世界初、温泉に特化したREITが東京証券取引所に上場

2016年8月31日、東京証券取引所に「大江戸温泉リート投資法人」が上場しました。同REITは、温泉旅館など、温泉・温浴関連施設に特化して投資します。温泉に特化したREITの組成・上場は世界でも初めてだそうです。

同REITの資産運用会社である大江戸温泉アセットマネジメントは、全国で温泉旅館・施設などを運営する大江戸温泉物語の100%子会社です。また、大江戸温泉物語の親会社は、米投資ファンド、ベインキャピタル傘下の大江戸温泉ホールディングスです。

大江戸温泉物語と言えば、東京お台場の日帰り温泉施設「大江戸温泉物語」が有名ですが、実は全国に30か所以上の施設を展開しています。

経営不振になった旅館や施設などを買い取り、再生させるのがビジネスモデルの大きな柱で、「ホテルニュー塩原」(栃木県)、「鬼怒川観光ホテル(栃木県)」、「ホテルニュー岡部(静岡県)」、「ニューレオマワールド(香川県)」なども同社グループの施設です。8月には、「長崎ホテル清風」(長崎県)と「別府ホテル清風」(大分県)を買収しました。

「大江戸温泉リート投資法人」は、上場によって調達した資金を使って、大江戸温泉物語グループが保有する施設を取得し、これらから得られる収益を投資家に分配します。大江戸温泉物語はまず、9物件をREITに売却しました。大江戸温泉物語としては、売却で得た資金を別の物件の取得に充てることで、事業拡大を加速できるメリットがあります。

インバウンド市場の拡大にともない、ホテル・旅館特化型REITも注目される

「大江戸温泉リート投資法人」は、成長のシナリオとして、高齢化社会を背景としたレジャー需要の拡大や、インバウンドによる国外からの観光客の流入などを見込んでいます。

同REIT以外にも、ホテルや旅館などに特化して投資するものがあります。「ジャパン・ホテル・リート投資法人」、「星野リゾート・リート投資法人」、「いちごホテルリート投資法人」などです。

この中で特徴的なのは、やはり、「星野リゾート・リート投資法人」でしょう。同REITはその名のとおり、「星のや」などを運営する星野リゾートグループの一員で、「星のや軽井沢」、「星のや京都」、「界」をはじめ、同グループの物件を中心にポートフォリオが構築されています(ただし、同グループ以外のオペレーションによる物件も組み入れられています)。

政府の観光立国政策により市場のさらなる広がりも期待されています。ホテル・旅館特化型REITは注目すべき投資対象の一つになりそうです。

安定した分配金、相対的に高い利回りが期待できるのがREITの魅力

ここで改めて、REITとは何かについてまとめておきましょう。REITは、不動産投資信託(Real Estate Investment Trust)の略称です。たくさんの投資家から資金を集めて不動産を購入し、そこから生じる賃料や売却益を投資家に分配します。

投資対象となる不動産は、オフィス、住宅、商業施設、ホテル、物流施設、ヘルスケア施設などです。ヘルスケア施設とは、医療施設や介護施設などのことです。

REITは証券取引所に上場しているため、株式と同様、全国の証券会社を通して売買ができます。少額で分散投資ができるのも便利です。現在、東京証券取引所には56本のREITが上場しています。

REITの大きな魅力の一つは、安定した分配金、相対的に高い利回りが期待できることです。REITは税法上、配当可能利益の90%を超える額を投資主に分配することなどを条件として、実質的に法人税が免除される仕組みになっています。2015年のREITの平均利回りは約3.5%となっています。中には6%以上の利回りのものもあります。マイナス金利下でも妙味があります。

もちろん、リスクもありますので、保有資産の全額をREITに投資するといったことは望ましくありませんが、ポートフォリオの一つとして検討する価値はあるでしょう。

 

下原 一晃