与実態調査」という統計でも、1998年には420万円ほどだった平均給与は、今は360万円ほどになっています。

シンプルに言えば、人件費を抑え利益を増やすという慣行が、ブラック企業が生まれる土壌を作り出していったことになります。

こう整理すると、機関投資家にとってブラック企業は良い投資先のように思えます。しかし、最近、機関投資家の間でブラック企業をいち早く察知し、投資を避けようという動きが出てきました。彼らには、ブラック企業が「投資機会」ではなく、「投資リスク」と映るようになってきたからです。

ブラック企業の投資上の問題点