最近よく目にする「パンゲア」という言葉

日本経済新聞が、2018年1月1日から『パンゲアの扉 つながる世界』という連載を開始しています。この「パンゲア」という言葉が気になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

では、パンゲアとはどのような意味か、インターネットで検索すると以下のような説明がありました。

約3億年前、大陸移動が起こる前に、現在の大陸が巨大な一つの塊であったと想定される大陸の名称。やがて北アメリカ・ユーラシアとゴンドワナの各大陸に分かれたとされる。1915年にウェーゲナーが提唱。

コトバンクより引用(小学館「デジタル大辞泉」の解説)

 

ちなみに、日経の連載の冒頭には「一握りの大国や大企業だけが力を振るってきたグローバリゼーションが変わる。小さな国、小さな企業、そして個人。デジタルの翼に解き放たれ、境界を溶かしてゆく。つながる世界への扉が開いた。もう誰も後には戻れない」とあります。

このように、今回の連載では世界が再び一つになる状態を「パンゲア」という言葉で表し、多くの事例が紹介されています。

東芝メモリの受け皿会社の社名も「パンゲア」

話は変わりますが、昨年話題となった東芝(6502)の半導体メモリ事業の売却先も「パンゲア」という買収目的会社です。正式には「株式会社Pangea」という社名で、投資ファンドのべインキャピタルにより2017年6月に設立されています。

今後、Pangeaにはべインキャピタルに加え、東芝、アップル、SKハイニックスなどの日米韓企業が総額で約2兆円の出資や融資を行い、その資金を元に東芝から東芝メモリの株式を100%取得することになります。

この買収目的会社の社名がなぜ「パンゲア」なのかを正式に発表した資料は見当たりません。とはいえ、おそらく日経の連載と同様に、バラバラであったものが一つにつながる、つまり日米韓企業がそれぞれの思惑を超えて一つにまとまる状態を表したかったのではないかとも推察されます。

パンゲアに戻ることは可能なのか

とはいえ、少し気になることは、パンゲアを唱えたウェーゲナー博士が、地球は再び一つの大陸に戻ることまで予想していたかということです。結論としては、同博士は大昔は大陸は一つであったという仮説を示したに過ぎず、地球が再び一つの大陸になるとは言っていません。

このため、仮にベインキャピタルが「ばらばらなものが一つにまとまる」という思いを込めて東芝の買収受け皿会社を「パンゲア」と命名したのだとしたら、それは大陸移動説の新たな解釈ということになります。

もちろん、この社名の由来に関する推測が正しいかはわかりません。とはいえ、東芝メモリの将来の発展を考えるのであれば、少なくとも「3億年以上前にあったパンゲアはその後分裂した」という意味を込めたのではないことは確かではないでしょうか。

一方、日経の連載では、インターネットを通して世界は一つになる、つまり「パンゲア」が再来するという多くの事例が紹介されており、パンゲアのその後のように世界が分裂に向かうという事例は出てきません。

このため、日経がネットで世界がつながる状態を「パンゲア」と表したのも、穿った見方をすれば、べインキャピタルの考え方に触発されたのかもしれません。

果たして、世界はパンゲアの時代のように一つにつながっていくのか、また、同床異夢の出資者が集まる東芝メモリーを買収するパンゲア社は一つにまとまり続けるのか、それともパンゲアのその後のように分裂していくのか。

年明けから既に2週間近くが過ぎましたが、今年1年、そうしたことをじっくりと考えていきたいと思います。

LIMO編集部