この記事の読みどころ

外食でも内食でもない中食が注目されて久しくなります。

高齢化が進む一方、未婚率の高まりや女性の社会進出によって、調理済み食品を家や事務所で食べる中食が増え続けています。

中食を可能にした背景には、電子レンジはもちろん、耐熱性、保温性に優れた食品容器の改良があり、新しい市場を形成しています。関連メーカーは今その恩恵を受けています。

社会の変化の中で静かに広がる中食という食事形態

中食は、外食と内食(食材を購入して家庭で手作りする食事)の中間に存在する概念で、家庭外で調理されたものを購入して持ち帰り食べるものという定義がなされています。パート労働などを含む女性の社会進出、核家族や単独(独り身)世帯の増加でこの中食が注目されているのです。

少子高齢化時代を迎え、厚生労働省によると、日本の人口は現在の1.2~1.3億人から2060年には9,000万人を割るところまで減少すると推計されています。

一方、現在5,200万強ある世帯数は、2020年頃まで少しずつ増え続けると言われています。特に高齢者の所帯が増え続ける見通しで、2030年頃まで65歳以上の世帯が増え続けるという見方もあります。

年金で生活する高齢者夫婦にとって、野菜や肉を買って家庭で調理すると、かえって高くつくかもしれません。最近のコンビニ、スーパーでは惣菜をプラスチックの食品容器に小分けしたものが手ごろな値段で買えますし、塩分控えめなど健康を考えた食品が目立つようになっています。

日常の社会生活の中でも中食の存在感が増している

仕事を持つ女性の場合は、中食を利用することで帰宅後に夕食を作る時間を短縮することができます。口を開けて待っている子供たちに少しでも早くご飯を食べさせられるわけです。

また、ランチタイムに職場で食事をする人も増えています。たとえば、ラーメンは今まではお湯を入れて食べるカップ麺が中心でした。しかし、今ではチルド化された様々な種類の調理済みラーメンを電子レンジで“チン”するだけで職場でも楽しむことができます。

オフィスビル内のコンビニでは、多種のチルド化された調理済み食品を並べ、付属のレンジで温めることも当たり前になっています。こうした商品をレンジアップ食品と言います。

食品容器の進歩が新しい市場を作る

さて、本題です。筆者は仕事柄、発泡スチロールなどから作るトレーや弁当容器などを作る会社を訪問することがあります。コンビニ、スーパーなどで見る食品容器には圧倒的な数の種類があります。肉や魚を載せる発泡シート、透明の蓋のついた弁当ケース、惣菜ケースなどです。

最近では麺、スープ、チャーシュー、野菜が一緒に入ってレンジアップでき、手で持っても熱く感じない耐熱性、保温性の良いカップ状の容器で販売されるラーメンやうどんも一般化しています。

これまで主流だった発泡ポリスチレン、ポリスチレンシートを材料にした食器は、高温のレンジで長時間温めると容器が耐えられないと言われていました。しかし、今や110℃までのレンジアップに耐えられるポリプロピレン樹脂製、PET樹脂製の容器が出現するようになって、調理済み食品の範囲が拡大しています。

中食市場の形成は時代の要請

こうしたレンジアップ対応の食品は、2014年以降コンビニなどで急激に増加しています。ある程度の味であればわざわざ高いレストランに行かなくてもいい、あるいは家で手作りするより便利と感じる人もいるでしょう。

こうした傾向を良しとするかどうかは人それぞれですが、少子高齢化という大きな社会的構造変化の中で、新しい形態として定着するのは確実と思われます。

着実に成長する食品容器市場の関連企業は?

食品容器の市場は年間5,000億円と言われています。公式な統計はありませんが、年率+3%前後で成長を続けていると推測されます。

この市場は大手5社の寡占市場とも言われ、トップは広島県福山市に本社を持つエフピコ(7947)、また三菱商事が過半数の株式を保有する中央化学(7895)などがあります。

2014年頃までの価格競争が落ち着いたところに、原料のポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの価格が原油市況の急落に伴い下がってきています。これらの企業の業績は中長期的に着実に利益を積み上げていくと思われます。

参考:エフピコの過去5年間の株価推移
【2016年2月15日 投信1編集部】

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LIMO編集部