内閣改造でもデフレは止まらない−物価上昇2%が達成できない大きな理由は?

去る8月3日、第3次安倍第3次改造内閣が発足しました。ここのところ、さまざまな問題により安倍総理をはじめ閣僚への批判が相次ぎ、国民からの支持率が低下。そこで、これを食い止め、経済再生を成し遂げ、デフレを脱却するために内閣改造に踏み切ったというところでしょう。

しかし、日銀の黒田総裁は2%の物価上昇達成の見込みを再延期したばかり。延期発表は実に6度目です。当初アベノミクスが発表されたときは2年で2%の物価上昇率と言っていて、もう5年目ですから、先送りにもほどがあると言えるでしょう。

なぜ、目標が達成できないのでしょうか? なぜ、デフレから本格的に脱却できないのでしょうか? 以前ベストセラーになった『デフレの正体』という本がありましたが、ここで言っているのは、人口減少がもたらす需要減こそがデフレの正体だということです。

確かに、人口減少、高齢化というのはあるでしょう。しかし、それは直接的な要因ではないし、デフレの理由の1つでしかないと私は思っています。

コモディティー化の罠

本当の理由はズバリ、コモディティー化(汎用化)の罠にハマっているから。コモディティー化とは、所定の製品カテゴリー中において、メーカー(製造元企業)ごとの差・違いが不明瞭化したり、なくなること。その代表が家電業界です。

わずか数年前まで、1インチあたり1万円と言われていた「薄型テレビ」は、現在の相場は今や1インチあたり2000円以下、一部の海外メーカーはなんと1000円を切ってしまいました。前よりも新しい機能を搭載したのに、市場にはモノがあふれ競争が激化しているため価格を下げざるを得ません。こうしてデフレにつながっていくわけです。

このように、日本企業はネットや半導体の進化に伴う価格性能比の向上と供給過剰、アジアメーカーの台頭がもたらす製品の「コモディティー(汎用品)化」という大きな流れと対峙しながら、生き残りの道を探らなければならない・・・。だから苦しいのです。

以前、大手家電メーカーS社が生き残りをかけ1万人の人員削減を発表したのも、これが原因であることは明らかです。

実は自動車業界も残念ながら同じ運命を背負っています。ハイブリッド、電気自動車化の流れは車をモジュール化させていきます。モジュール化とは、汎用パーツを組み合わせるだけで、誰もが同じような製品を作れてしまうこと。パソコンはモジュール化の最たる例です。

近い将来には、電池、モーターを組み合わせるだけで誰でも車が作れるようなってしまうかもしれません。性能はドングリの背比べ。こうなると、価格でしか競争できなくなってしまいます。今あるものをちょこちょこっと良くして市場に出す・・・この程度ではデフレから脱することなど到底できないのです。

デフレを脱却する有効な方法はイノベーションにあり

古今東西、デフレ脱却の引き金になるのはクラッシュです。戦争、財政破綻などクラッシュの形にはいろいろあります。お隣韓国は1997年のアジア通貨危機でデフォルト寸前まで追い込まれ、その後V字回復を遂げました。しかし、今現在の日本には戦争も財政破綻も非現実的。おそらく、それはないでしょう。

では、そんな時代にある日本をデフレから脱却させるためには何が必要なのか?

それはイノベーション(革新)です。イノベーションは潜在ニーズのないところには起こりません。潜在ニーズがあって初めてイノベーションが起こるのです。

戦後の日本はイノベーションだらけでした。モノ作りしかり、物流しかり、通信しかり。そこかしこにイノベーションのネタはゴロゴロしていたわけです。では、今の日本にイノベーションが起こるのかというと、それは難しい。なぜなら、今の人たちがそう不便を感じていないからです。

現代の子供たちは、携帯端末があってLINEやツイッターで友達とコミュニケーションができ、映画やレンタルビデオを借りるお金がなくてもYouTubeさえ見られれば、それで十分幸せと感じてしまう。そんな世代がこれからの日本の主流になっていくのです。

だから、今の日本でビジネスを成功させるのはとても難しいのです。

世の中の小さな変化、隠れたニーズのささやきに気づける人でないと、日本でビジネスを成功させることは到底できないでしょう。もしくは、アップルのようにニーズそのものを作り出してしまうほどの強烈なイノベーションを起こさなくてはなりません。

しかし、世界に目を向けると事態は一変します。日本の仕組みをそのままもっていくだけで成功できるチャンスがゴロゴロしているのです。

日本の「善」そのものを輸出する!

今、小売りやサービス業で海外進出する企業が続出しています。ユニクロに始まり、ローソンなどもベトナムはじめどんどん海外に進出しています。私が住んでいるマレーシアではダイソーも大人気です。加えて、外国人にはまねできない日本流の仕事ぶりが歓迎されています。

その1つが「丁寧な仕事」です。先月もマレーシアにあったユニクロで下着を購入したのですが、日本とまったく同じ店舗作りや接客態度の徹底ぶりに驚きました。

他のどの店舗にいってもユニクロほどの清潔さ、陳列の美しさ、スタッフのホスピタリティーはありません。コンビニのレジに並んでいても、日本なら「大変お待たせいたしました。お次の方どうぞ」と呼ばれます。しかし、海外のコンビニは、指をクイックイッとやって「N〜ext!」これだけです。

なぜ、日本式の丁寧な接客が世界中で受け入れられるのか、理由がわかるでしょう?

さらには日本食。今世界的な日本食ブームです。ここ1〜2年で、私はモンゴル、スリランカ、ロンドン、マレーシア、シンガポール、アメリカ、オーストラリアなど世界各国を訪れていますが、どこも日本食ブームです。

不思議なのは、たいして美味しくないのに行列ができていたりすることです。しかも多くの日本食レストランは、日本人が経営しているわけではありません。しかし、海外に行けば日本食は「超うまい店」に大変身です。しかも、値段は日本と同じか少々高くても行列ができます。

日本では安い!うまい!がウリですが、海外ではこれが高くても売れるのです。それだけ「日本」ブランドはキラーコンテンツなのでしょう。もちろん、物流や社員教育など一筋縄ではいかなかったと思いますが、いったん軌道に乗れば、あとは上りのエスカレーターで成長できます。

つまり、今日本にある仕組みをそのまま外国に持ち込むだけで、イノベーションを起こすことができる分野はたくさんあるということ。

だからまったく悲観することはありません。一芸に秀で、少しの英語ができ、海外に飛び出す勇気さえあれば、成功の可能性は無限に広がると思うのです。

不動産も海外に出ればチャンスがいっぱい

私が専門としている不動産の分野も、海外、特に東南アジアを中心とした新興国にはチャンスがいっぱいあります。

実際、私は6年前から世界4カ国で不動産投資を行い、さらに3年前からスリランカの不動産に注目し現地で不動産開発ビジネスも始めました。

当然、海外に出るにあたってはリスクもあります。しかし、リスクを恐れていてはイノベーションは起こせません。「本質」と「正直」をつらぬけば、必ず道は開ける!そう信じて、日々行動しています。

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浦田 健