日本光電をご存じでしょうか。同社が扱う医療用電子機器、特に主力の病院向け生体情報モニタは、品質も高く、また、海外でも現地における徹底したサービスが高く評価され、米国などの先進国のみならず、発展途上国での売り上げも伸ばしています。

生体情報モニタだけではない。脳波計もAEDも

入院の経験のある方はご存じかと思いますが、生体情報モニタとは患者さんの状態を把握するために、血圧、心電図、呼吸などを測定する機械です。血圧などが下がった場合などにはアラームが鳴ることがあります。

同社の歴史は古く、取り扱う商品は生体情報モニタだけではありません。1951年には世界初の全交流直記式脳波装置を開発。現在では、同社の脳波計はジョンズ・ホプキンス病院やクリーブランドクリニックといった世界中の研修医を受け入れる米国トップクラスの病院が使用しています。

ちなみに脳波計というのは、てんかん、睡眠障害、脳腫瘍などの診断に使われる検査機器です。さらに、皆さんが駅や商業・公共施設で目にするAED(自動体外式除細動器)も同社は取り扱っています。

このように日本光電では、脳波計や心電計などの検査機器を扱う「生体計測機器」、生体情報モニタや関連の消耗品・保守サービスを扱う「生体情報モニタ」、AED、心臓ペースメーカ、人工呼吸器を扱う「治療機器」、血球計数器などを扱う「その他」という、主に4つの商品群を手がけています。

日本光電の長期ビジョンとは

日本光電は創立60周年を機に、2010年4月から2020年3月までの長期ビジョンを発表しています。その中で2020年に目指すべき姿として示されたのは、大きく言って以下の3つです。

  • 世界初の革新的技術の確立
  • 世界最高品質の確立
  • グローバルシェアNo.1の獲得

先述の長期ビジョンの10年間は3つのステージに分けられ、2017年4月からは「TRANSFORM 2020」とされています。

「TRANSFORM 2020」による2020年3月期の経営目標値において売上高は1,900億円。その内訳は、国内売上高が1,350億円、海外売上高は550億円です。収益については、営業利益で200億円を、営業利益率は10%を超える水準を目指しています。

また、2017年3月期には海外売上比率が25%程度になっています。海外の医療機器市場も成長市場であり、2016年には約37兆円であった規模が2021年には48兆円程度までに拡大するとの見通しもあります。

こうした海外市場だけではなく、同社の国内市場での売上高成長が年率数%でも継続的に伸びれば、同社の業績はより確かなものになるのではないでしょうか。

安定の国内市場。誰が顧客なのか

同社の全体売上の75%を占める国内売上。そのうち約20%が大学向け、30%が官公立病院向けのため、その予算繰りなどに短期的には影響されます。

大学や官公立病院などに商品やサービスを提供していると、特に第4四半期の比率が毎年大きくなります。ただ、四半期ないしは半期の数字では、業績の見通しを判断しにくいという特徴があります。業績が振れやすく、修正が出やすいので、同社の業績を見る際には注意が必要です。

しかし、中長期的には、国内病院の効率化は必須課題であるため、医療現場の効率化、安全化に貢献する同社の機器は欠かせません。国内売上もここから大きく伸びることはないにしても、安定的であると見ることができます。

評価が高い製品

同社が今後注力すべきは、成長余力が大きい海外だというのはこれまで見てきたとおりです。同社の機器は日本製であり、短期的には為替の影響は避けられませんが、製品は高い評価を受けています。

医療機器への第三者評価会社であるMD Buylineが実施した調査結果では、同社の生体情報モニタは10年連続で顧客満足度No.1を獲得しています。これは、機器自体の品質の高さと信頼度、そして、徹底したサービス体制の結果といえるのではないでしょうか。

まとめにかえて

いかがでしたでしょうか。同社の中期経営計画「Transform 2020」は、高収益体質への変革を目指しています。特に投信1編集部で注目しているのは、同社の米国戦略です。世界最大、かつ最先端の市場での事業基盤を強化することができれば、さらなる成長に弾みがつくのではないでしょうか。

LIMO編集部