この記事の読みどころ

  • 2016年3月10日(木)21:45発表予定の欧州中央銀行(ECB)の動向に注目です。
  • 中国経済の先行き不安に加え、ユーロ圏の銀行セクターの体力は依然として脆弱です。
  • ドラギECB総裁が、一段と踏み込んだ金融政策を公表するかが最注目ポイントです。

2016年3月10日(木)21:45発表予定の欧州中央銀行(ECB)の動向に注目

前回、2016年1月21日の欧州中央銀行(以下、ECB)の定例理事会で、ドラギECB総裁は、「次回3月の政策委員会で再検討し、場合によっては再考することが必要になる可能性がある」と、追加緩和を予告しました。

これは、年明け以降、中国株急落を発端にユーロ圏内のマクロ環境が急速に鈍化していることが背景にあります。たとえば、ユーロ圏の代表的な経済指標であるユーロ圏景況感指数は、12月の106.7から1月105.0、2月103.8と2か月連続で低下し始めています。

ECBは、2015年12月3日に中銀預金金利(預金ファシリティ金利)をマイナス0.2%からマイナス0.3%へ引き下げました。また、債券購入プログラムを6か月延長し、今月(3月)まで継続することも決定しました。しかし、ユーロ圏のマクロ経済指標を確認する限り、その効果は出ていません。

中国経済の先行き不安に加え、ユーロ圏の銀行セクターは依然として脆弱な体力

今回、3月の追加緩和が実施されると、5回目(2014年6月マイナス金利導入、9月マイナス金利幅の拡大、2015年3月量的金融緩和開始、12月量的金融緩和延長とマイナス金利幅拡大)の金融緩和政策の実行となります。

それにも関わらず、ユーロ圏のマクロ経済指標の好転が見られないのは、中国経済に対する先行き不安に加え、ユーロ圏の銀行セクターが依然として脆弱な体力にあることも一因と考えられます。

たとえば、米国の金融機関の不良債権比率は1.7%なのに対して、イタリアの金融機関の不良債権比率は18%となっています(2015年6月末時点)。過去の日本も経験した金融機関のバランスシート調整の遅れが、ユーロ圏の経済を苦しめている一因と言えそうです。

ドラギECB総裁は、一段と踏み込んだ金融政策を公表するか

こうした中、ユーロ圏の銀行セクターにとって諸刃の剣ともなり得るマイナス金利幅の拡大や、債権購入プログラムの再延長を、3月10日(木)にドラギECB総裁が定例記者会見で公表するかどうか、マーケットの関心が高まっています。

【参考情報】政策金利の基礎知識

そもそも政策金利とは

政策金利とは、各国中央銀行が一般の銀行に融資する際の金利です。中央銀行の金融政策によって決定され、景気が上向きの場合、高い金利設定となり、景気が下向きの場合、低い金利設定となります。

つまり、景気が良くなり物価上昇が確認されると、中央銀行は政策金利の誘導目標値を引き上げ、マーケットから資金吸収を行います。こうして、短期金利を引き上げることで、企業の借入を抑制すると同時に景気を冷やします。

一方、景気が悪くなり物価下落が確認されると、中央銀行は政策金利の誘導目標値を引き下げ、マーケットに資金供給を行います。こうして、短期金利を引き下げることで、企業の借入を促し、景気回復を図ります。

現在、各国の中央銀行では、政策金利の①上限、②本来の政策金利、③下限の3つを設定しています。この政策は、コリドー(回廊)・システムと呼ばれています。

細かい話になりますが、ECBの場合、①上限=限界貸出金利、②本来の政策金利=リファイナンス金利、③下限=中銀預金金利(預金ファシリティ金利)と定義しています。

参考までに、日銀の場合、①上限=補完貸付制度(ロンバート型貸出制度)の金利となるロンバート金利=基準割引率及び基準貸付利率(昔の公定歩合)、②本来の政策金利=「無担保コール翌日物」の金利、③下限=補完当座預金制度の金利と定義しています。

※元データの確認は、ECBのウェブサイト(英語版)をご参照ください。

【2016年3月7日 投信1編集部】

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岡野 辰太郎