先日、株式市場関係者をアッと驚かせた社名変更がありました。比較サイト「比較.com」を運営する比較.com株式会社が、2017年10月1日付けで会社名を「手間いらず株式会社」に変更したのです。「一体何があったんだ」と証券アナリストがざわつくほど、その会社名にはインパクトがありました。今回は同社の社名変更の背景について見ていきたいと思います。

手間いらずとは一体何か

8月25日に発表されたプレスリリースで同社の社名変更を知ったという、とあるベテラン証券アナリストは次のように言いました。

「なんと素直な会社名なのか。長年企業を見てきたけれどもこんな会社名は見たことがない」

では、この会社名はどこから来たのでしょうか。

実は新社名「手間いらず」は、同社が提供する宿泊予約サイトコントローラ「TEMAIRAZU」シリーズに由来しています。宿泊予約サイトコントローラとは、複数のオンライン予約サイトの情報を一括管理できるホテル・旅館向けサービスです。

TEMAIRAZUは、複数の宿泊予約サイトを一括管理することができるので、オーバーブッキングの回避など在庫管理の効率化につながるほか、スマホやタブレットなどインターネットに接続された複数の端末で管理・操作できる利便性も特徴です。

オンライン宿泊予約サイトが世の中に現れたのは2002年のことです。その後まもなくインストール型アプリケーション予約サイトコントローラ「手間いらず!」が誕生しました。2010年にはASP型「手間いらず.NET」へと発展、さらに機能追加なども経て、2015年に「TEMAIRAZU」シリーズへと変化してきた経緯があります。

会社名を変更した狙いとは

同社はもともと比較サイト「比較.com」の運営を目的に、同サービス名にもとづいて比較.comを会社名としていました。

一方、2007年には「手間いらず!」の運営・販売を行っていた、有限会社プラスアルファ(その後株式会社プラスアルファ)の株式を取得し、2009年に同社を吸収合併しています。それに伴い、アプリケーションサービス事業「手間いらず事業部」を設立しています。そして、このアプリケーション事業は順調に拡大し、同社の収益を支える事業として成長しています。

同社はコア事業として成長しているサービス名を社名として採用することで、認知度・ブランド力を向上させることを目的に社名を変更したことになります。

ちなみに、同社の2017年6月期の売上高9億2,000万円弱のうち、アプリケーションサービス事業は全体の約93%を占めており、旧社名の比較.comを展開しているインターネットメディア事業は6,600万円に過ぎません。

意外に高い収益性

TEMAIRAZUを展開するアプリケーションサービス事業は売上高が8億5,300万円であるのに対して、全社共通費配賦後のセグメント利益は5億6,000万円と、利益率は54%にも及びます。

売上高比率の小さなインターネットメディア事業はというと、こちらも売上高規模がアプリケーションサービス事業より小さいとはいえ、全社共通費配賦後のセグメント利益は2,600万円と利益率は27%にも及びます。

いずれも収益性の高い事業といえます。こうした事業を展開し継続することで、同社の純資産は24億円と、総資産が26億円であることを考えると非常に強固なバランスシートを有しています。

アプリケーションサービス事業の展開

同社は国内外の予約サイトへの接続を継続して展開しており、旅行会社用ホテル予約システム、宿泊マッチングプラットフォーム、Booking.comの予約システムなどへの接続をおこなっています。

現時点で、世界の有力な旅行関連サイトとの接続がされており、たとえば米エクスペディア、米トリップアドバイザー、蘭Booking.com、中国自在客などとも接続されています。

今後、訪日外国人旅行者の数はさらに伸びることが期待されており、日本政府は2020年にその目標人数を4,000万人と発表しています。

まとめにかえて

今回の同社の社名変更は、同社の有力なサービス名をより知ってもらいたいという狙いのようです。また、そのサービスは今後も成長し続けるであろう訪日外国人旅行者の拡大を基盤としたものですから、同社のサービスの動向も注目です。

青山 諭志