中国FPD(Flat Panel Display)最大手のBOE(京東方科技集団)は7月5日、四川省綿陽市の第6世代(6G=1500×1850mm)工場「B11」から中小型フレキシブル有機ELディスプレーの出荷を開始したと発表した。まず6.47インチのスマートフォン用ディスプレーを量産し、今後はフォルダブルスマホやタブレットなどにも供給を拡大していく方針だ。

成都とあわせて2工場体制に

 綿陽B11は、17年初頭に綿陽国家高新技術産業開発区の敷地80万㎡に工場の建設を開始し、18年4~6月期から製造装置の搬入を本格化した。総投資額は465億元(約7700億円)で、フル稼働時には月間4.8万枚の生産能力を備える見込みだ。

 BOEは四川省成都市で6G有機EL工場「B7」をすでに稼働しており、綿陽B11は同社にとって2つ目の6Gフレキシブル有機EL工場となる。これにより両工場で月間9.6万枚分の生産能力を備えたことになる。ちなみに、フレキシブル有機ELの量産で先行している韓国のサムスンディスプレーは、韓国のA3工場に6Gガラスで月産13.5万枚の量産体制を有している。

重慶と福州にも建設予定

 これに続き、BOEは重慶市に「B12」、福建省福州市にも「B15」と2つの6Gフレキシブル有機EL工場を建設することを決定済み。重慶B12には465億元を投資し、成都と綿陽と同様に月間4.8万枚の生産能力を備える予定で、フル稼働に達するのは20年末~21年初頭になるとみられる。

 また、福州B15も465億元を投資して4.8万枚の月産能力を備える予定で、稼働は22年以降になる見通し。BOEは成都B7で確立した量産プロセスを他の3工場にも展開して生産能力を拡大していく計画で、これまでは成都B7の歩留まり向上に苦慮し安定供給ができていなかったが、徐々に歩留まりが安定してきたもようだ。

アップルへの供給を視野に

 BOEが引用した調査会社ストーンパートナーズの調べによると、主要スマホブランドのフレキシブル有機EL搭載率は20年までに21%まで増加する見込み。サムスンの搭載率は19年の19%から24%に、ファーウェイは11%から18%に、アップルは33%から65%にそれぞれ増加し、シャオミーも搭載スマホを増やすと予測している。

 BOEはアップルへの供給を視野に入れているとみられる。19年はサムスンに次いでLGディスプレーが供給元に加わる見通しだが、早ければBOEも20年に供給元の1社に入る可能性があるといわれている。アップルも、iPhoneの19年モデルは18年と同様に有機EL2モデル、液晶1モデルになる見込みだが、20年からは全モデルに有機ELを採用するとみられている。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏