本記事は2月21日付のHSBC投信株式会社によるレポートを転載したものです。

トピックス:インド準備銀行、市場の利下げ予想に反し、政策金利を据え置き

二会合連続でレポレートを6.25%に据え置き

  • インド準備銀行(中央銀行)は、2月8日の金融政策委員会で、昨年12月の前回会合に続き、政策金利のレポレートを6.25%に据え置いた。市場では、昨年11月の高額紙幣廃止の影響で落ち込んだ消費者の購買意欲を支えるために0.25%の利下げが決定されるとの見方が大勢を占めていた。
  • 中央銀行は、政策金利据え置きの理由について、米国の利上げにより世界的に金融緩和余地が縮小する中、「高額紙幣廃止の影響を見極めるため現行の政策金利を維持する」としている。

中央銀行は引き続きインフレ抑制に重点

  • 足元のインフレ率は落ち着いており、1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+3.2%と2016年12月の+3.4%から低下した。食料品価格の上昇率低下が指数全体を押し下げている。
  • しかしながら、中央銀行は、足元のインフレ率低下は高額紙幣廃止による一時的な消費需要の後退が影響していると見る一方、最近の国際商品価格の上昇に警戒を示している。
  • 中央銀行は、インフレ率の目標値を4%(目標レンジとして2~6%)に設定する一方、2017年度上半期(4-9月)のインフレ率は4.0~4.5%、下半期(10-3月)は4.5~5.0%と、現水準から小幅な上昇を予想している。

政策スタンスは「緩和」から「中立」に変更

  • 今回の金融政策委員会の決定で注目されるのは、中央銀行が金融政策スタンスをこれまでの「緩和」から「中立」へと変更したことである。
  • 政策スタンスを「中立」としたことで、中央銀行は、今後、政策金利を引上げ/引下げのどちらにも柔軟に動かせるとしている。しかし実際には、インフレ率、経済成長率の顕著な低下がない限り、追加利下げ余地は限定的だろう。

市中銀行が貸出金利を引き下げ

  • 当社では、今回の政策スタンス変更を受けて、政策金利は当面、現状維持が続くと見ている。
  • 但し、これまでの利下げの波及効果は継続するだろう。中央銀行は2015年1月から2016年10月までに合計で1.75%の利下げを実施したが、市中銀行による貸出金利の引き下げ幅はその半分程度にとどまっている(市中銀行の加重平均貸出金利は2015年1月から2017年2月までに0.85~0.90%低下)。
  • 一方、市中銀行は、昨年11月の高額紙幣廃止に伴う預金の急増を背景に、貸出しにより注力しており、過去数週間に貸出金利を引き下げている。こうした中、当面は政策金利が据え置かれても、市中銀行による貸出金利の引き下げが続くことが見込まれる。このため、中央銀行は、以前ほど利下げの必要性に迫られておらず、これも当面は政策金利が据え置かれると見る理由の一つである。

マーケットサマリー(株式・債券・為替市場)

1月の株式・債券市場は、インフレ率の低下などを背景に堅調に推移した。インドルピーは対米ドルではほぼ横ばい、対円では下落。

株式市場

1月は堅調な展開

  • 1月のインド株式市場は堅調に推移し、SENSEX指数は前月末比+3.9%で取引を終えた。世界的な株式市場の上昇、国内ではインフレ率の低下と金融緩和観測などが上昇要因となった。

当社の株式運用戦略

  • 当社では、インド株式ファンドの運用においては、資本財や一般消費財など、景気敏感セクターに引き続き重点を置いている。中でも健全な財務体質を持ち、景気回復の流れに素早く対応できる企業に注目。金融は、インフラ融資を手掛ける民間銀行や自己資本の充実した国営銀行を選好する。一方、景気動向の影響を受けにくい生活必需品やヘルスケアはアンダーウェイトを維持。

債券市場

インフレ率低下を受けて債券価格は上昇

  • 1月のインド債券市場は堅調となり、10年物国債利回りは0.11%低下(価格は上昇)した。インフレ率の低下と利下げ観測の高まりがプラス要因となった。
  • 但し、2月に入り、インド準備銀行(中央銀行)が市場の利下げ予想に反して政策金利を据え置いたため、市場では失望売りからインド債券利回りは上昇している。
  • 足元のインフレ率は落ち着いており、1月の消費者物価指数上昇率は前年同月比+3.2%となり1月の+3.4%から低下、中央銀行の目標レンジ2~6%の中央値4%を下回った。
  • しかしながら、中央銀行は原油価格をはじめとする国際商品価格の上昇を警戒している。中央銀行のインフレ目標達成に対するコミットメントは強く、当面、政策金利は据え置かれると当社は見ている。

当社の債券運用戦略

  • 当社では、インド債券ファンドの運用においては、引き続きルピー建インド国債を有望視している。世界的な低金利環境下、相対的に利回りの高いインド国債には妙味があると考える。また、流動性が高く、高格付けのルピー建社債にも注目している。米ドル建て債券については、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが見込まれることから、より慎重に見ている。

為替市場

対米ドルでほぼ横ばい、対円では下落

  • 1月の外為市場では、インドルピーは対米ドルではほぼ横ばい、対円では下落した。
  • ルピーは、インドの経済ファンダメンタルズの改善と潤沢な外貨準備高を下支え要因に、短期的には対米ドルでレンジ相場を続けると当社では予想している。中長期的には、経常収支赤字が比較的小幅にとどまることや海外からの直接投資の拡大が見込まれることから、インドルピーは堅調な展開を予想している。