皆さま 新年あけましておめでとうございます。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

私は、新年を実家の神戸で迎えたのですが、天候にも恵まれた良いお正月でした。

2018年も、よろしくお願いします。

さて、年初は、日経平均株価の高値、安値に関する予想が各種メディアの紙面をかざる時期です。2018年中に30,000円に到達するとの強気の見方もあり、特に上値目処をどの程度と考えるかについて、注目が集まっているように感じます。

私自身は、2018年の日経平均株価の上値目処は、27,000円前後と考えています。そこで、本年の最初のコラムは、わが国の株式について、投資環境のポイントを整理しておきたいと考えます。

わが国では、3月末を決算期とする企業が多いわけですが、2018年3月期、および2019年3月期のEPS(1株当たり利益:Earnings per share)の増加率(前期比)に関する私の予想は、図表1の通りです。

図表1:EPS増加率予想

出所:筆者による予想。
注:2018年3月期とは、2017年4月~2018年3月までの事業年度を示す。

年度決算であるため、(カレンダーの)暦年と年度はズレが生じるわけですが、「①株価は業績に先んじて動くこと」、「②12月末時点では、2018年3月期の対象期間がほぼ4分の3終了していること」もあって、2017年暦年の株価には2018年3月期の決算が相当程度織り込まれていると考えています。

2017年の日経平均株価は、2016年末19,114円37銭から2017年末22,764円94銭へ、約2割(+19.1%)上昇しましたが、これは図表1のEPS増加率と整合的な数字です(この意味では、2017年の株価上昇は自然なものでした)。

仮に、2019年3月期の増益率が、私の予想通り約1割の増加であれば(これは現時点でのコンセンサスと比較するとやや強気の見方だと思われます)、現在約23,500円の株価は、26,000円程度(=23,500円*1.1)まで上昇することになります。

しかし、前述の通り、2018年の株価の上値予想については、30,000円を超えるものもあります。

そして、私自身も、2018年はEPSの増加率を超える27,000円程度までの株価の上昇が起こると考えており、その主要な3つの理由は、図表2の通りです。

図表2:EPS増加率を超えて株価が上昇すると考える3つの理由

出所:筆者による作成。

まず、わが国では、バブル崩壊以降の苦い経験から、減税(税制改革)などの政策対応について、「しょせんカンフル剤」であるとの皮肉な見方がまだまだあるように感じています。

しかし、2018年の米国の政策については、景気の悪化やデフレ入り懸念のための政策ではなく、経済状況が世界的に安定しているタイミングで、減税(決定)やインフラ投資(予想)が実施されると思われます。これは、景気を想像以上に加速させる可能性を秘めた政策であると考えています。

次に、物価上昇が加速しない、いわゆるディスインフレ的な環境は、価格の安定が需要の弱さなどを想起させ、株価の下落材料とみなされる側面もありました。しかし、上記の通り、景気が加速する局面でのディスインフレ的な環境は、慎重な利上げ、長期金利の安定を通じて、株価の上昇要因としてのみ働く可能性に注目しています。

最後に、日本の「企業行動の変化に期待が集まる年」となる可能性については、次回以降、ご報告させていただきます。

それでは、本年もどうぞよろしくお願いします。

(2018年1月4日 15:00執筆)

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柏原 延行