あまりにも大きな米長期金利の低下幅。サプライズ指数の動きに要注目

「柏原延行」のMarket View 2019年6月26日

皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。

本シリーズは、今回で最終回とさせていただきます。ながらくご愛顧いただいた皆さまに、感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

  • 前回の記事以降も、米長期金利は低下し、一時は2%を割れる水準に到達した。
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)は、年内にあと4回が予定されており、この中で3回も利下げが行われると考えることは、景気は「緩やかな拡大基調を維持している」と判断している私にとっては、いささか行き過ぎのようにも思われる。
  • 結論として、足もとでのサプライズ指標の軟化傾向が継続するか、否かが、米長期金利の方向性を決めることになりそうだが、反発の可能性にも目配りしたいと考える。
  • なお、メキシコへの制裁関税懸念が経済指標に影響する可能性には注意が必要。
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前回の記事では、米国、ドイツなどでの10年国債利回り(長期金利)の低下を指摘した上で、米長期金利の低下は景気減速・後退への懸念よりも、政策金利の引き下げを織り込んだものであり、必ずしも株価のマイナス材料と捉える必要はないと考えていることをご説明しました。

その上で、「金融当局者による金融緩和を示唆する発言は、投資家の想定以上の景気減速・後退のシグナル」と捉える考え方は、多くの情報が把握可能な情報化社会の中では、素直な見方でないように私には感じられるという見方もご紹介させていただきました。

前回の記事以降も、米長期金利は低下し、一時は2%を割れる水準まで到達しました( 下の図表1ご参照)。この動きは、皆さまがご存じのように、6月19日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が、「ハト派的スタンスが明確になった」と解釈されたことによる影響が大きいと考えられます(ただし、6月会合では政策金利引き下げは見送られています)。

具体的には、今回の声明文では、「will act as appropriate to sustain the expansion(筆者による仮訳:成長持続のため適切に行動する)」という現在の金融政策を緩和的に変更することを示唆する表現が明記されました。加えて、FOMC参加者の政策金利見通しでは、3月会合では0人だった年内の利下げ予想が17人中、8人にまで増加しました。しかも、うち7人が、(1回の利下げを0.25%と仮定すると)年内2回の利下げを示唆する予想となりました。

前回お伝えした6月4日の米連邦制度理事会パウエル議長による「適切に行動する」という発言以降、利下げ期待は相当に大きくなっていたと考えますが、今回のFOMCの結果を受けて、市場は「さらなる経済指標の悪化がなくても7月の会合で利下げが行われる」と解釈した可能性があります。

加えて、一時は2%を割れの水準まで低下した米長期金利を考えると、一部FOMC参加者の年2回の利下げ予想を超えて、債券市場は年3回の利下げを織り込んでいると私は考えています。

6月以降の米FOMCの開催予定をみると、7月、9月、10月、12月と年内はあと4回が予定されており、この中で3回も利下げが行われると考えることは、景気は「緩やかな拡大基調を維持している」と判断している私にとっては、いささか行き過ぎのようにも思われます(1回の利下げ幅が、0.5%と考える投資家もいるようですが)。

前述の通り、「年内の利下げ予想が17人中、8人にまで増加」したという変化の方向性を重視する必要はあるのですが、残りの9人については、1人はまだ年内1回の利上げを予想しているほか、8人は据え置きを想定しているため、FOMCメンバーの意見が、必ずしも利下げで一致していないことも認識する必要があると考えます。

そして、これまでも、度々ご説明している経済市場のサプライズ指数をみると、昨年の10~12月頃のように実際に発表される経済指標が市場予想を下回る傾向が大きい時期に米長期金利が低下することは自然な動きですが、一方で、サプライズ指数が小康状態にある中でも米長期金利が低下している局面があり、これは不自然な動きと考えることもできます(緑の○の部分)。

図表1:サプライズ指数と米国10年国債利回り
期間:2018年6月21日~2019年6月21日 (日次)

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出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。
※MSE(ミス・イー)とは、当社独自の経済指標サプライズ・インデックスです。グローバル(米国・欧州・中国・日本の4地域)の経済指標のサプライズ情報を集計することで、市場関係者のマクロセンチメントを定量化したものです。データは、加重移動平均3ヵ月。


結論として、足もとでのサプライズ指標の軟化傾向が継続するか、否かが、米長期金利の方向性を決めることになりそうですが、反発の可能性にも目配りしたいと考えます。

なお、トランプ大統領は、メキシコからの不法移民問題に絡めて、メキシコへの関税付与を示唆した局面があり(実際には回避されました)、メキシコへの制裁関税懸念が経済指標に影響する可能性には注意が必要です。

(2019年6月25日 9:30頃執筆)

柏原 延行

参考記事

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柏原 延行
  • 柏原 延行
  • アセットマネジメントOne株式会社 
  • 運用本部調査グループ チーフ・グローバル・ストラテジスト

現みずほ銀行の運用担当者(外国債券など)を経て、運用会社にて、株式運用部長、企業調査部長、運用戦略部長などを歴任後、現在はアセットマネジメントOneにて、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めております。
運用会社に勤務して、はや25年を超えました。遊び心も忘れずに、皆さまのお役に立てるコラムをお届けしたいと考えます。妻、娘の3人家族です。
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター非常勤講師、日本証券アナリスト協会検定会員。大阪大学卒業、筑波大学大学院修了。