シーテックの主役は大型テレビからIoTへ

2016年10月4日から7日まで、幕張メッセ(千葉県)で国内最大のエレクトロニクスショーである「CEATEC」(以下、シーテック)が開催中です。かつては液晶テレビの大型化、薄型化、高精細化などを巡って激しい争いが繰り広げられていましたが、最近はテレビの姿はほとんど見られず、代わりに様々な利用シーンでのIoT技術の活用方法が提案されています。

そうした中、昨年はセンサーとビッグデータ処理技術などを活用した農業ITの提案が目立ちましたが、今年はゴルフスイングを解析する展示を、富士通(6702)と村田製作所(6981)が、それぞれ異なるアプローチで展示していたことが印象的でした。

富士通は赤外線カメラでゴルフスイングを解析

富士通のスイング解析の展示は、ゲームで使われる3次元センサー(赤外線カメラ)を使ってゴルフスイングのフォームを計測し、そのデータをもとにフォームの採点を行うというものでした。採点は、スイングの最初から最後までを「アドレス」、「バックスイング」、「トップ」、「インパクト」、「フォロー」、「フィニッシュ」に分割し、それぞれに評価が行われます。

また、各段階ごとに、肩スクエア、手首軌道、左膝の角度、前傾角度、背骨の傾き、頭の動きの6項目の評価が表示されるため、プレイヤーは自分のスイングのどの段階に問題があるのか、また、体のどの部位の動きに注意すべきか、一目で理解できることになります。

富士通では、こうした取り組みを通して、IoT技術を日常生活をより豊かにするためのソリューション事業として強化していく考えです。

村田製作所はバッチ状のセンサーでスイングを解析

一方、村田製作所は、小さなバッジ状のセンサー端末8つを人体に貼り、それらを無線でつないでゴルフスイングを計測するシステムを展示していました。

端末には、加速度・ジャイロ・磁気センサーや、通信モジュールやリチウムイオン電池が内蔵されており、わずらわしい配線の手間もなく360度の動作を手軽に検知・記録できることができます。また、ワイヤレス給電の仕組みが取り入れられているため、複数の端末を簡単に充電することも可能です。

村田製作所では、今後こうした取り組みを通して様々なウエアラブル機器向けの開発を強化していく考えです。

村田製作所のワイヤレスモーションキャプチャシステム

人口減で国内市場が縮小、優れた技術を活かす市場を探すことが課題に

「レジャー白書2015」(日本生産性本部)によると、2014年時点での日本のゴルフ人口は約760万人で、野球・キャッチボール(680万人)、テニス(670万人)、サッカー(450万人)を上回ってはいるものの、2005年と比較すると▲27%も減少しています。また、これから先も人口減少等の理由から、日本での競技人口が増加に転じることは想像しにくいのが実状です。

このため、優れもののスイング解析技術は、日本だけではなく世界中のゴルファーに対して訴求していく、また、ゴルフに限定せず、野球、サッカー、剣道、柔道といった他のスポーツでの応用ということも視野に入れることが重要ではないかと考えられます。

シーテックは未来の技術をアピールする場ですので、必ずしも展示された製品やサービスがそのまま商用化されるとは限らず、展示会を通して得られたフィードバックをもとに新たな展開が模索されることになります。筆者の個人的な感想は、上記2社の技術は手軽に詳細なデータ解析ができるという点で秀逸であり、ゴルフ以外の分野での応用が十分に考えらえるというものでした。今後の展開に注目していきたいと思います。

 

和泉 美治