海中/水中IoTは巨大市場

水中検査やスマート水産など、ALANコンソーシアムが始動

トリマティスが開発した水中LiDARの試作機

本記事の3つのポイント

  • LiDARやLEDなどの先端技術を駆使して、水中環境でIoTビジネスを立ち上げようとする動きが出てきている
  • 水中構造物の検査や養殖漁業などへの応用展開が期待されている。海中瓦礫の調査など災害対策にも効果を発揮
  • ベンチャー企業のトリマティスが代表を務めるコンソーシアムが発足。大学や研究機関のほか民間企業も多数参画
続きを読む

 

 第5世代移動通信システム(5G)の実用化を背景に、いよいよIoTビジネスが本格的に開花する。この動きと呼応し、もう1つのIoTビジネスがプロジェクトとして動き出した。

 名称はALANコンソーシアム。ALANとはアクアローカルエリアネットワークの頭文字で構成した造語で、その名のとおり、海中(河川や湖も含む)など水中環境でのIoTビジネスを意味する。

 データやカメラ映像の取得で主力技術となるのが水中LiDAR。そして通信技術は青色LEDを駆使した水中光無線で送受信することになる。海や湖が青色に輝くのは、太陽光の赤色を排除し、青色のみを通すからだが、水と青色の親和性を評価し、送受光系として青色LEDを採択した。もちろん、水中でのIoTであることを考慮し、すべてを光無線で構築するのではなく、既存の音波や有線とも連動させ、ネットワークを構築する方針である。

 技術ブラッシュアップについては、3年後をめどに、水中LiDARは有効距離50m、分解能は1cm以下にまで引き上げる。水中光無線通信については、中継器間の通信も考慮し、有効距離は1~100m、速度は数十M~1Gbpsレベルをターゲットとした。また、広大で広域な水中IoTを構築するため、バッテリー問題にもブレークスルーを求める。伝送速度1~10m、伝送電力10W以上を視野に入れたワイヤレス給電を実用化する考えだ。

ニーズの高い有望市場とは

1.水中構造物の検査市場
 筆頭にくるのが、水中構造物の検査である。東京オリンピック終了後の2023年、国内橋梁の43%が建設50年を迎える。この50年間、ほとんど無検査のままで経過してきたのが実情だ。その数は、道路橋が約15.7万カ所、河川管理施設(水門など)が約1万カ所、そして湾岸岸壁が約5000カ所で、金額にして5.5兆~6兆円に達する見通しである。

 従来、これらの水中構造部の検査はダイバーによる目視に依存してきた。しかしながら、実際には危険な作業であり、ダイバー自身の高齢化も加速してきている。コストも高騰しており、ダムの壁面検査でダイバー7人による1日の検査費用は約1600万円もかかる。水深が20mを超えると、ダイバーの費用は大幅にアップする。

 この課題に水中LiDARが有効に機能する。橋脚クラックの点検など、目視以上のmm単位で高精度測定が可能となる。さらには水中LiDARがロボット(無人潜水艇)とドッキングすることで、水中構造物の検査環境は大きく変わることになる。

2.養殖漁業によるスマート水産市場
 人口増加で水産物ニーズが高まり、その水産資源の供給課題に注目が集まるなか、スマート水産の構築が本格化してきている。スマート水産は魚数や水質、生育状況のリアルタイム管理など、水中IoTを駆使した養殖ビジネスである。2030年には海上漁獲量と養殖漁獲量がほぼ同等になると推察されている。

 現状、この水中IoTニーズに応えているのがステレオカメラである。価格は周辺機器も入れて約500万円、サイズは1m弱。測定画像を手動で見分け、かつ測定することになる。担当者が数時間、付きっきりの作業を要求される。

 ステレオカメラの置き換えを狙うのが水中LiDARだ。手間をかけない手法を用い、週に1回程度で、魚の平均サイズがアップロードされる。コスト的にはセットあたり導入期は1000万円だが、普及期に入ると同300万~500万円で提供可能と推定している。

3.環境や災害の調査市場
 環境面では、マイクロプラスチック問題への対応で、水中IoTが有効に機能する。また、地震などによる災害の多い日本においては、海中瓦礫の調査などに、水中IoTが効果を発揮する。

 そのほか、アミューズメント分野にも有効で、高精細カメラやLiDARによる世界の海中の大容量画像データをリアルタイム通信することで、自宅で水族館鑑賞も可能となる。それだけではない。ヘルスケアや介護産業にも、心のケアとして役立たせることができる。

ALANコンソーシアムの概要

 ALANコンソーシアムは、代表がトリマティス。同社は水中光無線技術を主軸にビジネスを展開するベンチャー企業である。会員には、国研として、海洋研究開発機構、情報通信研究機構、産業技術総合研究所が参画。大学は千葉工業大学、東海大学、東京工業大学、東北大学、名城大学、山梨大学、早稲田大学が名を連ねている。民間企業では、KDDI総合研究所に続き、太陽誘電、電気興業、浜松ホトニクス、モバイルテクノなどが参加。今後も入会企業が続きそうである。

 事務局は電子情報技術産業協会(JEITA)内に設置。問い合わせなどはTel.03-5218-1050、またはE-mail : info_alan@Jeita.or.jpまで。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 松下晋司

まとめにかえて

 センサー技術を駆使したIoTビジネスの広がりは海・川などの「水中世界」にも広がろうとしています。今のところ、産官学によるコンソーシアムが発足したばかりですが、用途開拓がしっかりと進めば巨大市場が形成される可能性もありそうです。

電子デバイス産業新聞

参考記事

ニュースレター

メールアドレスをご登録いただくと、毎朝LIMOの更新情報をお届けいたします。
電子デバイス産業新聞

国内唯一の電子デバイス業界専門紙。
半導体、一般電子部品、フラットパネルディスプレー、プリント配線板、太陽電池、2次電池、各種製造装置や電子材料などもカバー。
電子デバイスという視点から自動車や医療、ロボット、FA、航空・宇宙といった産業分野の動向も詳細に報道・分析しています。