ソニー㈱は、2019年度(20年3月期)のイメージング&センシング・ソリューション事業(I&SS=半導体事業)の業績見通しを上方修正した。また、19年度中に判断するとしていたCMOSイメージセンサー新工場を、長崎テック(長崎県諫早市)内に新設することを決めた。

19年度は売上高1兆円超へ

 19年度のI&SS売上高を当初の9900億円から1兆400億円(うちイメージセンサーは8400億円から8900億円)へ、営業利益を1450億円から2000億円へ、それぞれ上方修正した。モバイル用イメージセンサーの販売数量増と製品ミックスの改善が寄与する見込みで、「(スマ―トフォンの)多眼化、(イメージセンサー素子の)大判化が思っていたより強い」と説明した。設備投資額については期初計画の3000億円(うちイメージセンサー向け2800億円)を据え置いた。

 ちなみに、18年度の実績は、売上高が8793億円(うちイメージセンサーが7114億円)、営業利益が1439億円だった。

7~9月期は四半期ベースで過去最高

 19年7~9月期のI&SS事業の業績は、売上高が前年同期比22%増の3107億円(うちイメージセンサー2748億円)、営業利益が同59%増の764億円となり、四半期ベースで過去最高だった。スマートフォンの多眼化と大判化が想定以上に進み、旺盛な需要が続いているため、当初は300mm換算で月産10.5万枚の生産能力で対応する予定だったが、これを10.8万枚まで引き上げた。

 19年10~12月期もフル稼働が継続する見通しで、月産能力を11.7万枚まで増強する考え。また、中期計画の最終年度となる20年度末までに13万枚体制とする予定だった計画を改め、既存工場の生産効率を一層高めて13.8万枚まで引き上げることも決めた。外部生産能力のボリュームは変わらないため、ソニーの内製分が増えるという。

下期は「在庫を積みたい」

 19年度下期(19年10月~20年3月)についても、イメージセンサーの需要は当初の想定以上で、「10~12月期までの需要はほぼ確定で、20年1~3月期の価格がどう推移するかだが、当社の関心は20年度の需要に移っている」と述べ、下期の需要見通しは明るいことを強調した。

 また、旺盛な引き合いに応じるため、下期の生産分からイメージセンサーの「戦略在庫」としてウエハー5万枚分を積み上げる計画。ただし、引き続き需要が強いため、「この量の在庫を積めるか、現段階では見通しづらい」と述べた。

長崎新棟で中長期目標達成へ

 これに加え、検討してきたイメージセンサー新工場を長崎工場内に建設することを決めた。規模や生産能力、稼働時期は公表していないが、21年度に立ち上げるとみられる。スマートフォンの多眼化と大判化が20~21年度も需要の牽引役になる公算が大きくなったため。工場の規模や生産能力は公表していない。これに伴って、18~20年度のI&SS事業への設備投資額を6000億円から7000億円へ引き上げるが、「(投資の)前倒しで、さらに数百億円増額する可能性がある」と説明した。

 これらの施策により、19年5月のIR Dayで中長期目標に掲げた「25年度のイメージセンサーの金額シェア60%」「I&SS分野としてROIC(投下資本利益率)20~25%の達成」(18年度実績は15%)を目指していく考えだ。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏