Jリーグも終盤に突入、特にJ2の昇格争いが最大の焦点に

プロ野球はレギュラーシーズンがそろそろ終了し、その後はクライマックスシリーズ、日本シリーズへと展開していき、11月初旬には全日程が終了します。サッカーJリーグもいよいよシーズン終盤を迎え、ここからは優勝争いに加え、J1では残留争い、J2では昇格争いが熱を帯びてきます。

今回は、J2の昇格争いに注目してみます。まずは、現在のJ2順位表を見てみましょう。全チームが35試合を消化しており、残りは7試合です。

  • 1位:湘南 勝ち点74(22勝5敗8分け)
  • 2位:福岡 勝ち点64(19勝9敗7分け)
  • 3位:長崎 勝ち点63(19勝10敗6分け)
  • 4位:名古屋 勝ち点59(18勝12敗5分け)
  • 5位:松本 勝ち点58(17勝11敗7分け)
  • 6位:横浜FC 勝ち点57(16勝10敗9分け)
  • 7位:大分 勝ち点55(15勝10敗10分け)
  • 8位:徳島 勝ち点54(14勝9敗12分け)
  • 9位:東京V 勝ち点54(15勝11敗9分け)

注:第35節終了時。10月4日現在。8位と9位は得失点差による。

J2からJ1へ昇格するのは3チーム、うち自動昇格は2チームのみ

J2でも優勝には大きな意義がありますが、各チームとも最大の目標は「J1昇格」です。そのJ1昇格は3チームに限られます。最終順位が1位と2位のチームは自動昇格となり、3位~6位の4チームが勝ち抜きのプレーオフを行い最後の1チームが決まります。

つまり、“2位と3位”、あるいは、“6位と7位”では各々天と地の差があるのです。なお、プレーオフでは引き分けの場合、レギュラーシーズンの順位が上位のチームが勝利扱いになります。

とにかく、上位の各チームは2位までに入るべく、最後の力を振り絞っている状態にあります。

現在は1位の湘南がJ1昇格に向けて優位な位置にいますが、残り試合がまだ7試合あるので「当確」とは言えません。2位~9位を見ても、まだこの先どうなるか分からない混戦状態にあると考えられます。

意外な苦戦が続く名古屋グランパス、戦力的には頭1つ抜き出ているが…

そのような中、予想外の苦戦を強いられているのが、現在4位の名古屋グランパスではないでしょうか。

名古屋グランパスは、Jリーグ発足時に加盟した“オリジナル10”の1つで歴史ある名門クラブであり、優勝経験もあります。しかし、昨年はJ1で16位に沈み、今年はクラブ創設以来初のJ2に降格しました(参考:『名古屋グランパスのJ2降格で見えてきたトヨタへの依存度』)。

ただ、J2での実力は頭1つ抜き出ていると考えられます。確かに、J2降格後に何人かの主力選手がJ1へ移籍しましたが、他方、元日本代表のストライカー佐藤寿人が新加入し、同じく元日本代表の玉田圭司も復帰しました。ゴールキーパーの楢崎正剛は残留し、堅実なプレーができる外国人選手も補強しています。

そして、何と言っても、監督には弱小チームだった川崎フロンターレを強豪チームに押し上げた風間八宏を招聘するなど、戦力は充実していると言えます。そして、その背景には、親会社であるトヨタ自動車からの支援継続があることは明らかです。筆者を含めて、J1昇格の最右翼と予想した人は少なくなかったはずです。(選手や監督の敬称略)

上位チームの中で最多の敗戦数12が意味するもの

しかし、現在の状況はどうでしょうか。

4位という順位以上に苦戦しているのではないでしょうか。それは、敗戦数が12という数字にもハッキリ表れています。前掲した順位表でも分かるように、12敗は上位チームでは最多です。ちなみに、J1昇格が事実上難しくなった現在14位の町田、17位の京都も12敗となっています。

逆に考えると、12敗もしながらよく上位に食らい付いていると見ることもできましょう。

J2の戦いは想像以上に過酷なスケジュール、選手への負担は大きい

名古屋が苦戦している理由は複数あると思いますが、最大の理由はJ2での戦い方に慣れていないことではないでしょうか。

J2はJ1と比べると、試合数が多い、原則として毎週試合がある(中断期間がない)、試合に向けた移動距離が長い、整備不十分な競技場が多いなど、選手の負担増に結び付く要因が多いのが特徴です。特に、W杯予選など代表試合の開催時に1~2週間試合がないJ1と比べ、中断期間がほとんどないJ2は想像以上に過酷なスケジュールとも言えます。

現在、首位を走る湘南を始め、上位チームは全てJ2の“常連”です。J2での戦い方を知り尽くしています。名古屋グランパスがJ2を甘く見ていたとは思いませんが、こうしたJ2特有の事情を十分考慮していなかった可能性はあるのではないかと考えられます。

J2が定位置となったかつての名門クラブは少なくない

“それならば、J2の戦いに慣れる来季の方が期待できる”という見方があるかもしれませんが、それは楽観的過ぎます。

J1昇格が延びれば、主力選手の退団が相次ぎ、スポンサーも減ってきます。そして、いつの間にかJ2に慣れ親しむことになるのです。実際、東京Vや千葉がそのパターンに該当します。

特に、親会社のトヨタ自動車からの資金支援を継続するには、今シーズンでのJ1昇格は至上命題と言えるでしょう。

幸い、名古屋グランパスのチーム状態は良くなっており、一時は8位まで下がった順位も上昇してきました。残り9試合に、名古屋グランパスの将来がかかっていると言っても言い過ぎではないはずです。J2の残り9試合から目が離せません。

LIMO編集部