最近話題の「デカフェ」とは?

寝る前にどうしてもコーヒーが飲みたい……。長時間の会議中やドライブ中にトイレが近くなるのは困る……。妊娠中・授乳中はカフェインを控えないと……。そんなときでも、カフェインの作用(興奮作用や利尿作用など)を気にせずコーヒーを味わえたら嬉しいものです。

今年1月にはスターバックス コーヒーが“ディカフェ”商品のラインナップを拡充するなど、ここ数年でカフェインレス飲料の注目度が高まっています。スーパーなどの店頭でも、カフェインレスコーヒーのインスタント粉末やドリップ式の商品を見かける機会が増え、消費者の選択肢として浸透していることが窺い知れます。

全日本コーヒー協会は2016年重大ニュースの1つとして、「デカフェ(カフェインレス)などが人気」を挙げています。同協会の「デカフェコーヒーの輸入推移(2016年速報)」によれば、デカフェコーヒーの輸入量は年々増加する傾向にあり、輸入量(生豆と、煎ったコーヒーの合計値として換算)は2000年が約59万kgに対し、2010年には約124万kg、2016年の速報値では約300万kgと推移しています。

ところで、こうした商品には「カフェインレス」以外にも「ノンカフェイン」や「カフェインゼロ」といった表示がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約によると、<カフェインを90%以上除去したコーヒーにあっては、その形状にかかわらず「カフェインレスコーヒー」と記載する>とあります。「カフェインゼロ」については明確な定義はなく、100ml中の含有量が1mg未満のものを指す場合が多いようです(コーヒー100mlのカフェイン量は約60mg)。

店頭では、コーヒーや紅茶などからカフェインを除去した場合に「カフェインレス」「デカフェ」としているのに対し、元々カフェインを含んでいない飲料を「ノンカフェイン」「カフェインゼロ」と表示するケースが多く見受けられます。

どうやってカフェインだけを除去するの?

では、どうやってカフェインだけを取り除くことができるのでしょうか。一緒に味や風味まで落ちてしまわないのでしょうか。実用化されている「脱カフェイン法」としては主に3つの手法が挙げられます。

(1) 有機溶剤による抽出法

ジクロロメタン等のカフェインを溶解する有機溶剤に生豆を浸す方法。低コストですが、カフェイン以外の成分も溶出し、コーヒーの旨味や風味まで失われやすく、残留有機溶剤の心配から消費者が不安を抱きやすいという欠点があります。(日本では有機溶媒を使用したデカフェの販売が禁止されています。)

(2) 水による抽出法

まず、生豆を水に浸すことでカフェインを含めた水溶性の成分を抽出します。次に豆を一度取り出し、水溶液の中からカフェインだけを除去します。この時にフィルターを使用する方法と、有機溶媒を使用する方法があります。カフェインを除去した水溶液に再び生豆を浸すことで、コーヒーの味、香りや風味など必要な成分を戻します。有機溶媒を使用する場合も、直接コーヒーの生豆に溶剤が触れないため安全性が高いと言われています。

ちなみに、タリーズコーヒーでは水とフィルターを用いた「マウントウォーター製法」によりカフェインを95%以上除去しているそうです。

(3) 超臨界二酸化炭素抽出法

二酸化炭素を「超臨界流体」の状態にしてカフェインを抽出する方法。物質に一定以上(臨界点以上)の圧力や温度をかけると、その物質は超臨界状態になります。超臨界流体は「液体の溶解性」と「気体の拡散性」を併せ持っているため、コーヒー豆の内部への浸透性が高く、成分の抽出率に優れているとされます。

特に、二酸化炭素は他の物質よりも比較的穏やかな条件で超臨界状態に達し、他の物質との反応性も低いことから、豆に負担をかけずに味や風味を損なうことなく、カフェインを除去できる安全性の高い方法として知られています。

現在、スターバックスやUCCはこの二酸化炭素抽出法を採用しています。スターバックスの“ディカフエ”ではカフェインを99%カット、UCCでは97%カットとなっています。

1906年に有機溶媒による抽出法が最初の脱カフェイン法としてドイツで開発されて以来、デカフェへの挑戦は続いています。まだ実用化には至っていませんが、最初からカフェインを含まないコーヒーノキ(種子からコーヒー豆が採れる木)を育種する試みもすでに始まっているそうです。

将来的には、遺伝子組み換え技術やゲノム編集技術によるデカフェのコーヒーを味わえる日が来るかもしれませんね。

【参照先】

堀川 晃菜