なぜ投資信託に投資すべきなのか?

企業経営者であるあなたは、なぜ自分が投資信託(ファンド)に投資すべきか考えたことありますか?

「余裕資金があるから何となく儲けたい」と思うからでしょうか。まず、なぜあなたが富裕層になったのかを考えてみてください。あなたにとってご自身の事業が最も確実な投資行動であり、その成果を享受し富裕層になった事実をご理解できるはずです。

別の言い方をすると、企業経営者は、企業というファンドを運用しているファンドマネージャーです。自らの事業に絶対の自信を持つあなたが、あえて投資信託に投資をすることは、自分のファンドを運用しながら、別のファンドも活用するということです。

企業経営者として成功しているあなたは、自身の事業展開にあたり、熟考を重ね、悩み、孤独感の中で慎重かつ迅速な意思決定をし、最後は自分で責任を取るということを繰り返してきたはずです。自分のファンドを運営するにあたり当然のことです。

しかし、なぜ投資信託(他人が運用するファンド)の選定においては、他人任せで、ある時は適当になるのでしょう? 事業で獲得したお金と、投資信託で獲得するお金の価値が違うとでもいうのでしょうか?

なぜ投資信託の選定に慎重さを欠いてしまうのか?

あなたが投資信託の選定に慎重さや論理性を欠いているのは、主に2つの理由が考えられます。

まず1つ目は、あなたが付き合っている金融機関担当者に問題があることです。自分たちの売りたいものしか売ってくれず、かつ、提案してくる時は価格がピークをつけている場合がほとんどであるということ。提案しやすい金融商品というのは、過去実績が美しい右肩上がりのグラフを形成してる場合がほとんどなので、統計的にピークをつけていることが多いからです。

2つ目の理由は、ご自身に問題があります。ご自身で投資信託を選んだこともあるでしょう。どんな時でしたか? 株式市場が盛り上がって、新聞や雑誌でもその様子を囃し立てるような文面が目立ち、周囲で投資をして儲かったという人たちが増えてくる。そんな時ではなかったですか?「自分も乗り遅れたくない!」と投資したものの、その後損をしてしまい、「投資信託なんか二度とやるもんか!」と。

そもそも投資信託に投資するメリットは何なのか?

もう一度、本題に戻ります。企業経営者であるあなたは、なぜ投資信託に投資をする必要があるのでしょうか?

企業経営者であるあなたにとって、投資信託のメリットは何かと言うと、あなたの事業では実現できない多種多様なリスク特性を選択できることです。資産運用には分散投資が重要だということは聞いたことがあると思います。これは揺るぎのない事実です。企業経営者にとっての最大のリスクは、自身の事業そのものです。その最大のリスクを取り、リターンを享受できているからこそ、富裕層のあなたがいるのです。

しかし、その事業リスクも分散できたら良いなと考えるあなたがいます。事業の多角化も解決策の一つでしょう。前述の通り、あなたは既にファンドマネージャーであり、外部のファンドを組み合わせ、分散化された堅牢なポートフォリオを組むことこそ、あなたが投資信託を活用する目的とすべきです。その目的が不明確であれば、本業のビジネスだけに集中すべきです。

企業経営者であるあなたは、常に様々なリスクにさらされながら、不安定な景気の中で利益を追求しています。あなたの事業に直結する景況、国内外のマクロ経済、主要取引相手の経済情勢、さらに自身の業績など、全てが常に変動していることは今さら指摘するまでもありません。

投資信託の活用に際しては、あなたの事業に最も影響を与える事象の変化に対し、その影響を小さくする作用を持つ金融商品(投資信託)を選択することが肝要です。

欧州の富裕層がヘッジファンドを選好するのも、ヘッジファンドが高水準のリターンを獲得することを目指しているだけではなく、通常のビジネス、経済環境の変化とは異なるパターンのリスク特性を有しているからです。ヘッジファンドを一部組み込むことで、全体の資産のリスク変動を抑え、安定した状態で価値を増やしていくという狙いがあるからです。これこそが分散投資の目的です。

これらを踏まえてこれからどうすれば良いか?

自分自身で、自らの事業やバランスシートのリスク分析をし、それにフィットするリスク特性を有する投資信託を自ら選択できるのであれば、インターネット証券などで販売手数料を負担せずに、低コストで金融商品にアクセスすることが可能です。しかし、自らの事業領域以外の事柄に時間を費やすことが、企業経営者にとって経済合理性の高い判断といえるのかは不明です。

企業経営者にとって現実的な選択肢は、あなたの事業で優秀な社員を探しているように、金融ソリューションを提供してくれる優秀な水先案内人を探し続けることです。何となく儲かりそうなストーリーだけ持ってくる売り子は必要ありません。安直な投資行動を取る前に、水先案内人を見つける努力をしてみてください。

小田嶋 康博