金融リテラシーは生活スキル

金融リテラシーという言葉を時々耳にすると思いますが、なんとなくぼんやりとした理解のまま使っていることはありませんか?

Literacyという英語を辞書で引くと、「識字」と出てきます。読み書きの能力ということですから、金融リテラシーとは、金融に関する基礎的な能力といってもいいでしょう。

金融リテラシーとは、「金融に関する知識や情報を正しく理解し、自らが主体的に判断することのできる能力であり、社会人として経済的に自立し、より良い暮らしを送っていくうえで欠かせない生活スキルです」(日本証券業協会のホームページ)。

また金融庁が作成した「最低限身に付けるべき金融リテラシー」と題した資料では、それを「家計管理」、「生活設計」、「金融知識及び金融経済情勢の理解と適切な金融商品の利用選択」、そして「外部の知見の適切な活用」の4分野にまとめ、合わせて15項目を紹介しています(詳細はこちら)。

何から始めるか

では具体的に何から始めたらいいでしょうか。この「最低限身に付けるべき金融リテラシー」を年齢別に書いた「金融リテラシー・マップ」で、小学生の項目を少し挙げてみます。

  • 家計管理―必要なもの(ニーズ)とほしいもの(ウォンツ)を区別し、計画を立てて買い物ができる
  • ローン・クレジット―子ども同士でお金の貸し借りはしないようにする
  • 資産形成商品―金利計算(単利)などを通じて、主な預金商品とその利息の違いについて理解する

こんな具合ですから、自分の家庭でもできることがありそうです。

金融教育というとどうしても「学校での教育」を念頭においてしまいがちですが、何しろ、金融リテラシーは「生活スキル」ですから、生活の現場、すなわち家庭が何よりの実践の場だということも承知しておく必要があります。

もちろん学校での教育も重要です。同じ「金融リテラシー・マップ」で3つの項目を大学生の欄でみると、

  • 家計管理―収支管理の必要性を理解し、必要に応じてアルバイトなどで収支改善をしつつ、自分の能力向上のための支出を計画的に行える
  • ローン・クレジット―奨学金を借りている場合、返済を遅延した場合の影響などを理解するとともに、自力で返済する意思を持ち、返済計画を立てることができる
  • 資産形成商品―さまざまな金融商品のリスクとリターンを理解し、自己責任のもとで貯蓄・運用することができる。分散投資によりリスク軽減が図れることを理解している。長期運用には「時間分散」の効果があることを理解している。

となります。

ここまでくると簡単に家庭が手を出すことができないかもしれませんから、ここは学校での教育が重要になってきます。

もちろんそれを理解するための基礎として、小学生、中学生での金融教育は不可欠ですから、家庭でのお金に関する考え方の教育と学校での金融教育はともに必要な金融リテラシーの向上策といえそうです。

合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史