1700兆円

突然ですがこの金額は何を表しているかご存知でしょうか?

これは、日本における個人金融資産の総額を表しています。日本が長期的な経済成長を実現できていない中、麻生財務大臣は景気拡大、経済成長のために、この個人金融資産を実際に国民が消費に使い、市場にお金を回すことが重要であると述べています。

しかし具体的にどのようにして消費を拡大し、市場に回るお金を増やすことが可能なのでしょうか?

今回は日本における消費の水準や、金融資産の内訳を見ていきつつ、この1700兆円をどうしたら市場に回していけるかを考えていきたいと思います。

消費は伸びない?

麻生財務大臣が金融資産を消費に使うことが必要と述べている背景には、以下の図のような民間消費の停滞があります。

図表1:日本における消費指数の推移

内閣府作成

この図は内閣府が作成したもので、民間の消費がどのくらい行われたかの推移を示しています。消費税増税後に大きく消費は減っており、またその後も変動はあるにしても民間消費が長期的に増えていない状況が見てとれます。

麻生財務大臣は消費の拡大の必要性を説いていますが、今後いずれは延期された消費税増税が行われることを考えれば、増税前の駆け込み需要はあっても、2014年の消費税増税の時と同じように大幅に消費が落ち込み、その後も長期的な消費の拡大は期待できないと言えるでしょう。

金融資産の構成

それでは、消費の拡大が期待できない状況で、1700兆円をどうすれば市場に回すことができ、景気拡大に結び付けられるのでしょうか。

これを探るためにまず、この個人金融資産1700兆円の内訳を見てみましょう。

個人の金融資産は、現金、預金、有価証券、保険や年金、定型保障によって構成されています。したがって、正確には、麻生財務大臣が言うように個人金融資産全てが「眠っている」わけではなく、現金・預金の部分が市場に出回ることなく「眠っている」部分であると考えられます。

消費を増やさずとも市場にお金を回す方法

上で説明したように、現在の日本の経済状況において大幅な消費の拡大は望めないかもしれません。将来に不安がある状態において、消費を抑制したい、というのは自然な考え方でしょう。

しかし、消費を増やさずとも、現金・預金の割合を減らし個人金融資産に占める有価証券の割合を増やしていくこと、つまり投資を多くしてもらうことで市場(金融市場)に出回るお金を増やすことができるのです。

現在の日本の個人金融資産の内訳

しかし、現状の日本の個人金融資産における有価証券の割合は非常に小さくなってしまっています。以下の図をご覧ください。

図表2:家計の金融資産構成

日本銀行のデータより引用

これは日本、アメリカ、ユーロ圏の金融資産構成を表した図ですが、日本の有価証券(債務証券+投資信託+株式等)の比率が米国やユーロ圏に比べてかなり低くなっていることが分かります。

日本人は貯蓄が好きだとしばしば言われていますが、確かに現金や貯蓄の比率が52.3%と他国と比べても高く、逆にリスクを伴う有価証券、つまり投資の比率が14.3%と低くなっています。

つまり、日本においては、使われずに「眠る資産」が多く、多くのお金が市場に回らない状況になってしまっています。

一方、日本よりも圧倒的に有価証券の割合が大きい米国に目を向けてみると、株式市場に流れ込んだお金(投資家が投資したお金)で企業が次々と育ち、産業の新陳代謝が活発化しています。

そしてリスクを取って投資した投資家が成長の恩恵を受けるという好循環が成り立っているのです。

若者の間でも見られる「投資嫌い」

上記の様に、日本全体として、個人金融資産に占める有価証券の割合は低いですが、この傾向は若者の間でも見られます。

日本経済新聞社が行った「アジア10カ国若者調査」(注)において、日本の若者の株式などへの投資意欲の低さが明らかになりました。下の図を見てください。

図表3:アジア10カ国の若者の金融資産内訳

日本経済新聞より引用

10カ国中、日本の若者の株式・投資信託の割合は18.9%で最下位です。日本では、若者も他国と比べて金融商品を保有する(投資する)割合が低いことが分かります。

注:「アジア10カ国若者調査」とは中国(上海)、インド(ムンバイ)、インドネシア(ジャカルタ)、タイ(バンコク)、ベトナム(ホーチミン)、フィリピン(マニラ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、日本(東京)、韓国(ソウル)に住む大卒の20~29歳、各200人、合計2000人(男女比半々)を対象に日経リサーチがインターネット調査方式で実施したもので、調査時期は2014年11月中旬から下旬。

投資という選択肢

消費の拡大が望めない以上は、金融市場にお金を多く回し、個人金融資産の中の有価証券の割合を大きくする、つまり投資を多くすることが望まれます。

以前に比べてネット証券などのサービスも広がりを見せており、手軽に投資できる時代になってきているものの、上記で挙げたデータから見ても、まだまだ投資をしやすい環境づくりや制度づくりが十分に整っているとは言えないでしょう。

消費拡大のための政策を打つことも大事ではありますが、大幅な消費の拡大が望めない以上は、投資しやすい環境をつくる政策を打つことが大事になってくるのではないでしょうか。

金融資産の多くを現金や預金の形で保有している人が、積極的に投資を行っていくような環境をつくり、「眠る資産」を呼び起こしていくことが求められると思います。

以上、投資型クラウドファンディングを通じて世界のお金の流れを変えるクラウドクレジットでした。

参考文献

クラウドクレジット