関西電力で役員が関係先から巨額の金品を個人的に受け取るという不祥事が発覚し、関西電力の株価は約1割の下落を見せました。一方で関西電力をライバル視する大阪ガスの株価は、逆に約1割上昇しています。

大阪ガスは国内外で電力事業を手掛けるなど独自の存在感を発揮し、関西では関西電力と競い合う関係です。関西電力の不祥事は、大阪ガスの株価や業績にも影響を与える可能性があり、注目されます。

巨額の金品受領問題発覚で関西電力の株価は約10%下落

関西電力(9503)の役員が、多額の金品を福井県高浜町の元助役や取引先から個人的に受け取っていた事実が判明し、連日大きなニュースになっています。関西電力の筆頭株主である大阪市は、株主代表訴訟を視野に入れる等、今後の展開が注目されています。

今回の不祥事発覚を受けて関西電力の株価は下落しており、不祥事発覚前に1,400円を維持していた株価は1,200円台にまで下落しました。1,200円台は今期のサポート&レジスタンスとして機能しているラインであり、さらに不祥事問題が拡大してもう一段の下落が発生すれば、1,200円台を割れて株価急落の可能性もあります。

関西電力のライバル、大阪ガスの存在

各地域に存在する電力会社はその地域で独占企業の地位にありますが、関西では大阪ガス(9532)の存在により若干事情が異なります。

その名の通り、ガス事業を母体とする大阪ガスですが、古くから事業の多角化に積極的で、現在はガス事業だけではなく国内外で電力事業も手掛けています(2019年3月期の国内電力・海外エネルギー事業の売上高合計は2,247億円)。そして国内の電力自由化を背景に、大阪ガスは個人顧客獲得にも意欲的です。

原発での発電比率が50%を超えていた関西電力は、福島第一原発の事故以降、原発停止による業績悪化に苦しみました。そしてその間に関西圏で電力シェアを伸ばしたのが大阪ガスです。電力会社に対抗姿勢を見せる企業として、大阪ガスは全国的に見ても珍しい存在だと言えます。

上述のように、今回の不祥事発覚による関西電力の株価の下落率は1割を超えています。その一方で、大阪ガスの株価は1,900円台から2,000円を超えて一時は2,100円に到達しており、上昇率は約1割です。つまり、両社の株価は正反対の値動きを見せているというわけです。

原発再稼働の拡大は困難に。大阪ガスにはチャンスか

今回の一件では、原発反対派・推進派の双方が関西電力に不信感を抱く結果を招いており、関西電力は四面楚歌の状態にあります。今後、第三者委員会による再調査が進められる予定ではあるものの、問題の収束にはほど遠い状況です。

また、関西電力管内における追加の原発再稼働が難しくなる可能性は高いと考えられます。原子力発電所への依存度が高い関西電力にとって、原発再稼働の可否は収益面に大きな影響を与えるため、当面関西電力の利益拡大は望み薄でしょう。実際、関西電力は原発の稼働がストップしていた2012年3月期から2015年3月期まで、4期連続の赤字を計上しています。

今後、第三者委員会の発足と調査報告、そして経営陣の責任追求が進む中で、引き続き関西電力に注目が集まることが予想されます。しかし関西電力の強力なライバル的立場にある大阪ガスについても、今後の業績や株価がどう推移するか注目に値するのではないでしょうか。

石井 僚一