茨城県の常磐自動車道で起きたあおり運転殴打事件で、すでに傷害容疑で逮捕されていた宮崎文夫容疑者に対して、茨城県警が強要容疑で再逮捕する方針であることが報道されました。この事件を筆頭に、昨今、あおり運転関連のニュースが絶えません。みなさんの中にも、実際にあおり運転の被害に遭ったことがある方もいるかもしれません。

そのような中、ツイッターでとある自動車教習所が「教習生をあおらないでください」と訴え、話題を呼んでいます。

教習生だけでなく、まだ初心者マークをつけなければならないドライバーや、車にめったに乗らないドライバー、運転にまだ不安の残るドライバーの方たちも、あおられることに恐怖を抱いているではないでしょうか。この記事では、どのようにすれば、できるだけあおり運転に遭わずに済むか、また、もし遭ってしまった場合どうすればよいのかを考えていきましょう。

教習所のツイートが話題に

ツイッターで、栃木県那須烏山市にある烏山自動車学校(@KarasuyamaDS)が投稿したツイートが話題になっています。

2019年の8月25日に投稿されたそのツイートは、次のようなものでした。

「教習車をあおらないでください(>_>)
教習生は、とても気にしています。
加速は、まだ苦手ですが、交通ルールを守って練習しています。
見通しの良い道路では、停車して、後続車をゆずるようにしています。
教習生は、ベテランドライバーの皆さまの運転を、とても良く見ています。
最高のお手本を♡」

という内容で、教習生をあおらないよう訴えています。この投稿に対して、リプライでは、

「教習車を見ると応援しちゃう」
「あおるドライバーも教習生の時代があったでしょう。それを忘れちゃダメ」
「そんなあほなドライバーが免許を持てるのがおかしい」

といった教習生を応援する声が多く見られます。その一方で、

「行動が予測できないので近づかないようにしています」

といった、教習車に対して困惑・敬遠の気持ちを表す声も見られました。それに対しては、この自動車学校は「見守ってほしい」と返答しています。

初心者ドライバーを守る法律

教習生は教官が隣に座ってくれていますし、世間や自動車学校もそれなりに応援してくれているので、少しは気が楽かもしれません。しかし、免許を取ったばかりのドライバーの中には、一人で運転するのが不安な方もいるかもしれません。

そのような初心者ドライバーを守るための法律があることを、皆さんはご存じでしょうか?

道路交通法第71条には、仮免許運転者、初心運転者、高齢運転者等のマークを付けた車両に無理に幅寄せする等の煽りを行ってはいけないという規定があります。そして、それを破ると「初心運転者等保護義務違反」になります。法律的にも、こうしたドライバーは特別に保護されているということです。

この条文は、免許を取るにあたってしっかり勉強することでもありますし、初心者ドライバーの方々は、この法律のことを心の隅にとめていれば、少しは心に余裕ができるかもしれません。

あおられる方にも問題がある?

しかし、あおり運転事件に対して、世間では、

「あおられる側にも問題がある」

といった声も見られます。たとえば、走行車線が空いているにもかかわらず、追い越し車線を走り続けることは、「通行帯違反」にあたります。仮に「あおられた」と訴えたとしても、自身も違反をしていては、世間から白い目で見られてしまう可能性があります。

無謀で危険なあおり運転を訴えることに対して、ためらいが生まれることは、結果的に加害者たちが「あおっても大丈夫だ」と思ってしまう遠因にならないとも限りません。もしそうしたことが、あおり運転をのさばらせるのであれば、避けるべきではないでしょうか。

あおり運転に遭わないためには

あおり運転に対して最も有効な対策は、「そもそもあおり運転に遭わないようにすること」です。

先ほどの「あおられる側にも問題がある」という見方とも関係しますが、あおり運転に遭わないために最も重要なことは「運転の基礎」を守ること。それは、停止は徐々に減速して止まる、十分な車間距離を取る、といった教習所で欠かさずに教えられる内容です。

自動車保険などを扱うチューリッヒ保険の調査によれば、あおり運転の被害に遭ってしまった原因として思い当たるものの1位が「車線変更をした」、2位が「追い越し車線を走り続けた」になっています。

この調査に見られるように、相手に「割り込みや無理な追い越しをされた」などの印象を与えてしまったことがあおり運転に巻き込まれる要因のひとつになっているのであれば、ここでも「基礎が重要」だということです。運転に慣れたからといって教習所で習ったことを甘く見るのではなく、「初心を忘れないこと」があおり運転の被害に遭わない最善策といえるかもしれません。

一方で、初心者マークを付けているドライバーはあおり運転の標的になりやすいと言われており、ネット上では、

「うちの地元では「初心者マークを見たら煽れ」みたいな風潮があった」
「初心者マークつけてた頃はあおられてたな」

といった、どうやってもあおり運転を避けきれない現実を吐露する声もあります。

それでもあおり運転に遭ってしまったら?

では、車間距離やスピードに細心の注意を払っていたのにも関わらずあおり運転に遭ってしまった場合、どのようにすればよいのでしょうか?

九州大学大学院で交通心理学の研究をしている志堂寺和則教授は、時事通信社の取材に対して、

「まずは極力関わらないこと。もし相手が停車して下りてくるなどした場合にはドアをロックして、窓を開けてはいけない」

と述べています。窓の構造やメーカーごとの安全性の考え方にもよるので、一概にはいえないのですが、窓ガラスを素手で割り、車内の人に危害を加えることは、なかなか難しいといわれています。

また、ドライブレコーダーで運転を記録して、それを証拠に警察に相談するのもやはり有効です。近年、ドライブレコーダーを設置する人が増えているともいわれますが、前述の常磐道での極端なあおり運転の事件がメディアを賑わせた後、カー用品販売店などに購入希望者が目に見えて多く訪れているという報道もあります。

あおり運転から自分を守る「一番の武器」

ドライブレコーダーは自分の運転も記録するので、もし自分が違反をしてしまえばそれも残ることになります。そうならないためにも、自分は初心を忘れずに運転することが重要です。

初心者であることやあまり車に乗らないことに引け目を感じている方もいるかもしれません。しかし、それと同時にみなさんが持っている慎重さや丁寧さ、忘れていない交通ルールの知識は、あおり運転に対しての一番の武器なのです。

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