先週、東洋経済オンラインにデービッド・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長)の記事が掲載されました。タイトルは『この法律が日本を「生産性が低すぎる国」にした アトキンソン「中小企業基本法が諸悪の根源」』です。

私を含め日本の中小企業支援分野で「中小企業のために」と信じてやってきた方々にとって中小企業基本法(1964年、1999年改定)は一種の般若心経のようなもので、それを否定されると心情的に受け入れられない面もあるかと思いますが、一面、鋭い指摘であると感じました。

今回、あらためて日本の中小企業政策を先進主要国と比較しながら、振り返ってみたいと思います。

アトキンソン氏の論点を検証する

アトキンソン氏は、日本の生産性が長年低迷している原因は「中小企業天国」と呼べるような非効率な産業構造にあると指摘しています。そして、それを法律面から支えてきたのが中小企業基本法(1964年)だと論じています。

つまり、優遇措置を目当てに非効率な中小企業が爆発的に増え、なおかつ成長しないインセンティブまで与えてしまった。中小企業を応援して日本経済を元気にしようという精神からつくられた法律が、優遇に甘えられる「中小企業の壁」を築き、他の先進国と比べて中小企業で働く労働者の比率が多いという非効率な産業構造を生み出してしまったということです。

中小企業は本当に非効率か?

中小企業の生産性については中小企業庁が2018年版の「中小企業白書」で次のように分析しています。

第3章 中小企業の労働生産性」によると、2016年度の労働生産性(従業員一人当たり付加価値額)は、中小企業では製造業者582万円、非製造業者554万円。大企業では製造業者1,320万円、非製造業者1,327万円です。やはり、平均的には大企業との格差が大きいようです。

中小企業の労働生産性の推移を見ると、1996年から2016年の20年間で製造業▲3.2%、非製造業▲9.2%となっており、生産性を向上させている大企業(製造業+13.4%、非製造業+8.1%)との格差はますます拡大しています。

ただし、中小企業の中にも生産性の高い企業が存在しているのは注目すべき点です。実際、製造業では約1割、非製造業では約3割の中小企業が大企業平均以上の労働生産性を実現しています。そうした一部の優良な中小企業は成長投資(IT投資、研究開発、設備投資)に積極的に取り組んでおり、結果的に賃金水準も高いようです。

中小企業に勤める就労者の割合は?

ILO(国際労働機関)によれば、就業者全体に占める中小企業従業員比率は、新興国34%、先進国41%、途上国52%となっています。ちなみに生産性が高いと言われるアメリカは50%です。そして、日本は69%です。国際比較すると、やはり日本では中小企業に勤めている就労者の割合が高いと言えそうです。

なお、従業員20人未満の小規模事業者に勤める就労者の割合(OECDデータ)に着目すると、日本は20.5%です。先進主要国のイタリア30.9%、スペイン27.3%に比べれば低めですが、イギリス18.1%、フランス18.0%、ドイツ13.0%、アメリカ11.1%に比べれば高いレベルとなっています。

中小企業基本法は中小企業を甘やかしてきたのか?