電車やスーパー、飲食店などで泣き続けていたり走り回っていたり。元気な子どもを見かけることがあると思います。子どもの声はひときわよく聞こえてきますよね。中には、そばにいる親が子どもに対して何もしていない時もあります。そんな様子を見て、「どうしてあの親はちゃんと怒らないのだろうか」「親は一体何をしている?」と疑問や怒りを覚えることもあるかもしれません。

しかし、その親は決して「理由なしに何もしていない」というわけではないのです。

(1) 人前だからこそ「叱れない」親の心理

連れている子どもが騒いでいると、人目につきますし、親に対する風当たりも厳しくなります。周囲に迷惑をかけようものなら親は頭を下げるのが当たり前。「もっと申し訳なさそうにすべきでは」など、常に周囲への気配りが求められます。

そのような視線に包まれながら、的確に子どもを叱って、効果的に静かにさせる…ということができるでしょうか。しかも周囲が納得するような叱り方です。非常に難しいものではないでしょうか。

(2)親としての能力不足?

テレビなどのメディアでは、子どもの目の高さに目線を合わせて、きちんと話して聞かせる、そうすれば必ず子どもに伝わる…と言われていますが、まず、場所が「お出かけ先」という子どもにとって楽しい環境です。同じ場所にいても静かに過ごせる子もいますが、子どもの気持ちをコントロールするということは、一人の人間をコントロールするということ。お出かけ前に約束をしたり、気を引くおもちゃを用意して対策をしたりしていても、どうにもならない時があるのです。

もしも、スポーツ観戦やコンサートの会場で、大人に対して「静かに見ましょう」と言って、本当に制限できるでしょうか。場所が場所なら大人でも騒いでしまいます。また、電車の中でおしゃべりが止まらない大人もいます。怒りの収まらない様子の人もいます。親の能力が不足しているというわけではなく、人の感情を周囲に合わせてコントロールすることは、もともと簡単なことではないのです。

(3)「あの親、虐待?」と疑われるのではないか

子どもが人に迷惑をかけてしまった時、しっかり叱りつけることができない場面もあります。親としては子どもに伝わるように強めに叱りたいところでも、それが他人の目から見ると「あの親、虐待では?」と思われることもあるからです。

悪ふざけするのを見た親は、反射的に「こら!やめなさい」と大きな声で叱ったりします。親としては「これくらいの声や表情で叱らないと、うちの子は止まらない」と知っているため、そのような声や動作が瞬間的に出ています。

しかし、他人の視線は非常にきついものです。子どもの年齢や親の表情、声の大きさなどから「虐待?」という目を向けるのです。親も周囲の視線に気づき、疑いを持たれる恐怖を感じ、さらに子どもを叱れなくなってしまいます。

(4)どうしようもできず、無言に