三菱総研の調査によると、関西を訪れる外国人旅行者のうち神戸訪問者は約74万人、率としては3.1%にしかなりません。関西三大都市の中で、大阪や京都と圧倒的な差がついてしまった神戸の外国人旅行者数。その背景について考えてみました。

関西における訪日客の人気エリアは意外な結果に

関西エアポートによると、2016年の関西国際空港の外国人旅客数は1217万人を突破し、5年連続で過去最高を更新。関空と難波を結ぶ南海本線は大きな荷物を持った外国人旅行者で以前とは比べものにならないくらい混雑していますが、この数字を見るとさもありなんと納得してしまいます。

そして今月7日、三菱総研による、2016年の関西における訪日客の旅行実態調査が公表されました。そこには、訪日客には京都より大阪が人気という興味深い結果が掲載されています。

ただ今回、調査結果ではあまり触れられていませんが、別途注目すべき点もあります。それは、外国人旅行者から見た神戸の存在感の希薄さ。神戸は外国人旅行者からほぼスルーされている現実が見えてきます。

神戸の訪問者数は74万人で全体の3.1%

三菱総研の調査では、神戸を訪問した外国人旅行者の数は推定74万人で、全体に占める割合は3.1%です。大阪では心斎橋と難波が702万人と最多、京都は東山が480万人で最多となっています。一方で、神戸は全体でも大阪や京都の一地域の訪日客に満たない人数しか訪れていません。

なお、奈良(奈良公園・東大寺)は68万人、2.8%であり、ほぼ神戸と並ぶ数字です。関西三大都市の神戸としては、意外なほどの低調ぶりです。

異国情緒漂う神戸は日本人には魅力だが・・・

北野の異人館、横浜や長崎とならぶ中華街である南京町がある神戸。ただ、日本人にとって神戸は異国情緒漂う魅力的な街でも、外国人旅行者には当たり前の光景なのでアピールしないという話を時折耳にします。

確かに、大阪から京都という訪日客の黄金ルートと神戸は逆方向だということもあります。それでも大阪から神戸までは鉄道で約20分。大阪からは京都より神戸の方が距離的には近いのです。

また、日本屈指の港町神戸には大型クルーズ船も寄港します。しかし乗客は神戸港に到着後、そのまま観光バスで大阪や京都に向かってしまい、神戸の街中はほとんど訪れないようです。関空からの訪日客だけでなく、船旅の訪日客も“神戸スルー”が常態化していると言えるでしょう。

実際に三宮の商店街を歩いていても、大阪の梅田・難波、京都の四条・河原町に比べると、外国人旅行者はかなり少ないと感じます。

外国人受けするコンテンツは存在

神戸といえば、神戸ビーフが世界に知られています。実際に三宮駅前の神戸牛の有名店には、外国人旅行者の列ができています。また灘区は日本酒の街ですし、そのほかにも餃子、お好み焼き、そばめしなど、B級グルメも豊富です。

神戸市内には昭和の雰囲気が残る商店街が今も各地にあります。“B面の神戸”とも言われ、かつては西の浅草と評されてチャップリンが訪れた新開地も、ディープ神戸スポットとして知られています。

北野の異人館や南京町の中華街でなくとも、徐々に増えているリピーターの外国人旅行者が魅力を感じるコンテンツは神戸に存在しています。訪日スタイルが団体旅行から個人旅行にシフトしつつある状況を考えると、今後神戸に目を向ける外国人観旅行者が増える要素は充分にあると言えるのではないでしょうか。

石井 僚一