子どもが間違った言動をしたときは、親や周囲の大人が注意をするもの。しかし、一歩間違えると子どもの心を傷つけてしまう可能性があります。そこで今回は、子どもに対する「しつけ」を改めて考えてみましょう。

大切なのは、大人が余裕をもつこと

児童精神科医である佐々木正美さんは、著書『子どもへのまなざし』(福音館書店)のなかで「しつけというのは、子どもの自尊心を傷つけるようなやり方でしようとしては、ぜったいにいけないのです」と述べています。もちろん、しつけ以外のシーンでも同様です。どんなに小さな子どもにも人権はあり、その存在を軽視してはいけません。

にもかかわらず、子どもの人権を軽く扱う大人は決して少なくありません。その理由は、大人と子どもの間にある、さまざまな力の差が関係しています。いうまでもなく、大人は子どもより体力も精神力も経済力もあります。そのため、無意識のうちに「大人の方が上だ」と感じてしまうのでしょう。その点を常に大人が意識し、「子どもは1人の人間である」と捉えることが大切です。

とはいっても、常に冷静な判断をするのは簡単なことではありません。精神的、経済的、環境的など多くの面で余裕がなければ、子どもに厳しく接してしまう場面もあるでしょう。「余裕がない」と感じている方は、まず現状を変える工夫から始めてみてください。

周囲が叱るときは言い方に配慮を

ときには、親以外の人が子どもに注意をするときもあるでしょう。しかし、配慮のない言い方で子どもだけでなく親までも傷ついてしまうケースも珍しくありません。周囲の人に叱られた経験がある保護者に、その状況を聞いてみましょう。

・「わが子が電車内の席に座ったものの、変な姿勢だったので『そんな座り方なら座らないでよ』と声をかけました。すると、そばにいた男性が小声で『うん、座らない方がいい』と呟いたのです。その時には、もう正しく座り直していたのに…変な空気だけが残っていました」

・「電車内の席に子どもを座らせていたら、『子どもは座らなくていいのよ』と告げられました。まだ3~4歳の子どもにとって、揺れる社内で立つのは難しいのに」

・「店内で子どもが走り回り、対応に苦労していた時のこと。近くにいた女性が、和やかな表情で『ここでは走らないでね』と注意してくれました。子どもは納得してくれたし、本当に感謝しています」

こうみると、「子どもを想っている言葉かどうか」で受け取り方が大きく変わるようです。嫌味のように呟く、事情を考慮しないで叱るといった行動は避けておきましょう。

よその子を叱ったエピソード