人事制度の一環などで数年間の外国勤務がある場合に、自国と勤務先の国の両方で社会保険料を負担するとなると、二重払いが生じるだけでなく、場合によっては勤務先の国の制度によっては、保険料が掛け捨てになるということも考えられます。

こうした問題を解決するために、社会保障協定が結ばれています。協定の主な内容は、二重払いの防止と保険料の掛け捨て防止の2つです。

まず、二重払いの防止策として、5年以内の外国勤務については勤務先の国の制度が免除され、5年超の外国勤務については、勤務先の国の制度のみを適用するということが定められています。また、掛け捨て防止のために、勤務先の国の支給を受けるための最低加入期間の計算に、自国での年金制度の加入期間を通算できるということが定められています。

たとえば、日本で20年勤務したのちにアメリカで7年間勤務していた場合、アメリカの勤務期間のみでは、最低加入期間の10年を満たしていないため、このままではアメリカでの年金は受給できません。しかし、社会保障協定があることで、加入期間の算定にあたっては、日本の加入期間である20年を合算できるのです。

あくまで加入期間を満たすための制度で、実際の年金額は現地での保険料支払額をベースに算定されますが、少なくとも掛け捨ての防止にはなります。

社会保障協定を締結している国については、厚生労働省の「社会保障協定の締結状況」をご覧ください。グローバル化の進展とともに、対象国も順次拡大しています。

渋田 貴正