日米独で高値更新となった株式市場に対し、為替市場は静かな値動きが続いています。そうしたリスクオン状態の中で、リスク指標の金価格が6連騰。また日経平均とドル/円の相関も崩れています。各相関の崩れがどのような形で元に戻ることになるのか、今後の相場の流れを読む上で着目したいポイントです。

先週の為替市場振り返り

米雇用統計発表後にスタートした先週の為替市場は、緩慢な値動きに終始しました。特筆すべき指標発表も無く、多くの通貨ペアでトレンドが発生せず、レンジ相場形成となっています。

そんな中、ドル/円は13日の9月米小売売上高発表を契機に若干円高が進み、111円台に突入。週初は7月高値の114円台到達が意識されていましたが、114円に乗ることなく陰線で週の取引を終えています。

9月以降下落が継続しているユーロ/ドルは、戻しを入れて上昇。ただし、直近の高値・安値のいずれも更新しておらず、明確なトレンドは生じていません。

ドル/円の過去6か月間の推移

活況を呈する株式市場

一方、先週は株式市場が先進国を中心に活況を呈しました。既に連日高値を更新している米国市場に加え、ドイツ市場が年初来高値を更新し、イギリス市場も年内の高値水準に位置している状況です。

また、日本でも日経平均が年初来高値を更新。13日には約21年ぶりに21,000円台に到達しました。21年前の1996年は金融危機前であり、この水準になったのは今回の株価上昇の力強さを象徴しています。

日本市場ではこれまでのアベノミクス相場以降、日経平均上昇時は円安という相関となるケースが多かったのですが、今回は株価上昇の一方、ドル/円はほとんど円安方向に反応をしていません。むしろ若干円高に進んでいる状況であり、今回の株価上昇は為替市場から見ると、これまでとは異なる風景となっています。

リスク指標の金価格が6連騰

株式市場が絶好調の中、これまで下落が継続していた金価格(XAU/USD)が6日の雇用統計の日より6連騰しています。

リスク指標とも言われる金価格は、株式市場が上昇であれば下落というのがセオリーです。そのため、各国の株式市場が高値更新を続ける中での金価格の上昇は、通常とは異なる値動きを見せていると言えます。

一方、金価格と同様にリスク指標と言われているVIX指数は安値水準を維持。リスクオン状態の金融市場ですが、金価格の上昇が今後の金融市場にどのような影響を与えるのか、注意したい部分となります。

今週の見通し

先々週、先週と大きな値動きのなかった為替市場には、値動きのエネルギーが蓄積されています。よって次に生じる値動きは、大きなものになる可能性があります。

今週も指標発表としては、特筆すべきものはありません。引き続き米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長人事が為替市場に少なからぬ影響を与えると予想されます。

ドル/円では、アベノミクス相場以降相関していた株価とドル/円がこれまでとは異なる動きを見せていることに注目です。

若干中期的な動きとはなりますが、ドル/円が円安に向かうのか、株価が下落するのか、相関関係が元に戻る過程でいずれかの現象が生じることになります(無論、戻らない可能性も考慮する必要があります)。

なお、昨年秋のトランプ相場ではドルと株価が共に上昇しましたが、今年の米国市場は株価とドルの相関が崩れています。直近の株価上昇もドルインデックスを見ると、ドルの上昇を伴うものではありません。

株式市場と金価格の逆相関の関係も崩れており、足元の金融市場はこれまでの延長では語ることができない状況となっているようです。

まとめ

足元では金融市場の主役が株式市場となっており、為替市場は緩慢な値動きが続いています。とはいえ、レンジ相場形成の後に大きく動くのが金融市場です。次の値動きに乗り遅れることのないように準備したいと思います。

石井 僚一