退職時に子どもはまだ大学生!

みなさんの周りに、「俺が退職の時にまだこの子は大学生なんだ」ってぼやいている人はいらっしゃいませんか。

厚生労働省のデータから、新生児の母親の年齢が35歳以上である比率を見ると、2016年は28.5%と過去最高に達しています。夫婦の年齢差を考慮すると、その夫は40歳くらいになっていることが多く、20年後を想定すると、子どもが大学に行っている頃に自分の退職が来るということになります。

ちなみに、この比率は非常に速いペースで上昇しており、40年前の6倍、10年前と比べても10ポイント以上高まっています。また年間100万人弱の新生児が生まれていますので、こうした世帯が毎年20-30万世帯ずつ誕生していることになります。

「トリレンマ世代」、恐れずとも侮らず

このデータから出産の高齢化が進んでいるという社会的状況を知るだけでなく、40代にとってのお金との向き合い方にも大きな影響を与えることも考えるべきです。

自分が退職する(老後資金が必要な)年齢になった頃、子供はまだ大学に通い(最も教育費が嵩む時代)、自分の親は介護(当然、介護の資金的負担も想定される)が必要になるという、3つの大きな支出の時期が重なる可能性が高くなるのです。

どの世代でもどこの国でもあることですが、これが一時期に重なるのは、日本特有の課題といえます。フィデリティ退職・投資教育研究所では、これを3つの課題(トリレンマ)が一度に圧しかかる世代として、40代を「トリレンマ世代」と呼んでいます。

ちなみに、海外では、子どもの教育費負担と親の介護負担の2つに挟まれる現役世代を「サンドイッチ世代」と呼んでいますが、高齢化と晩婚化が続くなかで日本は挟まれる現役世代も自身の退職前後で、3つの課題が同時に圧しかかってきているのです。

この世代の3つの課題への対応策は、それぞれに早めに準備を進めることしかありません。親の介護はできるだけ親世代(大学生からすれば祖父母世代)で負担ができるよう、その世代の自助努力を促すことが必要です。また自分の老後の資産形成と子どもの教育費は同時並行でゆっくりと時間をかけて進めるしか手はありません。

ただ、どの世代でも、どこの国でもこれら3つのことはそれぞれ対応をしてきたことなので、決して無理なことではありません。ただ、一度に来るために早めの周到な準備が不可欠になります。

アセット・ロケーションが大切に

同時並行で進めるとすると、老後の生活費用の資産と、それ以外の支出のための資産を一緒に運用することには課題があります。たとえば、老後の生活資金は原則60歳以降まで運用を続けますが、子どもの教育資金は子どもが高校入学、大学入学といった、自身の退職よりも前の時点で使うことが多いはずです。

そこで、NISA(少額投資非課税制度)やDC(確定拠出年金)など制度の概要をよく理解して、資産形成の目的と口座の特性がきちんとマッチするように考えることが必要になります。これはまさしくアセット・ロケーションと呼べるものです(2017年1月5日のコラム「アセット・ロケーション元年」を参照)。

新生児の母親の年齢が35歳以上の比率(単位:%)

出所:厚生労働省、人口動態統計月報年計(確定値)概況をもとにフィデリティ退職・投資教育研究所作成

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史