京都アニメーションで起きた放火殺人事件、平成期以降で最悪の大惨事

既にご存知の通り、7月18日に京都アニメーション第1スタジオで発生した放火殺人事件は、死者34名、負傷者34名を出す大惨事となりました。これは、放火事件としては平成期以降最多の死者数となります。また、負傷者数には重篤者も少なくないようで、死者はさらに増加する可能性があります。

改めて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々の1日も早い回復をお祈り申し上げます。

なお、放火犯人と見られる容疑者(既に逮捕)も全身火傷の重体であり、集中治療を施されている模様です。このような悲惨な事件を起こした犯人を許すことは到底できませんが、放火の動機や経緯などを解明するために、そして、34人もの命を奪った罪の裁きを受けさせるためにも、治療の成功が待たれます。

亡くなられた34人のためにも、真相究明が最優先だと考えます。

平成28年まで20年間にわたり火災発生原因の第1位は「放火」

ところで、今回のような大量殺戮事件は例外としても、放火による火災は決して他人事ではありません。それどころか、いつ身の回りで起きても不思議ではない状況なのです。まずは日本国内の火災状況を見てみましょう。

総務省消防庁が発行する「平成30年版 消防白書」によれば、火災の全件数は平成19年以降概ね減少傾向を辿っています。平成19年に54,582件だった火災は、平成28年には36,831件と約3分の2へ減少しました。残念ながら、平成29年は39,373件(前年比+6.9%増)へ増えてしまいましたが、この10年間での火災件数減少の流れに変わりはありません。

この要因として、防火意識の高まりに加え、喫煙者の減少、火災報知機や消火器の普及、建物の耐火構造の進化などが挙げられます。

その中で注目したいのが喫煙者の減少です。実は、一昔前まで、火災の発生原因の第1位は断トツで「たばこ」でした。特に、いわゆる“寝たばこ”が原因で多くの火災を引き起こしてきた経緯があります。しかし、喫煙者の減少等に伴い、平成9年から平成28年までの20年間、「たばこ」は発生原因の1位ではありませんでした。

そして、その「たばこ」に代わって20年間1位だったのが「放火」なのです。また、この「放火」とは別枠で「放火の疑い」という発生原因も概ね4~6位となっており、「放火」と「放火の疑い」を合わせると、全体の約15%に上っています。なお、平成29年の発生原因は「たばこ」が21年ぶりに1位となり、「放火」は2位でした。しかし、「放火+放火の疑い」が「たばこ」を大きく上回っている状況に変わりはありません。

平成29年の火災件数と発生原因(カッコ内は構成比)

■火災件数:39,373件

  • 第1位:たばこ(3,712件、9.4%)
  • 第2位:放火(3,528件、9.0%)
  • 第3位:こんろ(3,032件、7.7%)
  • 第5位:放火の疑い(2,305件、5.9%)
  • 参考:放火+放火の疑い(5,833件、14.8%)

いつ起きても不思議でない放火による火災、それを防ぐ施策には限界も