筆者が働いていた認可外保育園に在園していた、とある男の子。その男の子は1月生まれで、お母さんは春からの職場復帰を目指していたため、生後3カ月になったばかりの4月から入園。

そのお母さんは生後3カ月というまだ首も座っていない時期から息子を保育園に預けることへの罪悪感や、旦那さんが単身赴任である中でのワンオペ育児の不安について、保育園側に日々相談してくれていました。その男の子は園ではなかなかミルクを飲んでくれなかったり、生後半年が過ぎた頃にはお家でも園でも離乳食が進まなかったりと、スムーズに園生活を送れないこともたびたびあったため、お母さんが不安な表情を見せていたことを覚えています。

男の子がズリバイできるようになった日には迎えに来たお母さんと一緒に喜び合い、他のお友達と遊べるようになるとその様子を事細かく連絡帳に書き、お母さんが安心して仕事ができるよう、また保育園として信頼してもらえるよう、懸命にサポートしていました。

入園から1年半が経った頃、別の認可保育園に入園が決まったため男の子は卒園。最後にお母さんからは、「息子の礎を築いてくださり、また右も左もわからない中でいろいろな相談に乗ってくださり、本当にありがとうございました。この保育園で過ごさせてもらった時間は、一生忘れません」と、涙ながらに筆者たちに感謝の言葉を述べてくださいました。

その言葉を受け、その場にいた保育士たちも皆が涙し、「むしろこちらがありがとうございます」という気持ちに。他人の子どもを、特に生後間もない時期から預かることは緊張感のある大変な仕事でしたが、ここまでお母さんと一緒に頑張ってきて本当に良かったと、仕事の生きがいや達成感を強く感じた出来事でした。

一緒に子どもを見守るからこそ互いに感謝したい

保育士は保護者とタッグを組んで子どもの成長を見守っていくチームメンバーだと思っています。今、保育園で働く側から保育園に子どもを預ける側になって思うのは、保護者としてきちんと保育士さんに感謝の言葉を述べることはとても大切なのだということ。

保育士とは他人の子どもの命を預かるという、体力も精神もすり減らす本当に大変な仕事です。保護者からの素直な言葉は、その働き甲斐やモチベーションの一つに大いになるはず。このお母さんに限らず、筆者は保護者からの言葉一つで救われた経験があまりにもたくさんありました。

明日も保育園に送りに行く時、迎えに行った時、保育士さんに「いつも本当にありがとうございます」としっかり述べたいと思います。

秋山 悠紀