半導体製造装置大手の米アプライドマテリアルズは、同業のKOKUSAI ELECTRIC(東京都千代田区)を22億ドルで買収すると発表した。株式譲渡に関し、株式を保有するKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)とAMAT、KOKUSAIの3社間で株式譲渡契約を締結した。取引は今後12カ月以内の完了を目指す。

日立国際の半導体製造装置部門が前身

 KOKUSAIはもともと、日立国際電気の半導体製造装置部門として事業を展開していたが、18年にグループから独立。KKRの支援のもと、18年6月から現社名で活動を行ってきた。主力のバッチ式成膜装置を中心に事業を展開。18年度売上高実績は約1600億円と、メモリー投資の拡大を背景に、ここ数年業績を伸ばしてきた。

 一方、AMATは世界最大の半導体製造装置メーカーとして、成膜装置をはじめ、イオン注入装置、エッチング装置など幅広い製品ポートフォリオを保有。ただ、成膜装置については枚葉式では高いシェアを築く一方、KOKUSAIが得意とするバッチ式での実績は少なく、成膜装置分野での補完関係は高いとみられる。

 加えて、製造プロセスの高度化に伴い、昨今は成膜装置のカテゴリーとして、原子層レベルで成膜が行えるALD(Atomic Layer Deposition)装置の需要が拡大。同分野において、KOKUSAIは独自のBCD(Balance Controlled Deposition)技術によってシェアを獲得しており、AMATにとってもALD装置市場で新たな事業機会を得ることができそうだ。

縦型炉市場でTELと競合

 取引締結後、KOKUSAIはAMATの半導体製品グループのビジネスユニットの1つとして、業務を継続することになる見込み。KOKUSAIは引き続き東京に本社を置くほか、富山市と韓国・天安の技術・製造センターも維持される見通し。

 AMATはKOKUSAIを傘下に収めることで、半導体前工程装置(WFE=Wafer Fab Equipment)市場のシェアは従来の18%(18年実績ベース、米ガートナー調べ)から20%に高まる見通し。さらにCVD装置市場においては、従来ラムリサーチとトップの座を争っていたが、頭ひとつ抜け出すかたちとなる。また、縦型炉(ファーネス)市場は従来、東京エレクトロン(TEL)とKOKUSAIの2社寡占市場であったが、今後TELはAMATと同市場で競合することになる。

 KOKUSAIの買収を巡っては一時、洗浄装置大手のSCREENホールディングスも有力候補として名前が挙がっていたが、買収金額が2000億円を超えること、さらには半導体製造装置市場が顧客投資の低迷で軟化傾向にあったことも重なり、見送られた経緯がある。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳