退職後の資産運用が気になる高齢者

2018年12月に実施し、その詳細を2019年2月にリリースした「高齢者の金融リテラシー調査」(65-79歳1万2000人アンケート)から、高齢者の金融資産、金融資産情報に対する姿勢をまとめてみます。結果は、思った以上に金融情報開示に寛容な姿です。

まず「退職後の生活を守るために必要な知識」を聞いたところ(複数回答)、群を抜いて高かったのが「健康維持の方法」(87.6%)でした。特に70代後半の男性と女性全般で平均を上回る水準です。

最も注目したのが、「資産運用の考え方」(35.1%)の高さです。「介護」(32.9%)、「年金の受け取り方」(31.9%)も3割台だったのですが、資産運用の考え方が第2位に位置付けられています。高齢者にとって資産運用は非常に大事な側面であることが窺えます。

高齢者の金融機関との接し方

8割以上がATMでお金を引き出す

資産運用の考え方が大切だと考えている高齢者にとって、金融機関との付き合い方は重要になります。「直近2か月で金融機関の店頭に行ったことはあるか」を聞いてみると、「ほとんど行かない」(51.6%)、「全く行っていない」(39.7%)を合わせると9割を超えました。

ただ、「銀行からどうやってお金を引き出しているか」の設問に対しては、「銀行のATM」が70.6%と大きく、「銀行以外のATM」(12.7%)を加えると8割以上の人がATMを利用していることがわかります。

9割ほどがお金のことは自分か家族で

また、金融機関へのお金に関する相談状況を聞いたところ、「お金のことはすべて自分でやっている」(39.1%)、「お金のことで相談するのは家族だけ」(48.1%)と回答しており、9割近い人が自分で対応していることを示唆しています。

資産の情報開示に4割以上が寛容

とはいえ、金融機関との接し方が疎遠になっているわけでもありません。

「金融機関からより適切なアドバイスをするために資産の情報を開示してほしい」と言われたら、どうするかを聞いたところ、「絶対に教えない」と回答された方は52.7%と過半数でしたが、「必要であれば教える」または「必要であって担当者が信頼できる人であれば教える」と回答した人はそれぞれ12.5%と34.8%で、4割以上を占めていました。

意外に金融資産の情報開示に寛容なのではないかと思われます。もちろん、「信頼できる」という点は大きなポイントのように映りますが。

47.3%がなぜ意外に高いとみているかといえば、「金融資産を家族と共有しているか」という設問に対して、条件付きながら「共有する」と回答している人が61.1%にとどまっているからです。

情報ではなく資産そのものですが、家族にそれを共有すると回答した人が6割にとどまっているなかでみれば、4割の人が情報だけとは言え金融機関に開示すると回答しているのです。高齢者にとって金融機関の持つ役割は非常に大きいように思われます。

金融機関が資産の全部開示を依頼してきた場合どうするか (単位:%)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、高齢者の金融リテラシー調査、2019年2月

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史