2019年5月17日に行われた、株式会社三井住友フィナンシャルグループ2019年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:株式会社三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田純 氏

太田純氏:みなさま、こんにちは。2019年4月にグループCEOに就任いたしました太田でございます。常日頃から当社をご支援いただきまして、厚く御礼を申し上げます。

2020年3月期までの3ヶ年を計画期間とする中期経営計画「SMBC Group Next Stage」も、残すところあと1年となりました。私は、この計画の策定にCSO、およびCFOとして携わりましたが、2019年度はCEOとして最終年度を着実に仕上げるとともに、次期中期経営計画を展望し、持続的成長に向けた施策に着手してまいります。

本日は私から40分程度プレゼンテーションをさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

1. 業績サマリー

本日のアジェンダとしては、まず2018年度決算と2019年度業績目標を総括いたします。続いて、私がCEOとして取り組んでいきたい戦略の方向性についてお話ししたあと、中期経営計画の進捗と今後の取り組み、そしてESG、資本政策についてご説明申し上げます。

5ページは2018年度決算のサマリーであります。スライド左側の表の4行目にお示ししております連結業務純益は1兆1,923億円と、目標比で123億円の上振れとなりました。これは、グループベースでのコストコントロールにより、営業経費が抑えられたことが主な原因であります。

また、前年比では116億円の減益となりましたが、スライドの右下にお示ししたとおりグループ再編にともなうマイナス影響が120億円ございます。したがいまして、この再編影響を除けば、好調であった前年度並みの水準を確保しております。

これは、マーケット環境の悪化により資産運用ビジネスが低調であったものの、海外ビジネスが堅調に推移したこと、さらには経費コントロールに努め、営業経費が減少したことが主な要因でございます。

表の11行目にお示ししております親会社株主純利益は7,267億円と、目標比では267億円のプラスとなりました。これは、連結業務純益の上振れに加えて、与信関係費用が下振れたこと等によるものでございます。また前年比では与信関係費用が増加しておりますので、77億円の減益となりました。

2. 2019年度の業績目標

7ページは2019年度の業績目標であります。スライド左側の上段にあります連結業務純益は1兆1,800億円としております。前年比では123億円の減益となりますが、三井住友ファイナンス&リースの非連結化とグループ再編にともなうマイナス影響が約600億円ございますので、これを除けば2019年度は増益を見込んでおります。海外ビジネスの拡大、さらには資産運用ビジネスの強化などを見込んでいるためでございます。

表の中ほどにあります親会社株主純利益は7,000億円と、前年度の目標と同額としております。前年比では267億円の減益となりますが、これは主に与信関係費用の増加を見込んでいるためであります。

投資家、アナリストのみなさまとはこれまでもCFOという立場で接する機会がございましたが、こうした場でプレゼンテーションをさせていただくのは今日が初めてとなります。そこで本日は、具体的な取り組みについて説明させていただく前に新CEOとして私が考えている戦略の方向性についてお話しさせていただきます。

1. 私たちを取り巻く環境

18ページにお進みください。まずは私たちを取り巻く環境に対する見方です。スライドの左側に示すとおり、金融・経済環境につきましては、国内での低金利環境の長期化や内外経済の鈍化など、厳しい収益環境が継続するものと見ております。一方で、社会環境の変化を受けてお客さまのニーズはますます高度化、多様化しております。

例えば、スライドの中ほどにございますキャッシュレス化やデジタル技術の進化には目覚ましいものがあります。日本は諸外国と比べてキャッシュレス化が進んでいないとの指摘もありますが、国内のキャッシュレス決済市場は成長を続けているほか、スマートフォンがシニア層を含めて幅広く普及し、お客さまの行動パターンが大きく変化しております。

また、右側にありますクロスボーダーM&Aの増加に見られるように、日本企業の海外展開が加速しているほか、インドネシアにおける中間層の急拡大に象徴されるように、新興国の成長は続いております。

2. 変化を捉えた経営戦略

こうした変化は今に始まったことではございません。国内ではこれまでも長い間、低成長・低金利という、商業銀行にとっては厳しい業務環境が続いてまいりました。こうした厳しい環境や社会の変化にスピーディに適応していくことが我々の強みだと考えております。

例えば、SMBC日興証券、SMBCコンシューマーファイナンス、SMBC Aviation Capital、これらはいずれもSMBCの発足以降当社グループに加わった各業界におけるトップクラスの企業であります。

その結果といたしまして、スライドの左上に示したとおり、連結業務純益に占めるSMBC以外のグループ会社の割合は、2003年度の8パーセントから2018年度には51パーセントへと大幅に高まりました。

また、成長ドライバーである海外ビジネスの割合は5パーセントから33パーセントへと拡大しております。厳しい環境のなかでも業務・地域のウィングを拡大し、収益源の多様化を進めることによって、スライド左下にあるようにボトムライン収益の成長を実現してまいりました。

また、ここ数年を振り返りましても、アジア経済のスローダウンや国内におけるマイナス金利政策の導入等、大きな環境変化がありました。そうした変化に対応するべく、前中期経営計画の半ばよりトップライン成長重視の戦略から我々の強みである効率性をさらに向上させる戦略に回帰いたしました。

ボトムラインの重視、コストコントロール、グループ事業の再編によって、スライドの右側にお示ししております指標に見られるように効率性を向上してまいりました。

3. 戦略の方向性

20ページにお進みください。お客さまにより一層価値あるサービスを提供し、お客さまとともに発展する。これは私どもの経営理念の第一に掲げているものでございます。したがいまして、CEOとしての私の最大の使命はお客さまにより一層の付加価値を提供し、グループの持続的な成長を実現することだと考えております。

時代の変化に応じて自らをスピーディに進化させるという我々の強みを最大限に発揮し、お客さまの真のニーズにお応えするために、スライドにお示ししておりますように果敢な構造改革、不断のイノベーション、グループ総合力の最大化の3つを実施してまいりたいと考えております。

3. 戦略の方向性 ①果敢な構造改革

21ページより、それぞれのポイントについてご説明いたします。1つ目は、果敢な構造改革でございます。厳しい収益環境に対応するため、ビジネスモデルの進化と経営資源の最適化を実行してまいります。

例えばリテール事業部門におきましては、トップライン収益が伸び悩むなかでも持続的な成長を実現するために、店舗改革等を通じたコストの削減により損益分岐点を引き下げてまいります。

また、運用商品の販売手数料へ依存した大きいビジネスモデルから、お客さまの預かり資産に対する管理手数料を主な収益源とした資産管理型ビジネスへの転換をより一層進めてまいります。

スライド左側の下にございます国際事業部門におきましては、リスクアセットや外貨調達の制約を踏まえてバランスシートの拡大に依存した成長モデルから脱却し、取引の複合化やプロダクトの強化を通じた収益の拡大に努めてまいります。

またアジアでは、インドネシアで進めておりますように商業銀行モデルを展開し、新興国の成長をフルラインのサービスでサポートするとともに、我々自身も成長してまいります。

こうしたビジネスモデルの進化と平行して、経営資源の最適化にも努めてまいります。事業の選択と集中については、資本やリスクアセットの配分を見直し、注力する事業領域にフォーカスした戦略を推進するほか、今後蓄積していく利益をもとにディシプリンを利かせた成長投資を行ってまいります。

また、RPA等のテクノロジーを活用した業務効率化を進めるとともに、グループベースでの機能の集約、あるいはシェアード化等によって経費コントロールをさらに強化してまいります。

3. 戦略の方向性 ②不断のイノベーション

22ページにお進みください。2つ目は、不断のイノベーションでございます。デジタライゼーションが進展し、金融業界の規制が緩和されていくなかで、今後は我々が果たす役割も拡大していくと見ております。

昨今は銀行不要論についてコメントを求められることがありますが、私は銀行が本当に不要になるのであれば我々が銀行である必要はないと……我々自身が銀行でなくなればいいと考えております。

今後の変化のなかで勝ち残れるよう、不断のイノベーションを実践し、先進的でプロアクティブな取り組みを進めてまいります。

具体的なテーマといたしましてはスライドの下にお示ししておりますように、例えば異業種との競争による新規ビジネスの創造や、データの経営資源化、さらにはプロセスオートメーションといったことを考えております。

2019年4月に経済産業省および東京証券取引所による「攻めのIT経営銘柄2019」という賞に銀行業として唯一選定をいただきました。AIやデータを活用し、金融ビジネスにおける新たな価値提供を推進する当社の取り組みを評価いただいたものと受け止めております。

今後とも、我々が持つ強固なプラットフォームや培ってきた信用力、そして膨大な情報を活かしつつ、銀行や証券といった既存の業態の枠にとらわれない大胆なチャレンジをしていくことでお客さまに常に新しい価値を提供してまいります。

3. 戦略の方向性 ③グループ総合力の最大化

23ページにお進みください。3つ目は、グループ総合力の最大化です。当社グループの強みは、銀行、リース、証券、カード、コンシューマーファイナンス等、各業界におけるトップクラスの企業を擁することであります。事業部門制・CxO制を導入することによりまして、持ち株会社中心のグループ経営体制はこの2年間で着実に定着してきたと感じております。そこからさらに一歩進め、グループシナジーを最大限に発揮し、より具体的な成果につなげてまいります。

例えば、スライドの下段に示したとおり、グループ会社間での共同店舗や、キャッシュレス戦略におけるSMBC三井住友カードとセディナの連携等があります。また、法人ビジネスにおけるグループベースでの多彩なソリューションや、インドネシアでのマルチフランチャイズ戦略の実践等、グループ会社間の協働の拡大や資源配分の最適化に取り組み、グループ総合力の最大化を追求してまいります。

以上、CEOとして今の考え方について申し上げました。社内では次期中期経営計画に向けた議論を始めておりますが、こうした考え方を踏まえながら検討を進めてまいります。

我々を取り巻く経営環境の見通しは決して楽観できるものではございませんが、そうしたなかでも質にこだわりつつ、新たな取り組みにスピード感を持ってチャレンジしてしたたかに競争を勝ち抜いていく、そうした金融グループを目指してまいります。

1. 中期経営計画の進捗

中期経営計画の進捗と今後の取り組みについてご説明申し上げます。25ページは中期経営計画の進捗でございます。スライドの上段にお示ししておりますROE、経費率、CET1比率の3つの項目は、いずれも財務目標に対して順調に推移しております。また下段にあるとおり、中期経営計画における主要施策も総じて着実に進捗しております。

2. 事業・アセットポートフォリオの転換

26ページから具体的な取り組みについてご説明いたします。まずは、事業・アセットポートフォリオの転換です。スライドの左側はすでに実行した主なグループの再編です。矢印で示すとおり、いずれの案件もボトムラインの増加、あるいはリスクアセットの減少を通じて資本効率の向上に寄与しております。

右側には再編効果の発揮例を示しております。例えば、2つの証券会社の合併は実施から約1年半が経過しましたが、システム統合、本部人員の削減、店舗の統廃合等を通じて、当初の狙いであったシナジー効果が現れてきております。

また、三井住友ファイナンス&リースでは、リース対象資産の拡大や環境事業・インフラ管理事業への進出等、事業領域の拡大を進めております。

3. 経費コントロール

27ページには経費のコントロールについてお示ししております。中期経営計画で掲げた3つの施策は順調に進捗しております。

スライドの左下にあるとおり、2018年度は360億円の削減を実現しており、2019年度は3ヶ年の目標である500億円の削減目標を上回る見込みであります。引き続き、着実に削減額を積み上げ、中期的には1,000億円の削減を目指してまいります。

右上には経費率の推移を示しております。関西の地銀を非連結化したことから2018年度の実績は60.3パーセントとなりました。2019年度は2018年度下期に実施した三井住友ファイナンス&リースの非連結化が経費率の上昇要因として年間を通じて効いてくるため、経費率は一定程度上昇すると見ております。

こうした上昇要因を吸収したうえで、従来の目標を達成できるよう、より一層グループベースでの経費コントロールを徹底してまいります。

右下の業務量の削減につきましては、グループ会社を中心とする業務の効率化の効果により、3ヶ年の計画として掲げた4,000人分の業務量削減という目標を超過して、5,000人弱分となる見通しであります。従業員数で見ても、新卒採用の抑制等による自然減によりまして、当初申し上げておりました業務量削減とほぼ同数の4,000人弱の国内人員の減少を見込んでおります。

4. キャッシュレスへの取組

29ページはキャッシュレスへの取り組みについてです。私どもの戦略は、イシュイングとアクワイアリング双方の業務において日本のトップティアのステータスにあるというビジネス基盤を最大限に活用し、事業者、利用者双方に競争力のある手数料水準でフォーカス的なソリューションを提供することです。

これにより、スライドの左側に示した130兆円という巨大な現金決済市場に切り込み、キャッシュレス決済に振り替えていくというものであります。

スライド右側についてですが、我々の競争優位のさらなる拡大に向け、従来アウトソースしてきたプロセシングネットワークの業務を内製化するために、GMOペイメントゲートウェイ、そしてVisaとも提携に至りました。

今後は3社の強みを結集して強力な決済プラットフォームを構築し、イシュイングからアクワイアリングまで一気通貫でソリューションを提供する体制を整えてまいります。

事業者・利用者向けサービスの強化

30ページにお進みください。具体的な事業者・利用者向けサービスの強化です。中小の加盟店に対しては資本業務提携先であるアメリカのSquareup Pte. Ltd.との協業を通じて決済サービスを提供しております。

2019年4月からは、SMBCの全国の支店でSquareをより詳しく知っていただくためのご説明や申込みまでのサポートを開始いたしました。SMBCの顧客基盤・支店網を活用して、キャッシュレスの裾野拡大を図ってまいります。

また、利用者に対しましては、SMBC・三井住友カードのモバイルアプリの機能を拡充いたしました。引き続き便利で安心・安全でお得なキャッシュレス決済をご体験いただけるようにサービスの向上に努めてまいります。

このように、事業者・利用者双方に対する包括的かつ先進的な取り組みを通じて、日本のキャッシュレス化推進に向けたフロントランナーの役割を果たしてまいります。

5. 事業部門別取組

32ページより各事業部門についてご説明申し上げます。

リテール事業部門①

33ページはリテール事業部門でございます。スライドの左側にありますように、リテール事業部門では下期にマーケット環境が悪化したことから、業務純益は前年比で減益となりました。一方で右上に示したとおり、ストック収益資産残高等のKPIは順調に推移しております。

リテール事業部門②

34ページです。資産運用ビジネスでは販売手数料に依存したビジネスモデルからの転換を推進しております。当社では他社に先駆けて資産管理型ビジネスに取り組んでまいりました。スライド左側に示したとおり、ストック収益資産残高は順調に増加しており、収益全体に占めるストック収益比率も上昇基調にあります。

右側ですが、人生100年時代の到来にともなう長寿・高齢化に対応するべく、お客さまから寄せられる多様なニーズを捉えた新たなサービスを展開しております。

例えば、お客さまの長期運用ニーズに対応してマネープランのシミュレーションを導入し、お客さま一人ひとりの老後の収支の見える化を実施しております。また、これまで対応できていなかった富裕層のお客さまの相続・承継ニーズに対するコンサルティングを強化しております。

さらにこうした流れを推し進めるために、2019年度に営業店の業績評価体系や拠点運営ルールを変更いたしました。業績評価体系につきましては、お客さま本位を軸とし、例えば資産運用ビジネスではグループ全体でお預かりしている運用資産の残高に基づく評価を採用しております。

拠点の運営ルールについては担当者がお客さまのためにという前向きなモチベーションを持って業務にあたれるよう、計数目標を個人に割り振ることはせず、チーム、拠点として取り組むことを明確化いたしました。

リテール事業部門③

35ページはコンシューマーファイナンスについてです。このビジネスは業界トップクラスのシェアとノウハウを有し、スライドの左側に示すとおり、低金利の環境下においても収益性の高いビジネスモデルを堅持しております。

また、右上のグループ全体のカードローン残高は健全な資金需要にお応えすることで堅調な拡大が続いております。今後も、女性の社会進出の拡大等による就業人口の増加やサービスの利便性向上を背景に底堅い借り入れ需要を見込んでおり、リテールビジネスにおける成長分野の1つと捉えております。

ホールセール事業部門①

36ページはホールセール事業部門でございます。スライドの左下にありますようにROEは引き続き高水準を維持しており、12.1パーセントとなりました。右上のKPIも概ね順調な進捗でございます。IPO主幹事件数と M&Aアドバイザリー件数はSMBCとSMBC日興証券の共同の強化を通じて首位を獲得することができました。

ホールセール事業部門②

ホールセール事業部門では、低金利環境下においても持続的な成長を実現するために収益構造の転換に取り組んでおります。スライドの左側に部門の粗利益とその内訳の推移をお示ししております。

ご覧のとおり、金利収益の減少を非金利収益の増加で打ち返し、全体では増益を実現しております。とくに外為・為替の手数料等、安定的な収益が期待できる非金利収益が堅調であります。

右上のグラフにございますように、SMBCの貿易取扱高はきめ細かいお客さま対応等によって着実に増加しております。右下のグラフは利ざやの推移です。

低金利環境の継続によって利ざやの縮小が続いてまいりましたが、グラフのとおり、貸出金全体のストック利ざやと新規の貸出利ざやの水準が近接してきたことから、ストック利ざやの低下幅は徐々に緩やかになってきております。貸出金のスプレッドにつきましては、2019年度の下げ止まりを目指してまいります。

ホールセール事業部門③

38ページの左側には資産効率の改善に向けた取り組みをお示ししております。2018年度から大企業のお客さまについてリスクアセット、あるいは採算性に基づく個社別採算管理を導入しました。加えて、営業店の業績評価に採算の改善を反映させる仕組みを本格的に導入する等、採算にこだわった運営を徹底してまいりました。

また、お客さまのさまざまなニーズに対するグループベースでの多面的なソリューションの提供により資産効率のさらなる改善に努めてまいります。

右側はホールセール事業部門におけるデジタルの活用であります。新たなプロダクトおよびサービスの開発や構内外でのデータの利活用による提案活動の高度化を通じてソリューションの提供力を一層強化してまいります。

国際事業部門①

39ページは国際事業部門です。中期経営計画の主要施策である取引の複合化、強みを持つプロダクトの強化、アジア戦略の推進により、スライドの左側のとおり業務粗利益、業務純益ともに前年比で増益となっております。

国際事業部門②

40ページの左側に海外アセットポートフォリオを円グラフで示しております。ディシプリンを利かせた運営のもと、資産効率を向上させるため、証券業務等の取引の複合化を推進するとともに、私どもが強みを有するプロダクトのさらなる強化を進めております。

左下にあるとおり、海外アセットは当社グループの成長ドライバーとして、過去は年率2桁で成長しておりました。しかしここ数年はリスクアセットや外貨調達の制約、あるいはクレジットリスクを勘案した運営を行っていることに加えて、O&D(オリジネーション&ディストリビューション)を活用してバランスシートを大きく拡大することなく収益成長を実現するモデルへの転換を進めております。

国際事業部門③

41ページをご覧ください。アジア戦略でございます。当社では「10年の計」として、中長期的な目線に立ってアジアビジネスに取り組んでおります。スライドの左側にある、前中期経営計画から進めてきたコアクライアント制度に基づく取引の複合化やトランザクションビジネスの強化は着実に進展しております。

その国に精通した現地職員を採用することで、アジアの地場有力企業・成長企業の実態把握や取引の深耕も進み、国内のように法人取引からオーナーの個人取引を獲得するような事例も出てきております。

右側にはマルチフランチャイズ戦略をお示ししております。アジア経済の動向は引き続き注視しつつも、次の10年の成長領域となるビジネス基盤の拡充にもしっかりと取り組んでまいります。

インドネシアは成長ポテンシャルが高く、このような国にしっかりと根を張って、預金を集め貸出を行うフルラインの商業銀行業務を手がけることが我々の持続的成長につながると考えております。

そのため、2013年にマスリテールの強みを持つBTPN(PT Bank Tabungan

Pensiunan Nasional Tbk)に40パーセント出資し、そして2019年2月にはBTPNとSMBCインドネシアを合併いたしました。

本件は、アジアでホールセール・リテールビジネスを展開するプラットフォームを構築したSMBCグループとしては初の取り組みであります。

今後はインドネシアにおけるトップティアバンクに成長させ、第2のSMBCグループの確立を目指すとともに、新たな対象国へのマルチフランチャイズ戦略の展開も検討してまいります。

市場事業部門①

42ページは市場事業部門でございます。スライドの左側ですが、2018年度は厳しい市場環境のなか、株式と債券のポートフォリオを機動的にリバランスすることで、業務粗利益と業務純益がともに前年比で増益となりました。

2019年度はより厳しい市場環境となることが予想されますが、引き続き機動的なリバランスにより収益を追求してまいります。

市場事業部門②

43ページの左側は市場事業部門の注力分野の1つであるセールス&トレーディングでございます。SMBC日興証券ではマーケットのボラティリティ低下等を主因に苦戦しましたが、SMBCでは外為関連の取引が堅調でありました。

私どものセールス&トレーディング事業は成長の途上にあり、今後の成長が期待できる分野です。そのためのインフラ整備や機能の拡充を着実に進めており、一層の成果をお示ししてまいります。

右側には外貨調達について示しております。日本で初めてカバードボンドを発行する等、調達手段の多様化と投資家層の拡大に努めてまいります。また調達コストを意識して、足元ではコストが歴史的に低水準で推移している中長期の円投を増やしております。今後は外貨調達のベストミックスを追求してまいります。

1. サステナビリティ経営

ESGについてご説明申し上げます。45ページをご覧ください。サステナビリティ経営、すなわち社会の持続可能性に配慮した経営であります。

スライドの左側に、私自身が委員長を務めますサステナビリティ推進委員会についてお示ししております。これまで以上にステークホルダーからの期待や要請を意識した経営を行い、事業を通じた社会的課題の解決とSDGs(持続可能な開発目標)の実現を目指してまいります。

右側には当社が選定されておりますESG指標を示しております。メガバンクでは唯一、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が選定したすべてのESGインデックスに組み入れられております。

2. 環境(E)・社会(S)

46ページにお進みください。環境(E)・社会(S)であります。環境、次世代、コミュニティという3つの重要課題それぞれについての取り組みを具体化・推進してまいります。

例えば環境におきましては、低(脱)炭素社会の構築です。また次世代というテーマにおいては、人口動態の変化への対応等です。

コミュニティでは、金融包摂やフィナンシャル・インクルージョンへの取り組みといった社会課題の解決にグループ一体で取り組み、グローバル金融グループに求められる社会的責任を果たしてまいります。

3. TCFD(気候変動財務情報開示タスクフォース)提言への対応

47ページに、TCFD(気候変動財務情報開示タスクフォース)提言への対応について示しております。当社では、持続可能な社会の構築に向けた経営の一環として、SMBCにおいて気候変動に関するシナリオ分析を実施し、それにともなう財務的影響を試算いたしました。

物理的リスクが与信関係費用に与える影響……具体的に申し上げますと、気候変動に起因する水災にともなう与信関係費用の増加額を試算したところ、2050年度までの累計で300億円から400億円程度となり、単年度平均では約10億円程度と、当社財務に与える影響は限定的であるという結果になりました。

今回の試算はファーストステップとしての分析結果という位置づけでありますが、TCFD提言に沿って、グローバルな大手金融機関としては初めてシナリオ分析に基づいた影響を数値で公表した点に意義があると考えております。今後は低炭素社会への移行にともなう影響の試算や対象試算の拡大等、分析範囲の拡大を検討してまいります。

4. ガバナンス(G)

48ページはガバナンス(G)であります。スライドの左側にコーポレート・ガバナンス態勢をお示ししております。2019年6月にはSMBCおよびSMBC日興証券が監査等委員会設置会社へ移行いたします。

右側は取締役会の構成でありますが、同じく2019年6月に取締役の人数を17名から15名に減員いたします。当社の社外取締役は現在7名ですが、今回の減員にともないまして、全取締役に占める社外取締役の比率は47パーセントに高まります。

1. 資本の状況

51ページで資本政策についてご説明いたします。まず、資本の状況について、スライドの左側のグラフをご覧ください。バーセルⅢ最終化によるリスクアセットの増加影響を加味し、さらに有価証券の評価差額金を控除したベースでのCET1比率は2019年3月末で10.3パーセントとなり、中期経営計画の目標である10パーセント程度という水準に1年前倒しで到達いたしました。

これは利益の蓄積によってCET1が増加した一方で、三井住友ファイナンス&リースの非連結化などインオーガニック施策を含むリスクアセットコントロールを行ったことによるものであります。

2. 資本政策の基本方針

52ページです。我々の資本政策の基本方針に変わりはなく、健全性確保、株主還元強化、成長投資をバランスよく実現してまいります。また、株主還元につきましては配当を基本といたしますが、機動的な自己株取得も検討してまいります。

3. 中長期的な資本運営

53ページをご覧ください。中長期的な資本運営であります。先ほどご説明申し上げたとおり、我々の資本政策の基本方針に変わりはありません。

一方で健全性確保については、先述のようにCET1比率が目標とする10パーセントに到達いたしました。それにより従来の資本蓄積を優先させるフェーズを脱却し、株主還元強化と成長投資にフォーカスできるステージへと移行したと考えております。今後は利益蓄積を株主還元と成長投資にバランスよく配分し、株主価値の最大化を図ってまいります。

具体的に申し上げますと、配当性向40パーセントに向けた累進的配当と機動的な自己株取得によって株主還元を強化しつつ、ディシプリンを利かせた投資によって持続的な成長を実現してまいります。

4. 株主還元策

54ページをご覧ください。先日公表いたしました株主還元策についてご説明いたします。まず、配当につきまして、2018年度は中期経営計画の施策が順調に進捗し、親会社株主純利益が目標を上回ったこともあり、前年比および公表予想比で10円の増配となる1株当たり180円といたします。

また、2019年度の親会社株主純利益は減益を予想しておりますが、1株当たりの配当予想は前年の水準を維持し、180円とさせていただきます。

さらに今回、1,000億円を上限とする自己株取得枠を設定いたしました。2018年度の700億円から増枠となっておりますが、これはCET1比率が目標の10パーセント程度に到達して、2019年度についても引き続き順調に利益が蓄積される見込みであることが影響しております。

加えて、足もとの割安な株価水準や成長投資の機会、そしてROE向上効果等を踏まえた上で総合的に決定したものでございます。

また、今回取得する自己株式はすべて償却いたします。今回の自己株取得により、2019年度の総還元性向は約50パーセントを見込んでおりまして、利益のちょうど半分を株主のみなさまに還元するかたちとなります。

5. 政策保有株式

56ページは政策保有株式でございます。上場株式簿価残高のCET1に対する比率は、2020年をめどに2015年9月末と比べて半減の14パーセントにするという目標に向かって現在計画を推進しているところでございます。金額ベースで申し上げますと、5年間で簿価を約5,000億円削減する計画であります。

この計画は順調に進んでおりまして、2018年度も1,300億円の簿価を削減し、計画が始まった2015年9月末からの累計で3,600億円となりました。5年で5,000億円という目標のなかで、3.5年で3,600億円ですので、ほぼ計画どおりでございます。

さらに、売却応諾を取得してまだ売却を行っていない残高が880億円ありますので、これらを加えますと現在までに4,480億円の削減にめどがついております。株価変動リスクの資本への影響を低減するため、またコーポレートガバナンス・コード改定の趣旨も踏まえまして、2019年度中に計画達成のめどをつけるべく削減を進めてまいります。

以上、ご説明してまいりましたが、2019年度は現在の中期経営計画の総仕上げを行うとともに、次期中期経営計画につながる成長戦略を実践してまいります。

また、資本政策が新たなステージへと移行したことを踏まえて、株主還元のさらなる強化と持続的な成長の実現を目指してまいります。投資家、アナリストのみなさまには引き続きご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。

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