メモリ半導体の分社化を発表

2017年1月27日、東芝はメモリ半導体事業の分社化を行うことを正式に決定し、同日、説明会を開催しました。発表内容は既に多数行われてきた事前報道の通り、半導体事業のうちNANDフラッシュメモリー事業(SSD事業を含み、イメージセンサを除く)を分社化し、その株式の20%未満を売却し資本増強を行うというものでした。

また、会見では海外の原子力発電事業の中で建設工事からの撤退を検討中であることも表明されました。

説明会でのポイントを整理すると

27日の説明会は、開催時間が16時30分から約50分という短い時間でしたが、証券アナリストや報道機関から多くの質問が出ました。そこで明らかになった主なポイントは以下の3点です。

第1は、2016年3月に発表された「東芝2016年度事業計画」で示されたエネルギー、社会インフラ、ストレージの3つを注力事業として再建を目指すという考えに基本的な変化がなく、(海外原子力事業の建設工事からの撤退など)事業の進め方を変えていくことで対処するというのが現時点での同社のマネジメントの基本スタンスであること。

第2は、あらゆる手段で3月末の債務超過を回避する考えだが、米国原子力事業の減損額は現時点ではなお精査中であるため、詳細の説明は2017年3月期Q3決算が発表される2月14日まで待つ必要があること。

第3は、鉄道やエレベーターなどの社会インフラ事業の売却は現時点では検討していないこと。

ちなみに、2016年12月末に行われた米国原子力事業での巨額減損の可能性に関する説明会では、減損額の具体的な金額を問う質問に対して「減損額は数千億円」という回答が何度も繰り返されましたが、今回の会見でもその詳細は明らかにはされず、「詳細は2月14日の決算で明らかにする」という回答が繰り返されるばかりでした。

3月末の債務超過回避に対する強い意志表明

全て詳細に明らかにできない段階での、煮え切らない説明会でしたが、一つだけ明確なメッセージを感じました。それは、3月末の債務超過は確実に回避させるという強い意志です。全てを売却すれば1兆5,000億円程度の価値があるとされるメモリ半導体事業を、一部であれ売却する方針を明確にしたのは、その象徴です。

債務超過となると、東芝といえども、金融機関が融資を引き上げざるを得なくなる可能性が高まります。また、公共投資案件などの入札に参加できなくなるなど事業への影響も甚大です。

さらに、減損テストの結果は、2017年3月期Q3累計(4-12月期)の決算に反映される予定であるため、その決算内容は債務超過となる可能性が大きいことも一因と考えられます。2月14日にそのような厳しい内容が発表されても、Q4(1-3月期)に予定される資産売却等で十分に挽回可能という安心感を事前に醸成しておきたかったという可能性も考えられます。

ちなみに、東証のルールでは、債務超過による1部から2部への転落は年度末が基準となります。このため、Q3末で一時的に債務超過となったとしても、シャープ(6753)のように2部転落となることは避けられると考えられます。

まとめ

今回の会見では、2016年には中止となった新卒採用を2017年から再開したいというコメントもありました。とはいえ、現時点では損失額が確定していないこと、また、その発生理由や再発防止策、さらに中期的な業績の立て直し策も明らかになっていません。

そのため、メモリ半導体事業の分社化が発表されたとはいえ、楽観的になるのは時期尚早であると言わざるを得ません。

和泉 美治