長期金利急低下、欧州株の下げが目立った1週間

先週(2017年7月17日-21日)の世界の株式市場は欧州株の下落が目立ちました。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースで米S&P500が+0.5%、上海総合が+0.5%、TOPIXが+0.3%、独DAXが▲3.1%となりました。

日米独を円ベースで見ると、円が対ドルで円高に、対ユーロで円安になったためTOPIXが+0.3%、米S&P500が▲0.7%、独DAXが▲2.7%となりました。外株に投資している日本の投資家にとってはアゲンストの展開になりました。

背景は3点あります。第1に、欧州中央銀行理事会で金融政策が据え置かれ脱金融緩和を示すようなニュアンスが声明文から出なかったことです。量的緩和の縮小を9月の理事会で議論するとされましたが、表面的には数週間前の「脱緩和」を意識したドラギ総裁の発言とは程遠い内容が示されています。

第2に、米国の製造業の景況感に関してやや陰りを示す指標が出たことです。第3に、オバマケア改廃法案が上院で成立せずワシントンの政治停滞が意識されたことです。なお、日銀は金融政策を据え置きましたが、これは想定通りだったと言えるでしょう。

市場の反応も興味深い動きでした。米独仏の長期金利はパラレルに低下する一方、米ドルの下落が目立ちます。特に対ユーロでは1.7%ドル安が進みました。

株式市場では債券から株式へのシフトが逆流し欧州株が下落しました。金融、輸送用機器、電機いずれも値を崩しています。米国では公益株が上げ、FANG株がしっかりと推移しました。一方、業績を観る眼は厳しくIBMとGEの株価が下げ、金融株も軟調でした。日本では金利低下を受けてJリートが反発しています。

アウトルック:ドル安がさらに進むのかを探る1週間に

今週(2017年7月24日-29日)は、米国企業の決算発表が佳境を迎えるうえ、米国の金融政策を決めるFOMCの開催、米国4-6月期GDP速報の発表を控えます。米国の政権運営に懸念材料が出ているなか、業績面で安心感のある銘柄の選別が進みそうです。

先週、長期金利が低下しましたが、現在の欧米の金利水準は今回の金利上昇が始まった6月第4週の直前と比べて依然高い水準にあります。

現時点では金利トレンドが低下方向に舵を切りなおしたというよりも、脱金融緩和を市場が織り込む過程で揺り戻しが起きたと判断するのが自然だと思います。言い換えれば、米欧の中銀が脱金融緩和を市場に浸透させる過程で、過度な金利上昇に対しては市場を適度にいなしている最中だと解釈できるでしょう。

脱金融緩和という大局的な流れが変わらないとすれば、株価にとって企業業績の重要性は高まるばかりです。伝統的投資指標で割高と指摘される米国株の場合、税制改革や投資促進のための政策の進捗がはかばかしくない今こそ頼りは業績にならざるを得ません。

今週はアルファベット、フェイスブック、アマゾンの決算発表が予定されます。相場の柱ともいえるこれらの銘柄が決算を順当に消化できるかが関門になりそうです。

ここでどうも気になるのがユーロ・ドル相場です。過去2年ほどのボックスレンジをいよいよ抜けてユーロ高になりました。米国の経済指標は強弱が入り混じっていますので、トランプ政権の経済政策の停滞の長期化は許されません。ドル下落にならって米株が下落し政治的進捗を催促するような展開がまったくないとは言えません。

日本企業の決算発表も始まります。夏季休暇の時期になりますが、気を抜けない週になりそうです。

椎名 則夫