半導体メモリー大手の米マイクロンテクノロジー(Micron Technology)は、AI/ディープラーニング分野での事業拡大を狙い、スタートアップ企業のFWDNXT社を買収したと発表した。

 FWDNXTはAI/ディープラーニング用途のハードウエアおよびソフトウエアを提供する、インディアナ州に本社を構えるスタートアップ企業。ハードウエアプラットフォームとしては、米ザイリンクス社製のFPGAを活用しており、マイクロンは同社を傘下に収めることで自社のメモリー製品を組み合わせた展開を目指していく。

データセンターの電力消費が増大

 マイクロンでExecutive Vice President兼Chief Business Officerを務めるSumit Sadana氏は、「FWDNXTの第5世代の機械学習推論エンジン開発とニューラルネットワークアルゴリズムは、マイクロンのメモリーに関する深い専門知識と組み合わせて、複雑で要求の厳しいエッジアプリケーションのイノベーションを可能にする」とコメントしている。

 メモリーメーカーであるマイクロンが、AIアクセラレーターのようなプロセッシング分野に参入するのには理由がある。CPUやGPU、FPGAのようなアクセラレーターでの電力消費が年々拡大基調にあり、President & CEOのSanjay Mehrotra氏は、現地24日に米国サンフランシスコで開催されたプライベートイベント「Micron Insight 2019」のキーノートスピーチにおいて、「世界の電力消費のうちデータセンターで消費される電力は18年時点ではわずか2%に過ぎなかったが、25年にはこれが10%まで拡大する」と指摘した。

「Processing in Memory」の実用化目指す

 この電力消費の多くを占めているがプロセッシングの領域であり、ロジックとメモリーのアクセスで生じるものだとしている。マイクロンでは、この電力消費を抑えるための手段として、メモリー側で演算処理を行う「Processing in Memory」という考えを提唱し始めている。

 もともと、DRAMなどのメモリーチップにはペリフェラルと呼ばれるロジック回路が存在しており、ダイ面積の半分近くがこうしたエリアで占められている。マイクロンは「Processing in Memory」の実用化について、当分先との認識を示しているが、FWDNXTの買収はこうした戦略の一環だとしている。メモリーチップにあるロジック回路部を今後有効に活用して、付加価値領域といえるAI/ディープラーニングの領域を“メモリーメーカー”として自社に取り込んでいきたい考えだ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳