本題はここからです。

現代日本では、親が子供に何でもかんでも期待します。やれお受験だ、やれバイリンガルだ、やれ有名企業就職だ…。挙げ句の果てに学校で金融教育をすべしといった議論まで出てきていますが、お金の教育は一朝一夕にできるわけではありません。

筆者の考えでは、家庭における子供への一番のマネー教育は、親がお金の使い方や貯め方にポリシーを持っているかどうかを見せることだと思います。

非課税のメリットが大きいNISA/つみたてNISAが伸び悩んでいるのは、資産形成層である親自体がさほど資産形成に興味を持っておらず、そうした情報を選択できないからだと推察します。もちろん、有価証券投資はリスク資産への投資が基本ですから、元本を絶対割りたくない方は預貯金中心の運用にならざるを得ません。

これが例えば、

「おとうちゃん、預貯金も悪くはないけど、利息がつかへんのでなんとかせなあかん」

「でもなおかあちゃん、年間1万円の利息をもらうには、元本がどれだけ必要かわかるか? 定期預金の金利が年0.01%やとすると、1億2,549万円もいるんやで」

「せやけど、おとうちゃん、この30年でアメリカの株は10倍にふえてるらしいで。トランプ大統領が言っとったわ。なんかせな、あかんのちゃう?」

というような夫婦の会話を子供が聞くと、子供は自然に「いまは“定期預金”では儲からないんだな」と理解します(定期預金が何たるかの理解は別として)。

親が子に教える金融経済教育は、金融リテラシーとか商品知識とか大層なものではなく、こうしたポロッとした会話の中や普段の生活で1円も無駄にしない態度を見せることです。使うところは使い、締めるところは締める。コツコツとつみたて投資を継続する。

残念ながら、時代が豊かになって外食だハワイだという今の子育て世代は、なかなかそうした行動を見せられません。そして家庭内での金融教育もアウトソースせざるをえない時代になってきました。そうした点で、筆者も貢献したいと考える今日このごろです。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)