お得な制度「iDeCo」と「NISA」を使って資産運用を始めるぞ!と意気込んだものの、たくさんの金融商品の中からどれを選んでどう組み合わせればいいのかわからない……。

そんなみなさんのために、『貯金も節約もできない人でもお金が増える方法』などの著書のあるファンドアナリスト、篠田尚子さんが投資信託を活用したモデルポートフォリオを考えてくれました。ぜひ参考になさってください。

投資信託、インデックス型とアクティブ型の違いは?

資産形成をしたいなら、絶対的にオトクな公的制度「iDeCo」と「NISA」を活用したいものですが、たくさんの商品があるうえに、商品の組み合わせ方は、年齢やライフスタイルなどによっても変わってきますので、迷ってしまう人も多いでしょう。

そこで今回は、ライフスタイル別にオススメの商品とその組み合わせを具体的にご紹介したいと思います。

まず、選ぶべき金融商品としては、ファンドマネジャーと呼ばれる運用のプロに任せて”ほったらかし”にできる「投資信託」をオススメします。

その投資信託にも、いくつかの種類があるので、それをざっくり解説しましょう。

ファンドマネジャーが投資する代表的な投資先は、株式、債券、不動産(リート)。投資対象地域は、国内、海外のほか、国内と海外の双方に投資するものもあります。これらの中から「ソニーの株」「トヨタの株」「アサヒの株」「NTTの株」という感じで、いくつかの商品を組み合わせてパックにしているのが投資信託です。

投資信託には、大きく分けて「インデックス(パッシブ)」と「アクティブ」という2種類の運用手法があります。

インデックス型の投資信託は、ベンチマーク(運用の良し悪しを測る基準)として掲げられた指数に連動した運用成果を目指すのに対し、アクティブ型の投資信託は、このベンチマークを上回る運用成果を目指します。

ベンチマークの例としては、ニュースでもおなじみの日経平均株価(日経225)やニューヨーク・ダウ平均のほか、世界各国の株式・債券全体の動きを捉えたものもあります。

レストランでたとえるなら、インデックス型の投資信託は、どの店舗でも同じ価格で均一の味を提供するチェーン店。対してアクティブ型は、シェフが腕を振るうこだわりのビストロといったところでしょうか。

重要なのは「使い分け」

インデックス型は、チェーン店と同様、マニュアルに則った運用をおこなうので、コスト(=信託報酬)が低く抑えられています。これこそが、インデックス型の最大の魅力です。

ただし、アクティブ型のように、相場環境に応じてファンドマネジャーが独自の投資判断を下す余地はありません。あくまでもベンチマーク(=マニュアルに沿った運用)が原則です。

一方、アクティブ型は、原則、指数を上回る運用成績を目指すので、ファンドマネジャーには相応の努力が求められます。

たとえば、株式で運用をするアクティブ型の場合、ファンドマネジャーとそのチームが、企業の財務や決算を調べたり、実際に企業を訪問して事業について聞いたりすることで、有望な投資先を発掘するといった努力をしています。

まさに、ビストロのシェフが、食材の仕入れ先や調理方法にこだわりを持つのと同じです。インデックス型と比べて労力を必要とするぶん、相応のコスト=信託報酬がかかります。

チェーン店もこだわりのビストロも、価格や期待される味など、それぞれによさがあります。実際に、日ごろから外食時のニーズに合わせて、自然と使い分けているという方も多いのではないでしょうか。

インデックス型とアクティブ型も同じです。どちらが優れていて、どちらが劣っているということではなくて、両者の「使い分け」こそが重要なのです。

「バランス型」という便利な商品も

インデックス型とアクティブ型は、「国内株式」や「海外債券」など、単一の資産で運用する投資信託で主に使われますが、このほかに、「バランス型」という商品も存在します。

これは、「海外株式」「国内債券」「国内不動産(リート)」といったように複数の資産を組み合わせて運用するもの。

レストランのメニューでたとえるなら、インデックス型とアクティブ型の投資信託は「アラカルト」で、バランス型の投資信託は「シェフのおまかせコース」、あるいは「ワンプレートランチ」といったところでしょうか。

複数の投資信託を保有するのが煩わしい場合は、バランス型も選択肢に入れることをおすすめします。

単一資産で運用するインデックス型とアクティブ型は、複数本の投資信託を保有してポートフォリオ(投資信託の組み合わせ)をつくることが望ましいですが、バランス型の場合、1本だけの保有でも資産分散や地域分散が実現できるよう工夫されています。

年代・ライフスタイル別ポートフォリオ

投資信託を保有する「器」であるiDeCoやNISA、さらには課税口座のすべてを一気に管理するのはとても大変です。そこで、最初に”ほったらかし”にする器を決め、全体を管理しやすくするのがポイントです。

選ぶ投資信託の銘柄はなるべく被らないようにし、保有本数も5〜6本程度に抑えましょう。

いよいよここからは、年代別に、各制度と投資信託の理想的な組み合わせ方である「モデルポートフォリオ」を見ていきましょう。

●20~30代/既婚夫婦/世帯年収600万円~
多少は余裕資金あり


●30~40代/独身/年収400~700万円
老後の生活が心配


●30~40代/既婚子どもあり/世帯年収600万円~
これから先立つ出費が心配

ご紹介しているのはあくまで一例ではありますが、皆さんが現在置かれている状況や、資産形成の目的などと照らし合わせて、ぜひ参考にしてみてください。

誰しも、お金と時間は有限です。だからこそ、活用できる制度や商品は最大限活用して効率的に資産形成を行い、人生をより充実させていただきたいと思います。


貯金も節約もできない人でもお金が増える方法
著者:篠田尚子
出版社:かんき出版
単行本:192ページ

篠田 尚子