広い空に青い海、色とりどりの花々と珍しい生き物たち…。その場に立っているだけで、景色のなかに自分が吸い込まれて溶け込んでしまうような不思議な感覚になる瀬戸内の島々では、瀬戸内国際芸術祭2019が開催されています。

今回は、瀬戸内国際芸術祭が自然あふれる瀬戸内の小さな島々にもたらした恩恵と、その経緯について見ていきます。後半では、アートプロジェクトを存分に楽しむための準備についてもご紹介しますので、参考になれば幸いです。

瀬戸内の空と海と島が織りなす絶景(筆者撮影、以下同)

瀬戸内の島に咲く色とりどりの花

100万人が訪れる瀬戸内国際芸術祭とは?

瀬戸内国際芸術祭(以下、瀬戸芸)とは、第一線で活躍する世界中のアーティストたちの芸術作品と、瀬戸内の島々独特の自然を楽しむことができるアートプロジェクトです。

そもそものきっかけは福武財団(旧 直島福武美術館財団)代表理事の福武總一郎氏が芸術祭を発案したことで、経済団体など44もの団体に加え、観光産業の育成に力を入れていた香川県が協力し、実行委員会が組織されました。

そして、交通の便や宿泊拠点などを整えて2010年に瀬戸芸をスタート。その後は3年に1度、春・夏・秋の3シーズンでひと括りとなるよう開催され、初回は93万人、第2回は107万人、第3回は104万人が来場しています(瀬戸芸実行委員会調べ)。第4回目にあたる今年は、夏会期が今日から始まりました※。

※夏会期は7月19日~8月25日、秋会期は9月28日~11月4日(終了した春会期は4月26日〜5月26日)。

外国人観光客の集客に成功

その瀬戸芸は、2010年の開始以来、瀬戸内の島々に活気と経済効果、外国人観光客の来島や島外からの移住者誘致など、さまざまな良い影響をもたらしています。

透き通った直島の海


いくら日本の島々が魅力的だと言っても、世界各国からわざわざ交通費や宿泊費を支払って瀬戸内の島々に来島する確率は、それほど高くはないと言えるでしょう。しかし瀬戸内の島々は、瀬戸芸が開催される年には外国人観光客であふれ、海外に行ったのかと思うほどの景色になるのです。

海外メディアで取り上げられることも増え、ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー誌(英国版)の「The Cool List 2019:2019年に行くべき場所」(2019年4月9日付)では、瀬戸内の素晴らしいアートと景色が1位になるなど、注目度も高まり続けています。

実際、今年の瀬戸芸・春会期の来場者の21.7%は海外からという結果が瀬戸芸実行委員会から発表されています(来場者2173人のアンケート調査)。また、瀬戸芸の会期外であっても日常的に外国人観光客の姿を目にするようになりました。こうした景色を当たり前のものにしてくれたのはやはり、瀬戸芸というアートプロジェクトのスタートが大きな要因となっているようです。

島外からの移住者が増加

筆者は仕事なども含め、10年ほど前から毎年複数回は瀬戸内の島々を訪れているため、島民の方々と話す機会も多くあります。そんな中、特に小豆島や直島では、瀬戸芸で瀬戸内の島々に来島したことがきっかけで、その後、島に嫁いできたという話を何度か耳にしました。

また、島外に住む日本人や外国人が瀬戸芸での来島でこの地を気に入り、移住や起業に結びついたというケースも聞いています。瀬戸芸は島に観光客増という経済効果をもたらしただけでなく、島外からの移住者も増やすなどの波及効果も生んでいるようです。

瀬戸芸を存分に楽しむために

さて、瀬戸芸で繰り広げられるアートプロジェクトを存分に楽しむためには、3つの準備をしておくことがおすすめです。

心を”島モード”に

一つ目の準備は、瀬戸内の島々のゆったりとした時間の流れに身を任せられるよう、心の準備をしておくことです。普段のせわしなさから離れて自然に身を任せることで、著名なアーティストの作品だけでなく、瀬戸内の島々の自然が創り出すさまざまな美しさを楽しむことができるでしょう。

そのためにはある程度の滞在時間が必要になるため、島々での宿泊がおすすめです。

作品鑑賞パスポート

作品鑑賞パスポートの購入も、おすすめの準備の一つです。鑑賞パスポートは、春・夏・秋の3シーズンが楽しめる「3シーズンパスポート」と、いずれかの1シーズンのみが楽しめる「会期限定パスポート」があります。

こちらのパスポートがあれば、1冊1回限りにはなるものの、瀬戸内の島々に展示されている芸術作品の多くを鑑賞することができます。料金や購入方法など詳しくは、瀬戸芸公式サイトの作品鑑賞パスポートページをご参照ください。

直島に展示されている芸術作品の一部

共通乗船券

瀬戸芸の芸術作品を展示してある島々への8航路が3日間乗り放題となるのが「共通乗船券」です。上手にスケジュールを組んで乗船すれば、とてもお得に島々を巡ることができます。注意点など詳しくは瀬戸芸公式サイトの共通乗船券ページをご参照ください。

作品の向こうに見える島

予備情報

瀬戸内国際芸術祭の開催期間、最も来場者数の多い直島には、宮浦港と本村港の2カ所で下船することができます。どちらの港周辺にも飲食店があり、1回100円で乗車できる町営バスが巡回しているため、不便はありません。

ただし、車などを乗せて乗船したい場合には、宮浦港を利用する必要があります。また、小さなお子様連れの方は、トイレなどのことを考えると宮浦港の利用が便利です。

宮浦港に停留する直島の町営バス

おわりに

瀬戸内の島々は、自然やアートが好きという人だけでなく、仕事・育児といった日々の生活や世間のニュース・ウワサ話などで疲れることが多いという人にもおすすめです。瀬戸内に浮かぶ小さな島々の、ゆったりとした時間の流れに身を任せながら、しばし日々の喧騒を忘れてみてはいかがでしょうか?

草間彌生氏のカボチャのオブジェ(場所:直島 宮浦港付近)

山内 良子